新連載「lit!」第1回:The Linda Lindas、Rosalía……バンド名や楽曲などにも 日本と接点のある海外ポップミュージック
Charli XCX「Beg For You (feat. Rina Sawayama)」
そんな『コーチェラ』と言えば、宇多田ヒカルの88risingのステージへの出演や、きゃりーぱみゅぱみゅがビリー・アイリッシュと21サヴェージの裏でトリを務めたことが話題になりましたが、忘れてはいけないのが圧倒的な歌唱とダンスパフォーマンスで会場を最高に沸かせていた新潟出身ロンドン在住のアーティスト、リナ・サワヤマの存在です。
本楽曲はイギリスの歌手、チャーリーXCXの初の全英1位となった5thアルバム『CRASH』から、サワヤマが参加したシングル曲です。スウェーデンのシンガー、セプテンバーによる2006年のヒット曲「Cry For You」のビートにアレンジを加えた上でメロディを大胆に使っています。歌詞は恋人への切実で情熱的すぎるほどの想いが綴られており、チャーリーとサワヤマの掛け合いも見事です。
サワヤマは『SUMMER SONIC 2022』での来日が決定していますが、『コーチェラ』の模様を見る限り、大盛況となるのは間違いないでしょう。チャーリーは現段階では来日予定はありませんが、アルバム収録楽曲「Yuck」にも〈Japan〉というワードが出てきていたり、大の日本好きでもあるので必ずまた来てくれることを期待します。
Rosalía「HENTAI」
最後に紹介するのはスペイン発気鋭アーティスト、Rosalíaの3rdアルバム『MOTOMAMI』収録の一曲。タイトルはなんと日本語で「ヘンタイ」です。意味はそのまま「変態」でもありますが、海外では性的な内容を含むコンテンツを表す言葉として認知される単語でもあります。ロザリアは曲名の由来について、「官能性やセクシュアリティを含むので選びました」と発言しています(※1)。
ジャンルの垣根を越えた自由すぎる作風の本アルバムは、多くのメディアから大絶賛され、リリース直後にはSpotifyの「Top Albums Global Debut」チャートでも1位を記録。批評面とセールス面の両方で高い評価を得ている2022年最注目作のひとつとなっています。
今回紹介する「HENTAI」は、後半のリフレインで突如として鳴り響くマシンガンのような打ち込みと、最後の〈Mmm, hentai〉という歌詞には思わず笑ってしまいますが、Rosalíaの透き通っていながらも若干ハスキーな歌声がたまらなく美しいバラードです。本アルバムでは他にも「SAOKO」、「CHICKEN TERIYAKI」、「SAKURA」など曲名に日本語が使用されており、またタイトル曲「MOTOMAMI」では日本語で韻を何度も踏んでいます。
極めて実験的でありながら、ポップであることも重要視しているRosalía。確実に唯一無二で最先端のアーティストであり、日本のカルチャーがそのインスピレーションの源となっているのは実に喜ばしいことです。
※1:https://genius.com/24703689