リアム・ギャラガー、3rdアルバムはキャリアの新たな頂点に? ソロシンガーとして不動の存在感を確立するまでの軌跡
ゴリゴリの暴れん坊ほど歳を重ねて落ち着いてくると良い親父になっていたりする。何と言っても暴れていた時代の経験値が違うので、そこらの優等生よりは、説教や教訓話にもよっぽど説得力があるわけだ。そんな最高の例が、リアム・ギャラガーという男である。
Oasisとして築き上げた数々の成果、何万人も感動させたライブ、そして兄=ノエル・ギャラガーとの大喧嘩をはじめ、さまざまなシーンで繰り広げられたトラブル。そのどれもがメディアの恰好ネタとなって世界中を駆け巡ったことも懐かしい思い出だが、そんな彼のソロ3作目『C'mon You Know』がいよいよ5月27日にリリースされる。
2009年にOasisが解散し、リアムがソロになったときはファンや周囲が心配した。というのもOasisのソングライティングを担っていたのはノエルだったし、類まれなボーカリストとしての存在感はあったにしても、バンドやアルバム制作のスタッフを設定し、自分が思うようなサウンドを組み上げていく地道な作業がリアムにできるのだろうか、という不安があったからだ。
まず最初に取り組んだのは、元Oasisのメンバーたちと始めたバンド Beady Eye。2011年の『SUMMER SONIC』でも元気な姿を見せ、『Different Gear, Still Speeding』(2011年)、『Be』(2013年)という2枚のアルバムをリリースして、それぞれ全英チャート3位、2位という成績を残したものの、それまでビッグセールスを続けたOasis時代と比較するとどうしても低調に見えたし、評価ももう1つだった。それから“リアムはもう終わった”とあからさまに言われるなど、実際3年近く、表舞台から距離を置くこととなったのである。
そうしたネガティブな声を吹き飛ばしてきたのが彼のソロ活動であったし、今度の新作は1つの頂点となるだろう。約20年続けたバンドの解散、さらに離婚訴訟も起こり、絶望の淵に立たされた彼の姿は、ドキュメンタリー映画『リアム・ギャラガー:アズ・イット・ワズ』でも克明に描かれていた。いつも強気が自慢の彼が方向性に迷い悩み、自暴自棄な姿を見せるものの、新しいパートナーとの出会いを通して徐々に自信を取り戻していく。
プロデューサーのダン・グレッチ・マルゲリットらと深いコミュニケーションを取り、またグレッグ・カースティンやアンドリュー・ワットといったソングライターたちと一緒に曲を作っていくことで自信を深めた先で、2017年にはシングル曲「Wall of Glass」、そして1stソロアルバム『As You Were』を発表。これが予想以上に大好評、久しぶりに全英1位を獲得し、見事にスーパースターの復活を宣言したのだった。
それが大きな追い風となったのだろう、約2年のスパンを置いて発表した2ndソロアルバム『Why Me? Why Not.』はソングライター&プロデュースにアダム・ノーブルを加えた程度で、ほぼ前作と同じスタッフで作られたが、適度なポップテイストが加わることでさらに親しみやすいものとなり、これまた全英1位を獲得。誰もがOasisの看板抜きにソロシンガー、リアムの存在感を特別なものと認識するようになったのだった。それだけに、次に彼が何をやってくれるのか、どんなアプローチを聴かせるのかと期待が高まる中で、3rdアルバムの登場だ。