でんぱ組.inc 鹿目凛&小鳩りあ『DEMPARK!!!』インタビュー “夢”というテーマに込められた本質のメッセージ
2021年春に5名の新メンバーが加入し、現在は9人で活動中のでんぱ組.inc。今年4月から7月にかけて、新体制初となる全国ツアー『お前らDEMPARKまで行くんだろ?乗りな!』を育休中の古川未鈴を除いた8人で開催。各公演でメンバー2名ずつが“夢”をテーマにした独白を行なってきた彼女たちが、テーマパークにいるようなカラフルでバラエティに富んだ世界観の多彩なエンターテインメントを詰め込んだ通算7枚目のオリジナルアルバム『DEMPARK!!!』をリリースした。
アイドルになるという夢が叶った後の厳しさと生きがいを教える「プリンセスでんぱパワー!シャインオン!」から始まり、〈君の夢のこと 教えてほしいんだ〉と聴き手に呼びかける「ドキ+ワク=パレード!」で幕を閉じる全14曲。初のポエトリーリーディングも含め、過去の傷や痛みを振り返り、涙を流しながらも胸を張って夢=希望を語る彼女たちをMIKATAせずにはいられない1枚を完成させた鹿目凛(ぺろりん)と小鳩りあの二人に“夢”についてたっぷりと語ってもらった。(永堀アツオ)
今のでんぱ組.incのアイデンティティー
ーー全国ツアーを終えた感想から聞かせてください。
小鳩りあ(以下、小鳩):1年半、でんぱ組.incのメンバーとして活動してきて、このツアーでようやく、自分がでんぱ組.incになったんだということを胸を張って言えるようになったかなと思います。
ーー東京公演のMCでも言っていましたが、どうしてそういう心境になれましたか。
小鳩:アイドルになって、地元の福岡に凱旋するっていう自分の夢を叶えたということもあるんですけど、このツアーで初めて「でんでんぱっしょん」をパフォーマンスさせていただいたんですね。ずっとやりたいと思っていたけど、今の自分たちにはまだできないだろうなということは自覚していて。でも、今回のツアーの前にYumiko先生から「やってもいいかなって思った」と言ってもらえて。福岡公演が終わった後に「あなたはでんぱ組.incになったんだよ」と声をかけてもらえたことも大きかったですね。
鹿目凛(以下、鹿目):今回のツアーでは、メンバーが各公演で、独白みたいな形で自分と向き合う時間があって。私はでんぱ組.incのアイデンティティーは、自分の嫌なところとも向き合って、それをファンのみんなと一緒に乗り越えていく、その生き様を見せていくところなのかなと思っていて。今回、各公演でそれぞれが自分と対話して夢を語り、「でんでんぱっしょん」というでんぱ組.incのパワーソングや1stアルバムの収録曲もたくさんやらせていただいた。ツアーまでは覚えることがいっぱいあってバタバタしていたけど、今回のツアーでみんなで一緒にスタートダッシュがきれたのかなと思って。ピンちゃん(藤咲彩音)もMCで「みんなが肩を並べて走り出せるようになった」って言ってくれて。キャリアや経験の違いがあると、同じ歩幅で走るのは難しいところがあると思うんですけど、今回のツアーでみんなが本気で向き合ったからこそ、絆も深まったんじゃないかなと思います。
ーー今、グループとしての成長を話してくれましたが、ぺろりん自身は個人的にどんなことを感じましたか。
鹿目:私は名古屋公演で自分がアスペルガー症候群だということを公表させていただきました。自分の障害のことをずっと隠してきたんですけど、「好感Daybook♡」や「ドキ+ワク=パレード!」を歌うタイミングでいろいろと考えさせられることもあって。今はアイドルとして、自分のことを「可愛い」とか、「私ってやっぱり最高だよね!」って自信を持って言えるんですけど、アイドルを始める前は、コンプレックスや自分の嫌なところがたくさんあって。でも、3年前に無理矢理にでも頑張って言葉にしようと覚悟して、自己暗示のように「自分って最高!」「自分って可愛い!」と言い始めたんです。そうしたら、どんどん自分のことが好きになってきて。自分自身も苦労してきたし、周りの人も苦労させてしまったけど、そんな中でも頑張ってきて、そんな自分も含めて好きな自分でいられるところまできた。これも私だ、と。今では障害のことを差別用語のように使われて傷ついてる人たちに勇気を与えられるんじゃないかっていう気持ちにまでなれたんです。だから公表しました。
ーーニュースにもなりましたが、個性というか、性格の特徴の一つとして受け止めた方が多かったです。
