花澤香菜、新たな一歩を踏み出し開いていく様々な扉 前向きなマインドにフィットした最新シングルを語る

花澤香菜が開いていく新たな扉

 花澤香菜がニューシングル『駆け引きはポーカーフェイス』をリリースした。昨年の夏にレーベルを移籍し、今年2月には“再出発”をテーマにした通算6枚目となるアルバム『blossom』を発表。シングルとしては通算15枚目となる本作は、ヒロインの同級生・マキ役で出演するアニメ『それでも歩は寄せてくる』のオープニングテーマとなっている。これまでの彼女の活動を振り返ると、キャラクターソングを含む声優業と、“私”を歌うアーティスト活動の間には明確な境界線が存在し、個人名義ではそれほど多くのアニメソングを歌っていないイメージがあった。2012年4月にリリースした1stシングル『星空☆ディスティネーション』から10年。新たな一歩を踏み出し、様々な扉を開ける現在の彼女のモードとは。(永堀アツオ)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

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花澤香菜、日常に欠かせない“パン”と“ラジオ”への愛を語る!

アーティスト活動で大切にする「私であるということ」

花澤香菜(写真=伊藤惇)

ーー所属レーベルをポニーキャニオンに移籍して、今年の7月で1年となります。花澤さんにとってはどんな1年になりましたか。

花澤:やっていること自体はそんなに変わってないんですね。プロデュースは北川勝利(ROUND TABLE)さんのままですし、相変わらずのホーム感はあって。ただ、今回のようにアニメのタイアップをつけていただいたり、音楽番組にも出させていただいたり、歌を聴いていただく機会を幅広くいただいているなという感覚があって。Base Ball Bearさんやポルカドットスティングレイさんのライブにサプライズゲストとして出させてもらったりもして、私の世界がどんどん広がっていってる感じがしてますね。声優の活動以外にも色々飛び出していっていて。

ーー広がっていますよね。特にラジオ番組にゲスト出演される機会も増えています。

花澤:そうなんですよ。私、好きなものは好きって言っていくタイプなんですけど、いろんなところで「ラジオが好き」と言っていたら、ラジオについて語る番組に呼んでいただいたり、私が聴いているラジオにコメントを寄せさせてもらったり、いろんな機会を与えていただいて。思ってもいなかったところに広がっていたりもしてますね。

ーー声優業はもちろん、舞台やラジオ、ナレーションなど、活躍の場がどんどん広がっていく中で、音楽活動はどのような位置を占めてますか。

花澤:声優業と音楽活動、あと、自分のラジオ番組。その3つは、もうライフワークになっていると思いますね。声優の活動は求められないとできないものでもあるし、監督が求めているものを表現するっていうお仕事なので、その中でしか得られないものがあります。例えば、「この役をお願いしてよかった」と言われた時の嬉しさは、そこでしか感じられないものだったりする。一方の音楽活動は、全てが自分次第だったりするし、ライブが終わった後の解放感や達成感は、絶対に自分のライブでしか味わえないものだなと思っています。ラジオももう14年くらいやっているので、ラジオにしかないリスナーさんとの繋がりができていて。そこでのおしゃべりも楽しいし、みんなにも楽しんでもらいたいとも思うし。それぞれやっていることは違うんですけど、なるべく続けていきたいなと思いますね。

花澤香菜(写真=伊藤惇)

ーー今、ライブのお話がありましたが、再出発をテーマにした移籍第1弾アルバム『blossom』を提げたライブではどんなことを感じましたか。

花澤:30代に入って体調の変化もあって。このペースでお仕事を続けていくのは大丈夫かな? と思ったこともあったんですけど、それでも、諦めずにやってきた甲斐があったと感じましたね。ステージ上で、「あの時、諦めなかったから、今ここに立ててるな」っていう記憶がフラッシュバックしてきて。……なんというか、お客さんを前にして、すごく感慨深い気持ちになったんですよね。パフォーマンス的にもいいライブができたなって感じたし、それこそ、コンスタントにやっていきたいという気持ちの整理がついたのかもしれないです。

ーー自分の歌を続けてきてよかったと感じましたか。

花澤:そうですね。歌を歌うことは、私にとっては自分と向き合うことだったりするんです。声優のお仕事は、役と自分を重ねたり、自分の経験を広げていくことでいろいろな役を演じることができるのですが、音楽活動はそのままの自分を見られているという感覚があって。さらに歌詞を書くとなると、今、自分が考えていることや伝えたいことがより明確になるんですね。そうやって作った曲を自分で歌っていて、「この歌、心強いな」って思う瞬間がいっぱいあって。そういうことを感じられる瞬間があるっていうのは、自分がやってきたことが間違っていなかったんだなと感じられる部分でもあります。今、私が感じていることを、同じように感じる人もいれば、これから感じる人もいるかもしれないし、かつて通ったなって思う人もいるかもしれない。アーティスト活動はリスナーの方とより身近な存在になれるものだと思うんですよね。だから「私であるということ」は絶対に大切にしないといけないなと思います。

日々の最初の一歩、この曲に背中を押してほしい

花澤香菜(写真=伊藤惇)
ーーニューシングル『駆け引きはポーカーフェイス』の表題曲は花澤さんも出演されるアニメ『それでも歩は寄せてくる』のOPテーマになっています。青春ラブコメのアニメ主題歌であることはどう感じていますか。

花澤:私が今までやってきたアーティスト活動はそんなにアニソンには寄っていなかったんですね。でも、より多くの人に曲を聴いてもらいたいという思いがあって。これまでのものが地続きでありつつも、アニメが好きで、アニソンを聴いている人たちに耳馴染みのある曲を作りたいなと思ったんです。

