原由子、芳醇なボーカルで肯定する多様な愛 桑田佳祐との抜群のケミストリー発揮した「ヤバいね愛てえ奴は」を聴いて

   原由子が新曲「ヤバいね愛てえ奴は」(作詞・作曲/桑田佳祐)を配信リリースした。10月19日に発売されるソロアルバム『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』より先行配信されたこの曲は、ドラマ10『プリズム』(NHK総合)の主題歌としてオンエア中。タイトル通り、人を愛することの危うさや怖さ、溢れんばかりの温かさを描いた楽曲だ。

 「ヤバいね愛てえ奴は」は、穏やかな美しさを醸し出すギターのフレーズ、そして、〈誰もいない部屋/僕だけが棲む世界〉というラインで幕を開ける。穏やかで静かな雰囲気の音像に奥行きを与えているのは、重厚感のあるストリングス(弦の編曲は原由子と曽我淳一)。さらに〈分かってないよね?〉からはじまるサビで大胆に転調、楽曲は一気にスケールアップを果たし、壮大なサウンドスケープを生み出している。60〜70年代のフォークロック、サイケデリック、プログレなどのエッセンスを織り交ぜながら、懐かしさと斬新さを併せ持った日本語のポップスに結びつけるーーこの楽曲を聴けば、桑田佳祐のソングライティングが年齢を重ねるにつれてより深みを増していることがはっきりとわかるはずだ。

 そして言うまでもなく、この曲の真ん中にあるのは原由子の歌だ。日本語の響きを活かした歌詞を律動させ、生き生きとした表情を与える彼女のボーカルもまた、キャリアを増すにつれて豊かな表現を獲得している。〈やるっきゃないよね?/したってイイよね/サクッと恋に落ちて〉という独創的なフロウを自然に乗りこなし、心地よさと奥深さ、そして、“え? いま何て歌った?”とドキッとするような刺激を同時に響かせる歌はまさに唯一無二。そう、桑田佳祐のソングライティングと原由子のボーカリゼーションが生み出すケミストリーこそが、「ヤバいね愛てえ奴は」の核なのだと思う。

 もう一つ記しておきたいのは、この歌が持つ普遍的なメッセージ。〈もっと素直に/ココロとカラダ慈しみながら/君へのこの想い〉に象徴されているが、この楽曲には、人を愛したときに生まれる身体的、感情的な変化、そのなかで感じる“痛さ”“熱さ”“ヤバさ”がリリカルに描かれている。全ての愛の在り方を肯定するような歌詞の内容は、現代の社会の動きともリンク。様々な愛の形を描いたドラマ『プリズム』の内容とも重なっている。

原 由子 - ヤバいね愛てえ奴は (Full ver.)

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