上白石萌音が明かす、葛藤を繰り返しながら向き合う“歌うこと”　「いつでも音楽を楽しめる自分でありたい」

「歌うこと」に訪れた2度のターニングポイント

ーー昨年から今年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は、幅広い世代の方に認知してもらう大きなきっかけになったかと思います。ここにたどり着くまで、葛藤や挫折を経験したこともあるのかもしれませんが、音楽活動に関してそういった出来事はありましたか？

上白石：歌に関しては2回ぐらいターニングポイントがあって。初めて仕事で歌を歌ったのが『舞妓はレディ』（2014年公開）という映画だったんですけど、それがまず一つ目ですね。これまでただ好きで歌っていたのとは違い、作品として世に出すということで、自分の実力や現実を痛感しました。実は先ほどお話したボイトレの先生は『舞妓はレディ』のときに出会った方で、もう10年くらい見ていただいているんですけど、最初は「あなたの歌は音符が見えてつまらない」と厳しく指摘されたこともありました。どうやって物語のある歌にするのかということは、最初の大きな関門でした。あの頃経験したことは今も核になっています。

ーージャンルによっては楽譜の通りに表現することが大前提な場合もありますが、ポップスとなると楽譜にない要素をいかに表していくかも重要ですもんね。では、二度目のターニングポイントは？

上白石：もうひとつは、歌手デビューしてから2、3年経ったとき。それこそ本当に最近まで、もしかしたら今も続いているかもしれないんですけど……歌手デビュー前はミュージカルなど、役として歌っていましたが、“上白石萌音”として歌うとなるとその役がなくなってしまうので、歌うことが急に怖くてたまらなくなってしまって。生放送の音楽番組で歌うときも、「音を外すんじゃないかな？　歌詞を忘れるんじゃないかな？」と恐怖に取り憑かれるようになってしまったんです。私は、家でもずっと歌っているような人間だったのに、歌手デビューしてからはそういうこともまったくなくなってしまって、人生で初めて「歌いたくない！」ということが起こりました。その恐怖はいまだに抱えているもので、きっとこれからもその葛藤とは付き合っていくんだろうなと思うので、そこから脱するためにもとにかく練習して、ちょっとずつ前に進んでいけたらなと思っています。

ーー子供の頃、呼吸をするように歌っていたのとはだいぶ違うところに到達しましたね。

上白石：それだけではいられなくなりました。それでも歌手活動を続けたいと思うのは、やっぱり歌が好きだから。こういう葛藤を繰り返しながら、少しずつ前に進んでいるところです。それに、今に満足してしまったら成長も止まってしまうので、苦しみながらも楽しく歌っていけたらと思います。

ーー「苦しみながら楽しく」、言葉にするとかなり壮絶ですね。

上白石：ふふふ（笑）。やっぱり歌い方を探したり練習をする時間というのは大変だし苦しかったりもしますが、人前で歌うことやレコーディングとなるとより自信を持っていないといけない。もちろんそこでも心から楽しく歌いたいので、今は楽しむための修行をしている感じです。

本当の私は弱いところや、曲がっているところもある

ーーなるほど。ちょっと音楽の話題から外れますが、上白石さんには誰からも愛される人柄がパブリックイメージとしてあると思うんですが、そういったイメージをご自身ではどう捉えていますか？

上白石：そういうふうに思っていただけることはありがたいなと感じています。本当の私は弱いところや、曲がっているところもある。だけど、そういった部分すらも理解してくれている人たちが身近にいるので、今はそれで十分です。

ーーでは、そういうイメージを変えてみたいと思ったことは？

上白石：それはあまりないですね。描いていただいているイメージが演じる役に悪い影響を与えることがない限りは、そういうことは考えないです。きっと、すごく健康的な人という印象があるのかもしれませんが……それが今、役や作品に悪影響を与えることはないので、ありがたいです。この先もっと大人になっていく上で、いろんな変化を求められていくかもしれませんが、そこは時間に任せていけたらと思います。

ーーいろんなジレンマを抱えながら、今も日々音楽活動と向き合っているわけですが、歌手・上白石萌音としてここからの音楽人生をどう過ごしていきたいですか？

上白石：ひとつは、オリジナル曲を歌うのと同じように、いろんな曲をカバーできたらなというのがあります。名曲を後世に向けてどんどん歌いつないでいきたくて。あとは、私の音楽を聴いてくれている方には若いリスナーさんも多いので、そういう方々が往年の名曲を知るきっかけになるようなことができたらいいなと。そのためにはもっと引き出しも欲しいですし、ご縁があって出会った歌をしっかり歌える人でありたいなと思います。

