にしな、一人で進むために選んだ“仲間”との別れ 旅立ちと自由への希望を託した「青藍遊泳」のバックストーリー

にしな「青藍遊泳」インタビュー

「にしな をよりよくするために」一人で進むことを決意

ーー新曲の「青藍遊泳」は『hatsu』でも『虎虎』でもアンコールの1曲目に演奏された曲で、MCでは「自分にとって分岐点」ということをお話しされていましたよね。

にしな:私はもともとずっと弾き語りで音楽をやってきて、そのなかでバンドをやったりグループに入ったり、いろんな人と出会って、刺激をし合って、ここまで進んできたんですけど、そのなかで「ここからは“にしな”として一人で進んでいこう」って決めたタイミングがあったんです。それで最後にグループのみんなと一緒にやるライブがあったんですけど、そのライブが終わったあとの会場BGMで、スタッフさんがユニコーンの「すばらしい日々」を流してくれて。当日はそこまで意識していなかったんですけど、あとでそういうことをしてくれていたと知って、歌詞を見ながら改めて聴いたら、いい曲だなと思ったんです。

ーー歌い出しから〈僕らは離ればなれ〉で、シチュエーション的にも合ってますもんね。

にしな:最後の歌詞が〈君は僕を忘れるから そうすればもうすぐに君に会いに行ける〉じゃないですか? それを贈ってもらった身として、自分はこれからより一生懸命に、みんなのことを忘れちゃうくらいに音楽に夢中になれたらいいなって思ったし、いつまでもそういう自分であり続けたいと思って。「青藍遊泳」はそういう気持ちで書いた曲です。

ーー〈さらば友よ、忘れてしまえよ/ただ必死になって泳いでいく〉というラインにその気持ちがストレートに表れていて、にしなさんにとっての決意表明の歌になっていますよね。裏を返せば、そのグループでの活動がにしなさんにとって大切な時間で、後ろ髪引かれる思いがあったからこそ、それを振り払うくらいの強い想いが必要だったということでしょうか?

にしな:というよりは、そのグループ自体まず個人があって成り立ってるグループだったので、きっとみんな入ったときから、いつかやめるものだって考えていると思うんです。最後のライブも本当に卒業式みたいな感じで、「もっとここにいたかった」みたいな感じよりは、単純に友達と離れちゃうのが寂しいとか、そういう感覚でしたね。

ーー「ここからは一人で進んでいこう」と思ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

にしな:もちろん、いろんな物事のタイミングがあったんですけど……一番シンプルなきっかけとしては、それまでいろんなことを思いながら進んできて、そのとき必要だと思う部分を自分なりに伸ばしてきたんですけど、ここから先もっと望む方向に進むためには何が必要なのかなと思ったときに、グループとしてではなく、「にしな」としていい曲を書くことにすべての時間を割きたいと思う気持ちが湧いたというか、それが必要だと思ったのかな。なので、気持ち的には「にしな をよりよくするために」っていう感じでした。

「好きなところに行っていいと思ってる」とただ言いたかった

ーー「青藍遊泳」は〈門出の夜に忍び込んで/青いプール金魚を放とう〉という歌い出しから始まっていて、この映像的なイメージがタイトルにも繋がってると思うし、そこには「青春」という言葉のイメージも重なるのかなと思うのですが、いかがでしょうか?

にしな:最初にこのタイトルをつけたのは完全にフィーリングで、音の響きとかが良かったからなんです。イメージとしては、夜になると空と海の境目がわからなくなって、暗いんだけど、でもちょっと青い、あの感じが好きで。青色でもないし藍色でもない、青藍色が私のなかの空と海の色でもあり、青春に対するイメージでもあるのかな。

ーーライブだとさっきの分岐点の話の後に、「これから先も、広い宇宙のなかを私たちがどこまでも自由に泳いでいけることを願っています」と話してから演奏を始めるじゃないですか? さっきの空と海の境目がなくなった夜のイメージと、広い宇宙のイメージがにしなさんのなかで繋がってるのかなと思ったのですが。

にしな:そうですね。宇宙に投げ捨てられたお魚さんみたいな気持ちがあるというか、だだっ広いなかを、すごく小さな存在として……それは悲しい意味じゃなくて、自分が他者に与える影響が少ないからこそすごく自由だと思っていて。この広いなかをどこにでも行っていいし、どこにでも行けるんだという気持ちがあるから、自分自身がそれを忘れたくないし、みんなもそうだと思うっていうことを伝えたいというか……「好きなところに行っていいと思ってる」と、ただ言いたかったのかなって。

ーー「青藍遊泳」には一人で進んでいくことの不安や心細さと、その一方での自由や解放感が同居していて、それがすごく魅力的だと思います。なおかつ、曲ができた背景にはにしなさん自身のミニマムな想いがあるんですけど、曲になることで「誰しもが自分の人生を自由に生きていいんだ」という願いやエールになるような、まさにそういう曲だなと。

にしな:そうですね。私も話しながら、自分で「そう思ってたんだ」って、気づかされました。どの曲に対しても思うことですけど、この曲は特に「みんなの曲になっていったら嬉しいな」と思います。

ーーあのライブのMCからも、その想いが伝わってきます。

にしな:この曲を歌うときは、水辺にしずくがポチャンと落ちて、波紋がフワーッて広がるようなイメージが自分の中にあって。それと「宇宙の中を自由に泳いでいく」っていうイメージが、自分のなかで何となくリンクしてるんですよね。

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