鹿目:そうですね。私自身、アスペルガー症候群であることを言い訳にしたくないってもがき続けていたのと、周りの人たちが「ぺろりんのいいところを伸ばしていこう」って、ダメなところもちゃんと言ってくれて。周りの環境も大きかったなと思っています。
ーーそして、ツアーの東京公演ではニューアルバムに収録された新曲「DNA」の初披露もありました。
小鳩:私は普段ポジティブなことを言っていても、根はネガティブで劣等感がすごく強い本質は変わっていなくて。だから、この曲を最初に受け取った時に、一言一言が痛かったんです。自分の暗い部分を刺激されて、レコーディングでは泣いちゃったりしたんですけど。ツアーで自分と対話して、みんなも文章で残して、ファンの方にSNSで見せるということをやって。自分に向けた手紙、ファンに向けた手紙を書いてきました。だから、最初のポエトリーの〈わたしに宛てた手紙を書くよ〉はこのツアーにピッタリだったなと思って。
鹿目:〈この手紙の内容を忘れるいつかのわたしに届くように〉もそうだよね。今、抱えている悩みはきっと何年か後にはきっと忘れてしまうものなんですよ。こんなこと考えてたんだって。だから、今しかわからないことをリアルタイムで発信するっていうのは、とても大切なことなんだなって思って。私は、2番の歌詞の〈ひとりぼっちじゃ きっと知らないままだった〉がなんかちょっと泣きそうになっちゃう。
小鳩:うん。
鹿目:私も人間関係が得意じゃなくて。たくさん人とぶつかったり、傷ついたり、傷つけてしまったこともあったけど、その度に成長していって、そこから築ける関係というのを築いてきた。あの時に傷ついたのは、今、こうして生きるためだったんだって思えるようになったから。この歌詞は、自分の人生にも当てはまるなと思いますね。
ーーポエトリーリーディングも初挑戦だったんですよね。
鹿目:そうですね。すごく細かく歌い分けているんですけど、メンバーに合った歌割りになっていて。ライブでやった時にどういう雰囲気になるのかがあんまり想像できてなかったんですけど、ファンのみんなも明るい気持ちで捉えてくれてよかったなって思います。
小鳩:どんな風に「DNA」を歌うかっていうのをすごく考えたんですよね。私がお客さんの立場でこの曲を聴くとしたら、そんなに暗い感じにはしてほしくないな、私(観客)を見て歌ってほしくないと思って。(ポエトリーをする)その子が、その子自身と向き合って歌っている姿が素敵だろうなって想像したので、私は「DNA」はファンの方を見るというよりは、本当に自分自身と向き合いながら歌っていました。
ーーサビで泣いているお客さんがたくさんいました。
小鳩:ライブが終わってからTwitterとかで反応を見たら、「刺さった」という方がたくさんいたのでよかったです。
鹿目:ファンの人との出会いも一期一会じゃないですか。そんな中で、アイドルを長く続けていたら、またいつか会えるかもしれない。そんなことも考えながら歌ったりもしてましたね。
ーー離れていた〈きみ〉との再会も描かれていますもんね。また、眉村ちあきさん提供の新曲「プロタゴニスト」にはラップもありますが、ちょっとぺろりんっぽい歌詞だなと感じました。
鹿目:ほんとですか、嬉しい。個人的な解釈としては、私、メンタルが強いって言われることが多いんですね。ぺろりんなら何を言っても大丈夫だし、もはや、ぺろりんはこのくらい言わないとわからないって感じで、きつく言われることも多くて。それも、自分のためだったら、「ありがとう。成長に生かすよ」って思えるんですけど、自分のためじゃない言葉ってわかるじゃないですか。そういうことを言われた時に、メンタル強いって言っても、傷つかないわけじゃない。でも、乗り越える力があるから強いって言ってるんだよって、私はこの歌詞を見ながら思ったりします。
小鳩:傷ついてはいるんですけど、強さを感じる歌詞ですよね。だから、先輩メンバーが歌うことでより「プロタゴニスト」の歌詞に説得力が出ると感じていて。冒頭の〈これで満足ですか〉も長くやってきたからこその余裕があるし、〈まだはがせない絆創膏があるの〉も、いっぱい傷ついてきたからこそ出る言葉だなと思っていて。私この曲、好きなんです。この曲の主人公くらい、傷つけてくる言葉にも強気でいたい。そうなれるようになりたいと思いました。
鹿目:そうだね。これは、持ってていいプライドの曲だよね。〈ほんとの 泣いてるところは見せてあげないんだから!〉とか。誰にも見せない、見せなくていい芯の部分がある。〈僕は強い泣き虫 プロタゴニスト〉というのは生き様でもあると思うし、この曲とともに強くありたいなって思いますね。