世界各国の音楽フェスはコロナとどのように向き合っている? 『コーチェラ』『グラストンベリー』などの動きを整理

 連日のようにSNSのフィードに流れてくる海外のフェスティバルの映像。そこに映る景色を見ていると、ようやく長いコロナ禍を終え、パンデミック「以降」の時代に突入したかのような感覚を抱いてしまう。日本国内でも、昨年はイレギュラーな形での開催となった『FUJI ROCK FESTIVAL』と『SUMMER SONIC』がそれぞれ海外アーティストを招聘する例年通りの形式へと戻ることもあり、久しぶりの「あの感覚」を目前にワクワクしている方々も多いだろう。

 だが、国内外問わずパンデミックは決して終息しておらず、日別の感染者数を見てみると、アメリカやイギリスでは昨年と同程度の人数が新たに感染しており、日本国内に至っては今年初頭以来のピークを更新しているという状況にある(もちろん、ワクチン接種率や変異株の登場も相まって単純に数字だけで比較をすることはできないが、あくまで参考として)。こうした状況の中で、世界各国の音楽フェスティバルはどのようにパンデミックと向き合っているのだろうか。

政府や地方自治体と連携しながら緩和されていった感染対策

 フェスティバル復活の動きは、昨年の夏から秋頃に遡る。『Governors Ball』(2021年9月、アメリカ・ニューヨーク ※1)や『Reading and Leeds Festival』(2021年8月、イギリス ※2)といった多くの大型フェスティバルでは感染対策ガイドラインが定められ、来場者に対してワクチン接種証明書の提出や、事前のPCR検査の実施が義務づけられていた。とはいえ、ソーシャルディスタンスの徹底やマスク着用の義務づけ、声出しの禁止といった会場内での来場者の動きを制約するような項目については記載されていないケースが大半であり、「事前の対策は実施するが、会場内での行動についてはあくまで観客側に委ねる」というスタンスが取られるケースが多いのが実情だったりする。その結果、実は昨年の時点で「密になり、マスクを着けずに大合唱をする」という光景は珍しいものではなくなっていたと言っても過言ではない(実は一部の地域では来場者にマスクの着用を義務づけている場合もあるのだが、これに関しては無視されるケースが少なくない)。

Liam Gallagher - Stand By Me (Reading 2021)

 だが、それは決して好き勝手にやっているというわけではない。『Governors Ball』の運営などをサポートするLive Nationは昨年、政府や地方自治体と協力しながらガイドライン(※3)を策定し、それをフェスティバルやコンサートに適用することでイベントの開催に至っている。これは本稿の執筆にあたって確認した多くのフェスティバルに共通する動きであり、あくまで地域と連携した上で「ここまではルールとして定め、ここからは自己責任の範囲」と線引きをしているのである。地域の動きを見ながら、徐々に調整を進めていったというわけだ。

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