ーー楽曲クレジットの座組を見ると納得できます。

花澤:そうですね。まず、このアニメがすごくいいんですよ。自称将棋部部長の八乙女うるしちゃんと、後輩で将棋初心者の田中歩くんのもどかしい恋愛模様を描いているんですけど、ずっと見ていられますね。「テレビの前でにやけちゃうな、これは」っていうウキウキしてしまうアニメなんです。だからこそ楽曲も作品に合ったものが必要だし、アニソンを聴いてきた人たちが心を掴まれるような何かも必要だし。でも、私が歌ってるし……という、そこのバランスがうまく取れたと思うんですよね。Clarisや『アイマス(アイドルマスター)』の曲で聴き馴染みのあるKOHさんの作曲で、私がデビュー曲からお世話になっている宮川弾さんの作詞で、プロデュースは北川勝利さん。だからこそ、歌えたというのがありますし、アニメを観ている人たちに一緒に聴いていただけるのはありがたいですね。

ーー楽曲を受け取って、どんなことを感じましたか。

花澤:めちゃめちゃポップだなと思いました。あと、サビの1回聴いたら頭から離れない感じがすごいなと。ボーカル面では、私が演じるマキちゃんのキャラソンのようにならないようにしなきゃとは思いました。

ーーうるしちゃんの同級生で二人の恋路を見守るマキちゃんの視点ではないんですね。

花澤:違いますね。でもうるしちゃん視点でもなくて。アニメのオープニングなんだけど、違う視点でも当てはまるように書いていただいています。

ーー歌詞はお馴染みの宮川弾さんですが、アニメの世界観ともリンクするものになってますよね。

花澤:そうですね。弾さん、アニメに寄せてきたなと思いました(笑)。冒頭の〈さあ踏み出そう1歩前へ〉の段階でもう〈歩〉が登場しているし、タイトルの「駆け引き」には恋と将棋の勝負、どちらも含まれていて。でも、このアニメのために作られた曲にはなりすぎていない。すごいバランスだと思いますね。

ーーうるしちゃんと歩くんの駆け引きを描いているように聞こえるし、たとえアニメを見ていなくても自分の日常と置き換えて聴ける歌詞になっていますよね。再出発を果たしたばかりの花澤さんはご自身の今の心境と重なった部分はありましたか。

花澤:私、毎日、「よいしょ!」っていう気持ちで家を出てるんですよ。

ーー〈さあ踏み出そう1歩前へ〉の気持ちで、家の玄関のドアを開けている?

花澤:本当にそうなんです。特に、最近は暑いので、外に出るのに勇気がいるじゃないですか。ありがたいことにいろんなジャンルに飛び出していっているので、1日に何個も違うジャンルのお仕事をしたりするんですね。声優のお仕事だけをしていたらお会いできないような方達ともお会いできて、楽しくお話ができるのは嬉しいんですけど、石橋を叩いて渡るタイプなので、すごく下調べをしたり、いろいろ考えたりするんです。だから、私自身「もう準備万端! えい!」っていう最初の一歩をこの曲に背中を押してほしいですね。

ーーこの曲のレコーディングはどんなアプローチで臨みましたか? 主人公視点でもないし、キャラ視点でもないですよね。

花澤:歌詞も曲調も可愛らしいので、私のニュアンス的なものをどこで入れようかなというのを試しながらレコーディングしましたね。いつも以上に表情豊かに歌っていると思います。

ーーとてもカラフルですよね。歌詞に出てくるセリフのようなカギカッコはアニソン的ですし、チップチューンやシンセポップが好きな方もきっと気に入ると思います。また、MVでは、VRを装着し、将棋、ポーカー、チェスの対戦相手として、さまざまな衣装に着替えています。

花澤:先にVRゴーグルを使ったジャケットを撮影していて。インパクトが強くて、面白いですよね。また将棋という歴史あるゲームと、VRゴーグルという最新の機器が合わさっているところが素敵だなと思っていて。MVの監督さんもそれにインスピレーションを受けて、VRゴーグルをつけた生身の私と、その中で戦うコスプレをしている私という内容にしてくださったようです。

ーー将棋の和装はどうでしたか。

花澤:写真フィルムのブランドのCMみたいになったなって思いました(笑)。

ーーお正月の写真CMでよく出てくる?

花澤:はい(笑)。子供の浴衣みたいな古着を借りてきてくださって、お花のモチーフをつけた、古風な感じになっていて。でも、なかに着ているのは洋服なので、その組み合わせもこの世界観に合っていて、テンションが上がりましたね。ポーカーはハットにかつらを被って、誰だかわからない感じになっています。普段、スーツを着ないのですごく新鮮で楽しかったです。チェスは金髪のロン毛。色んな私が入っていて面白いし、MVを撮るのって楽しいなと思いました。私、中学生まではゴスロリの服装で原宿を歩いたりしてたんですよ。めちゃくちゃ変身願望があったんですね。だから、そういう欲が満たされる感じがして嬉しかったです(笑)。あと、どの勝負も、最後の盤面やカードを見ると、ありえない勝ち方をしてるんですよ。そこのあたりも、わかる人が見たら面白いかなと思いますね。

ーーちなみに普段、ゲームは?

花澤:あんまりやらないんですよ。『マリオカート』で逆走しちゃうくらい上手くないです(笑)。向いていないので、ゲームをやっているとイライラしてきちゃうんですよ。MVの中ではしたり顔でめちゃくちゃゲームができる人みたいになってよかったなって思いました(笑)。

花澤香菜「駆け引きはポーカーフェイス」Music Video

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