タイのラッパー F.HEROが語る、アジア音楽シーン発展のビジョン LDHとのパートナーシップで広げるJ-POPの可能性

アメリカがアジアのシーンを注目するようになることを目指して

——では、LDHとのパートナーシップについて。F.HEROさんは記者会見で「HIROさんの理念や哲学に共感している」とコメントしていますが、LDHに対してどんな印象を持っていますか?

F.HERO:先日、LDHが運営するダンススクール(EXPG STUDIO)でのレッスンを見せてもらったんですが、EXILE TRIBEの理念が子どもたちに受け継がれていることに感銘を受けました。生徒のみなさんはK-POPやアメリカの音楽にも親しんでいると思いますが、EXILE TRIBEのダンスのスタイルを学び、それに対して誇りを持っているのが素晴らしいなと。タイにも若いアーティストを支援しようとする動きがありますが、まだまだ足りないと感じています。私自身も支援やプロデュースなどを行っていますが、体力と気力があるうちに、さらに広げていきたいと思っています。

——武者修行で夏からタイに拠点を移すBALLISTIK BOYZ、PSYCHIC FEVERについては?

F.HERO:どちらのグループからも、すごくエネルギーを感じますね。BALLISTIK BOYZは全員のボーカル力が高く、感動しました。PSYCHIC FEVERはパフォーマンスがカッコよく、女性のファンはもちろん、男でも見惚れてしまいそう。アジアには数多くのボーイズグループが存在しますが、LDHのグループは日本独自のスタイルと現代的なテイストが上手くミックスされている印象ですね。全力で頑張る姿勢にも心を打たれましたし、タイでもきっとウケると思います。

BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE / 「Animal」Music Video
PSYCHIC FEVER - 'Best For You' Official Lyric Video

——両グループの楽曲制作については、どんなアイデアがあるんですか?

F.HERO:NinoというタイNo.1プロデューサー(F.HERO x MILLI feat. Changbin of Stray Kids「Mirror Mirror」をプロデュース)や、タイで有名なBOTCASHというEDMのプロデューサーには、ぜひ参加してもらいたいと思っています。どちらもヒップホップをルーツにしていて、HIROさんにも「合いそうですね」と言ってもらいました。コラボレーション相手は考えているところですけど、楽しみにしていてください。

High Cloud Entertainment所属アーティスト

——タイと日本のアーティスト同士の交流も活性化しそうですね。

F.HERO:はい。我々は以前から東南アジア諸国のアーティストと交流し、コラボレーションを行っています。カンボジア、ベトナムなどにも素晴らしいアーティストがいるし、国籍に関係なく、一緒に作品を作って発信していきたい。もちろん日本とも交流したいです。

——将来的なビジョンとしては、アジア全体で力を合わせて、アメリカ、ヨーロッパに進出していくということですよね?

F.HERO:いえ、そうではありません。先ほども言いましたように、大切なのはアジア各国のアーティストと交流しながらクオリティの高い楽曲を作り、全体のレベルをさらに上げること。こちらからアメリカに進出するのではなく、向こうがアジアの音楽シーンに注目するようになる、ということです。アメリカ=世界ではありませんから。

——なるほど。“進出する”という発想自体に、アメリカの方が進んでいるという固定概念があるのかもしれません。確かに今年のコーチェラ(『Coachella Valley Music and Arts Festival』)などを見ても、アジアのアーティストの存在感は確実に高まっていますからね。宇多田ヒカルさんが日本語で歌唱したことも話題を集めました。

F.HERO:それもいいサインでしょうね。コーチェラには、タイのラッパー MILLIも出演しました。「Mirror Mirror」をパフォーマンスし、最後にマンゴーライス(タイの定番デザート)を食べていて。そんな彼女を誇りに思いました。こうしたいい動きはさらに続くと思いますし、アジアの音楽シーンは5年以内にさらに大きく発展すると予想しています。

F.HERO x MILLI Ft. Changbin of Stray Kids - Mirror Mirror (Prod. by NINO) [Official MV]

※1:https://realsound.jp/2022/05/post-1027536.html

関連記事