IRyS、日本と海外を横断するホロライブENの“歌姫” Elements Gardenメンバーが紐解く、シンガーとしての魅力は?

「英語が喋れる方だからこそ出せるグルーヴを感じた」(近藤)

近藤世真

ーー最後に、4曲目の「ENJOY! JOY!! JOYFUL!!!」についても教えてください。 

近藤:最初に藤田さんからイメージをいただいたときに、「アイリッシュ音楽とファンクの要素を混ぜてほしい」という話をいただいたですが、なかなかそのような音楽はないですし、参考になるような曲も思い浮かばなかったので、最初はどうしようかと思いました。 

ーー普通、アイリッシュ音楽とファンクはなかなか混ざらないですよね。 

近藤:そうなんです。それですごく悩んだんですよ(笑)。 

藤田:その辺りは、思い切ってぶん投げてみた部分もあるんですが、他の曲との兼ね合いも考えたときに、ファンクをベースにしたワンコードで進んでいく曲に、アイリッシュの要素が混ざった曲があるといいな、と思ったんです。ただ、それまでの3曲でアイリッシュの要素を提示できていると思ったので、この曲にはその要素は少な目でいいよ、とは伝えました。 

近藤:そうは言っていただいたのですが、僕もアイリッシュの要素は意識していて、この曲ではバグパイプを使いました。あと、他にアイリッシュの要素を加えられるのはスケールだと思ったので、「楽」を表現するために北欧系の音楽でよく使われる、ミクソリディアンスケールを使いました。今回、ファンクやブルース系のスケール/コードも使っているので、コードとの相性も良く、そのスケールと音が似ているミクソリディアンスケールを使えば、上手く2つの要素が混ざると思ったんです。 

ーーなるほど。まるで創作フレンチのシェフのようなことをしているんですね。一見意外に見える食材の組み合わせから共通点を探して、おいしい料理に仕上げていくような。 

近藤:あとは、「喜怒哀楽」の最後の楽曲として、とにかく楽しく、賑やかな曲にしたいなと思っていました。この曲にはコーラスもありますし、「IRySさんのラップも聴いてみたいな」と思って冒頭ではラップもしてもらっています。色んなものを詰め込んでみました。 

ーーサビも、まるでEarth, Wind & Fireなんじゃないかと思えるぐらい華やかなパーティーファンクになっていますね。 

近藤:(笑)。サビの部分は分かりやすくキャッチーにしたいと思っていました。アイリッシュでもブルースでもよく使われるペンタトニックスケールをリフレインしています。 

藤田:「理想通りの曲を作ってくれてありがとう」という気持ちでしたが、同時に遠慮がないな、とも思いました(笑)。セクションがたくさんあって、ラップがあればDメロのようなものも出てきたりと、二度と同じセクションが出てこないくらい要素が多い楽曲で。歌うのはすごく難しかったと思うんですけど、「IRySさんなら大丈夫」という気持ちでした。 

都丸:要素が多くて、長くて、聴き応えがある楽曲ですよね。これはホロライブさんの楽曲でもそうだと思うんですけど、世の中的には短い楽曲が主流になっている中で、この曲のような楽曲があるのは、すごく面白いんじゃないかと思いました。あえてトレンドの逆を行くような楽曲が、曲のひとつとしてあるのはすごくいいんじゃないかと思います。 

ーー他にも、みなさんがIRySさんのレコーディングで印象的だったことはありますか? 

近藤:やっぱり英語が喋れる方なので、そういう方だからこそ出せるグルーヴを感じます。特に「BERSERKER」はそうですね。歌だけでグルーヴを感じる部分がありました。 

都丸:僕もすごく新鮮に感じました。 

藤田:あとは……レコーディング中に水をすごく飲んでいましたよね。 

近藤:やっぱり、一回ごとに全力でレコーディングされていたので。途中で足りなくなってしまうんじゃないかと思って、追加で買いに行ったりもしました(笑)。 

ーーVTuberの楽曲ならではの魅力を感じた瞬間もありましたか? 

