Dannie May、ジャンルレスな音楽で築いた一夜の王国 初のLIQUIDROOMワンマン公演レポ

 3人組ボーカルワークバンド・Dannie Mayが、2022年7月22日に恵比寿 LIQUIDROOMにて『Dannie May ONEMAN LIVE “五行”』を開催した。公演タイトルでもある彼らの新EP『五行』は、古代中国の自然哲学である五行思想からインスパイアを受けて制作されたもの。このコンセプチュアルなEPの楽曲を軸に、彼らの武器であるジャンルレスな音楽とスキルフルなボーカルが存分に味わえるステージを届けた。

Dannie May

 黒で統一した衣装でステージに現れた3人は、『五行』の1曲目でもある「玄ノ歌」から勢いよくライブをスタート。中毒性の高いリズムが刻まれると、観客たちは頭上でハンドクラップを打ち鳴らしながら、彼らの生み出す音の波に乗っていく。ステージ上ではメンバー同士がアイコンタクトを交わしながら早くも笑顔を見せていた。そんな光景を見ていると、〈許された者だけでこの世は出来ているのかな〉と社会を皮肉りつつも、最後には〈生まれゆく皆全て 歌えや踊れ〉と音楽に救いを見出すこの曲の歌詞が、より深く胸に突き刺さる。

田中タリラ

 初っ端からハイテンションに仕上がった会場は、続く「針よ墜とせぬ、暮夜の息」でムーディーな雰囲気に変化。マサ(Vo/Gt)の艶っぽい歌声と、田中タリラ(Vo/Key)の包容力を感じさせる歌声、繊細かつ洗練されたYuno(Vo/Kantoku)のコーラスがリズミカルなドラムに乗せて響き渡り、ボーカルバンドとしての強さを見せつけた。特徴的なシンセのサウンドが耳に残るダウナーな「If you イフユー」で深い世界へ観客たちを連れていき、Yunoの頭を撃ち抜く仕草から、世の中の息苦しさをポップに歌い上げる「適切でいたい」へ。同じバンドのライブとは思えないほど多様な楽曲が目まぐるしく展開されていき、曲が終わるごとに大きな拍手がわき起こっていた。

 彼らが恵比寿LIQUIDROOMに立つのはこの日が初めて。MCパートでは、田中タリラが「やっぱりリキッドは別次元。広さとか奥行きとかお客さんとの目線とか、今までにないものがあるね」と感慨深い表情を浮かべていた。バンドとして一つの節目を迎えた彼らが次に披露したのは、優しくも力強いバラードソング「朱ノ歌」。〈王様なんかなれんから作ろう 僕らの国を〉と印象的な一節を歌い上げた瞬間、眩い光がフロアを照らし出すと、そこにはステージを夢中で見つめる観客たちの姿が。その空間は、まさにDannie Mayだけの王国だった。マサはこの曲について“自分をそのまま曲にしたような純度の高い作品”と語っていたが、この空間を共有したファンにとってもきっと特別な一曲になっただろう。後のMCではYunoも、「バンドは3周年だけど俺たち音楽を始めてからはもっと長いじゃん。年齢は関係ないけど他の人と比べたらちょっと遅いかもしれない。リキッドに来るまでに泣き笑い怒り色々あったし、そういうことを考えながら『朱ノ歌』をやったらすごい思うことがあった」と溢れる感情を素直な言葉で伝えていた。

 続く「一生あなたと生きていくなら」でライブはまたご機嫌なムードへ。さらに、全肯定する歌詞とハッピーなメロディが気分を楽にしてくれる「メロディが浮かばなくても」、静寂の中に響き渡る3人の歌声が心地いいハーモニーを生み出す「木ノ歌」、ノスタルジックな弾き語りの「異郷の地に咲かせる花は」、ソフトなエレクトロサウンドの「白ノ歌」、エネルギッシュな歌声に心を突き動かされる「簡単なことが言えなくなるのは」と、全て雰囲気の違う名曲たちを次々に届け、Dannie Mayの多彩な音楽性を見せつけた。

 ここでファン待望のレア曲「待ツ宵」を披露。マイクを握ったYunoがステージ前方へ出てくると、「ここからさらに盛り上がっていきましょう!」と煽り、迫力ある歌声を響かせる。コール&レスポンスのパートでは、観客たちは声の代わりにハンドクラップで応え、一体感を生みだす。上がったテンションをそのままに、「黄ノ歌」へ。観客たちは、腕を突き上げたりジャンプしたり身体を揺らしたりと、自由に彼らの音楽に身を委ねる。「灰々」で勢いを増したライブは、キラーチューン「ええじゃないか」でラストへ向かって駆け抜ける。観客たちは「待ってました!」と言わんばかりにタオルを回してジャンプ。田中タリラは無邪気な笑顔でハンドクラップを煽り、Yunoはフロアを指さしながら隅々まで見つめ、Yunoは「次いつ会えるかわかんねぇぞ! 今日が最後だと思って楽しんでいけ!」と強気に煽る。その言葉で会場のボルテージはより高まり、熱狂が渦巻くままラストを迎えた。

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