King Gnu、『ROCK IN JAPAN』で見せた“王者の貫禄” 巨大なステージを掌握していく圧倒的なスケール感

 そして、そんなタイミングで披露されたのが新曲「雨燦々」だった。7月15日に配信リリースされたこの曲は、ドラマ『オールドルーキー』(TBS系)の主題歌として書き下ろされたもの。抑制の効いたリズム、効果的にインサートされるストリングスの響き、そして丁寧に紡がれるメロディと選び抜かれた言葉……あえて言えば決して派手な曲ではないが、雨上がりの空気のような清々しさと透明感を感じさせる楽曲である。

 どこかノスタルジックなイントロに始まり、King Gnuのこれまでの楽曲以上に優しくて温かなムードが全編を貫く「雨燦々」。常田の歌詞においてはどちらかといえば冷たさや寂しさや悲しみの象徴として描かれてきた「雨」が陽光のように「燦々」と降り注ぐという心象、ずぶ濡れになりながらも「君」のいるほうへと向かっていく主人公の胸に宿る希望。〈未来を謳う言葉だけが 風となり森を吹き抜ける〉という歌詞には力強い確信が感じられる。『オールドルーキー』とのコラボレーションという前提をおいてもなお、今まさにこれまでにない高みに立つ彼らだからこそ歌える風景がこの曲にはある。元来彼らが(というより常田が)持っているイノセントでピュアな感性を、「BOY」とはまた違った方向で全解放したようなこの「雨燦々」こそ、King Gnuの新たな代表曲であり、今まさに次のアルバムに向かっている彼らのキーとなる曲なのではないだろうか。

 井口は曲中で思わずオーディエンスにマイクを向け、曲を終えたあとで「またみんなで歌える日が来るといいですね」と言っていたが、「雨燦々」は実はこれまでKing Gnuにありそうでなかった、バンドと観客が一体となってひとつの風景を描き出すシンガロングソングになり得るのである。アリーナ、巨大なフェスのメインステージ、そしてその先にあるドーム……どんどん大きくなっていく会場で鳴れば鳴るほど、この曲のポテンシャルは明らかになっていくだろう。実際『ROCK IN JAPAN』の広大な空間を音圧や音の密度で制圧するのではなく、余白を持ったこのアレンジで掌握してみせる光景は痛快ですらあった。

 その後、ライブは最終盤に。「逆夢」で「雨燦々」で描き出した風景をさらに美しく押し広げると、最後は「一途」。メンバー一丸となった大迫力のプレイに応えてオーディエンスからも力強い手拍子が起き、ロックバンドとしての基礎体力と筋力の高さを見せつけて、King Gnuの『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2022』は幕を閉じた。最初から最後まで自分たちのストロングポイントを惜しげもなく披露し、あっという間に狂騒を生み出し、演奏のスリルと色彩豊かな楽曲群によってすべてをかっさらっていった圧巻のライブ。改めて今のKing Gnuの充実ぶりを実感するステージだった。

 この夏フェスシーズンを経て、彼らは11月の東京ドーム2デイズ公演に向かっていく。前述したとおり、今の彼らは巨大なライブ会場をいとも簡単に自分たちのものにしていくスケール感とパワーを持ったロックバンドになっている。ドームワンマンはそんなKing Gnuの現在地を、すべて見せつけるものになるだろう。もちろん、その先の未来についても彼らはすでに見定めているはずだ。この数年で瞬く間にシーンのリーダーとなった彼らがここからどうなっていくのか、そのスタートラインとしても絶対に見逃せない。

King Gnu「雨燦々」

■リリース情報
King Gnu「雨燦々」
(TBS系日曜劇場『オールドルーキー』主題歌)
配信中
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