藤田:2人はもともと、VTuberの方々の配信を見たりしていたのかな? 

都丸:僕は普段から、ラジオ気分で配信を聴いたりしています。やっぱり、VTuberの方々は配信の頻度が高い方もいらっしゃるので、存在としてとても身近に感じるような魅力がありますよね。楽曲とVTuberさん、リスナーさんとの距離感が、とても近いものになる印象があります。 

ーー配信などを通して、その方の人柄が深く伝わってくる印象がありますよね。 

都丸:だからこそ、曲によっては、普段の配信では見られないような一面を表現できるようなこともあると思うので、そういうギャップも楽しんでいただけるかもしれません。 

近藤:確かに、楽曲を聞いたたときに、普段配信されているときの印象とは違う雰囲気の楽曲を歌ったりしたときのギャップ萌えなどはキュンとくる部分がありますよね。 

藤田:今回、IRySさんは制作中にライブを見越した自分の曲の在り方についてもお話をされていて。制作中に、ライブで歌うことを想定して「この曲のキーは下げてください」というオーダーがあったりもしたので、「最終的にリスナーのみなさんの前に立って歌う」という明確なビジョンがあるように感じました。あとは、レコーディングの前にIRySさんの配信を観ていたんですけど、『マインクラフト』の配信などでもすごく長尺のゲーム実況をされていて。でも、色んなことにツッコんでくれたりして、観ていて全然飽きないんですよね。ずっと楽しく見ていられました。自然体で楽しんでいる様子に僕も虜になってしまいました。 

都丸:僕はIRySさんが出ている配信だと、Mori Calliopeさんの企画で、IRySさん、AZKiさん、角巻わためさんが出演していた英会話レッスンの配信がすごく好きです。簡単な自己紹介の英語から、最近のスラングまでをみんなで楽しくワイワイしながら教えるような配信で、見ていてすごく面白かったです。 

ーー英語圏やアジア、ヨーロッパ、南米など日本以外にも様々な国の方々が観ているホロライブらしい配信企画ですね。 

近藤:僕は『機動戦士ガンダムSEED』について、IRySさんが語っている様子も印象的でした。早口でめちゃくちゃ日本語が上手くて、とても記憶に残りましたした。 

ーーIRySさんやホロライブのみなさんに今後期待していることもあれば教えてください。 

藤田:自分は年齢もあって、VTuberの方々の魅力を知るタイミングは遅かったんですが、すごく面白いエンターテインメントのひとつだと思うので、今回ご一緒できてすごくいい経験になりましたし、楽しかったです。 

都丸:IRySさんやホロライブのみなさんの配信/動画を見ていると、VTuberの文化がこんなにグローバルに広がっているんだな、と気づかされますよね。これがどんどん広まっていって、海外でフェスを開いたりしてくれたら嬉しいな、という期待もしています。 

ーーまたIRySさんと楽曲を作るとしたら、何か試してみたいアイデアはありますか? 

藤田:僕は基本的にリクエストにお応えしたいタイプなので、自分から「こういうものがやりたい」と考えるタイプではないんですが、またぜひ楽曲を作らせていただけたら嬉しいです。何か言っていただければ、その中で一番いいものを出せる自信はありますので。 

近藤:今はVTuberの方がたくさんいらっしゃいますし、今度はコラボレーションでの楽曲などもできたらとても楽しそうですよね。 

都丸:確かに。あとは、また機会があるようなら、全編英語詞の楽曲も作ってみたいです。英語詞の楽曲はまたグルーヴが変わってきますし、IRySさんだからこそできることでもあると思うので。 

近藤:IRySさんの楽曲には「あかつきと花」という日本語詞の和風の楽曲がありますが、たとえば今度は全編英語で、サウンドは和風なものがあっても面白そうですよね。あとは、表現力のある方なので、個人的には最近のトラックメイカーの方々が作られているような、サウンドの楽曲も作ってみたいな、と思ったりしています。 

■リリース情報
IRyS『Quarter Bravery』
2022年7月11日(月)発売
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