ーー例えば、こういう会場で歌ってみたいという願望は？

上白石：具体的にどこでライブをしたいとか、何に出たいといったイメージはあまり描けていないんですけど、コツコツ続けていればうまくいくときはいくし、うまくいかないときはいかないだろうなと。そんな感じです。

ーー長く楽しく続けていくのが一番だと。

上白石：そうですね。先日「君の名前」という曲で、ハンバート ハンバートさんとご一緒したんですが、私が歌入れをし終えた直後に、ご夫婦でコーラスを入れてくださったんです。その様子が本当に楽しそうで、音楽はやっぱり楽しむものなんだなって心の底から実感して。お二人みたいになれるように鍛錬して、いつでも音楽を楽しめる自分でありたいなと思いました。

ーーこんな曲を歌いたい、こんなメッセージやテーマを歌いたいという目標は？

上白石：アルバム『name』には森山直太朗さんが提供してくださった「懐かしい未来」という曲が収録されています。直太朗さんっていろいろな曲を歌われていますけど、「生きよう」っていうことが大きなテーマだと思っていて。「生きていたらつらいこともあるけど、でも生きようよ」と歌える方ってすごく素敵だなと思うんです。私も、「ああ、明日も頑張るか」とか「明日も生きてみよう」という気持ちになってもらえるように、この大変な社会の中で少しでも助けになるような歌を届けられる人になりたいです。

■リリース情報
アルバム『name』
2022年7月13日（水）発売

＜収録曲 /全9曲＞
1. I’ll be there
Lyrics：いしわたり淳治　Music：末光 篤　※TBS系「王様のブランチ」テーマソング
2. ジェリーフィッシュ
Lyrics：Makoto ATOZI　Music：金子隆博
3. チョイス
Lyrics：キヨサク　Music：キヨサク
4. スピン
Lyrics：上白石 萌音　Music：諸見里 修
5. 懐かしい未来
Lyrics：森山 直太朗　Music：森山 直太朗　※『第100回全国高校サッカー選手権大会』応援歌
6. 愛すべきブルー
Lyrics：谷中 敦　Music：川上 つよし
7. 夕陽に溶け出して
Lyrics：小林 武史　Music：小林 武史　※TBS系『ｎｅｗｓ23』エンディングテーマ
8. Tea for Two
Lyrics：Irving Caesar　Music：Vincent Youmans
9. 君の名前
Lyrics：佐藤 良成　Music：佐藤 良成

・初回限定盤(CD+DVD+ミニ写真集) 品番:UPCH-7625 価格:4,000円(税抜)/4,400円(税込)

【DVD収録内容】
「夕陽に溶け出して」ミュージックビデオ
「夕陽に溶け出して」ミュージックビデオメイキング映像
「懐かしい未来」ミュージックビデオ
「name」アートワーク撮影メイキング映像

・通常盤(CD)
品番:UPCH-2242 価格:3,000円(税抜)/3,300円(税込)

■ツアー情報
上白石萌音『yattokosa』Tour 2022

＜スケジュール＞
7月16日(土) 那覇文化芸術劇場なはーと(https://www.nahart.jp/)
7月21日(木) 札幌文化芸術劇場hitaru(https://www.sapporo-community-plaza.jp/theater.html) 8月6日(土) 岡山シンフォニーホール(http://www.okayama-symphonyhall.or.jp/) 8月11日(木祝) 東京国際フォーラムホールA(https://www.t-i-forum.co.jp/)
※17:00 OPEN / 18:00 START

＜チケット＞
・一般チケット
・学割(中高生)チケット
・学割(小学生)チケット
札幌公演のみ18:00 OPEN / 19:00 START
7,800円(税込) 6,000円(税込) 3,500円(税込)
※全席座席指定・消費税込 ※未就学児は、一般チケットをお持ちの保護者1名の同伴に限り1名まで入場可、膝上鑑賞

■上白石萌音 OFFICIAL
上白石萌音オフィシャルサイト：https://kamishiraishimone.com/
ユニバーサルミュージック 上白石萌音サイト：https://www.universal-music.co.jp/kamishiraishi-mone/
上白石萌音Instagram 公式アカウント：https://www.instagram.com/mone_kamishiraishi/?hl=ja
上白石萌音オフィシャルブログ：https://ameblo.jp/mone-kamishiraishi/
上白石萌音マネージャーTwitter：https://twitter.com/mone_tohoent
東宝芸能オフィシャルサイト：https://www.toho-ent.co.jp/actor/1055

※衣装クレジット：ノースリーブドレス 41,800円(エスロー／エンケル ︎03-6812-9897) 中に着たブラウス 46,200円(ケイコ ニシヤマ ︎03-5357-8292) イヤリング 3,080円(トゥラン／コトモノマルシェ東急ハンズ新宿店 ︎070-3229-6807) パンプス スタイリスト私物 （全て税込金額）