桑田佳祐、佐野元春、世良公則、Char、野口五郎が歌う平和へのメッセージ 次世代へのエールも込めたロックンロール
桑田、佐野、世良、Char、野口が生まれた1955年(昭和30年)~1956年(昭和31年)は、高度経済成長期が始まった頃。太平洋戦争の敗戦から10年が経ち、急激に復興が進んでいた時代だ。戦勝国の欧米からは音楽、映画、ファッションがなだれ込み、日本のカルチャーを変貌させたわけだが、彼らがその洗礼を受けたことは間違いない。“All You Need Is Love”と歌ったThe Beatles、愛と平和を掲げた『ウッドストック・フェスティバル』、ベトナム戦争を背景に“武器ではなく、花を”スローガンにしたフラワーチルドレンのムーブメントなどをリアルタイムで体験したことは、5人の作品や音楽活動にも多大な影響を与えたはずだ。
昭和から現在までの音楽シーンにおける、彼らの功績は周知の通り。海外のロックンロール、ソウル、R&Bなどを貪欲に吸収し、日本語のポップミュージックとして体現してきたこと、下の世代に対する影響の大きさはここで説明するまでもない。しかし、この国のポピュラーミュージックが商業主義に絡めとられ、60~70年代の音楽のなかにあった社会への異議申し立て、平和へのメッセージが減衰したことも事実だ。
これは筆者の想像だが、桑田、佐野、世良、Char、野口はおそらく、音楽を通してメッセージを伝えられないこと、世の中に響かないことに対し、違和感や悔しさ、忸怩たる思いがあったのではないか。ロシアによるウクライナへの侵攻、沖縄本土復帰50年、憲法改正を巡る論議など、“平和とは何か?”という根本的なテーマと向き合わざるを得ない2022年に彼らが「時代遅れのRock’n’Roll Band」をリリースしたのは、“どうしても黙っていられない。音楽の力と楽しさをもう一度示したい”と突き動かされたからだろう。
ロックに世界を変える力があるか? 答えはもちろんYES。ただし、世界を変えるのは音楽そのものではなく、我々自身だ。「時代遅れのRock’n’Roll Band」をどう受け止め、どう行動するか? そう、この曲はすべてのリスナーに対して、“あなたはどうしますか?”と問いかけているのだ。
……と、何やらシリアルな原稿になってしまったが、とりあえずは彼らがめいっぱい音楽を楽しんでいることを味わってほしいと思う。ロックンロールを浴び、身体の奥から楽しいと感じ、心を思い切り解放するーーまずはそこから始めようではないか。(「時代遅れのRock’n’Roll Band」はMVも制作されるという。5人が一緒に歌い、ギターを弾くシーン、ぜひ観たい!)
「時代遅れのRock’n’Roll Band」
作品特設サイト:https://special.southernallstars.jp/jidaiokure/