King & Prince、『Lovin' you / 踊るように人生を。』は“2番”が刺さる 全編通して味わう歌詞の魅力
King & Princeが9枚目となるシングル『Lovin' you / 踊るように人生を。』を発売した。
今作は、彼ららしい王道のラブソングの「Lovin' you」と、一度きりの人生を楽しもうという思いの込められた「踊るように人生を。」の2曲が表題曲として収録されたダブルAサイドシングル。いずれも日本語による歌詞とサウンドの絡み合いが印象的なポップスだ。そして何より、2番まで含めたフルサイズで聴くことで、楽曲本来の魅力が感じ取れる作品になっている。
2番の歌詞で主人公が見せる深い愛情に、SNSでも反響が集まる
例えば、「Lovin' you」は繊細なピアノや流麗なストリングスの音色が響き渡るハートウォーミングな一曲で、そうした温かいサウンドにマッチした丁寧な歌詞も光っている作品である。
まず音作りに注目すると、Aメロの冒頭、バックで鳴っているのはピアノの伴奏とどことなくノスタルジックな雰囲気を持った微かな電子音、そしてそれを淡々としたビートが支えている。やがてストリングスやギターが合流することで、〈君〉に対する主人公の思いがあふれ出るようなサビへと展開していく構成だ。
対して歌詞は、1番は〈見慣れた後ろ姿/ひとり見つめて こぼれるため息〉という歌い出しからはじまる。この最初のフレーズだけでも、2人は今一緒に歩いているということ、2人がともに過ごしてきた時間の長さ、2人の間にある距離感といった設定が伝わってくる。そしてサビを〈僕じゃダメかな?〉と締めることで、主人公の〈君〉への一方的な思いの強さが確認できる。
注目すべきは2番だ。2番において〈君〉は涙を流しており、その姿を主人公は見逃さず、最終的に〈僕が守るよ〉という言葉で終えている。〈消えない過去〉や〈癒えない傷〉といった〈君〉の“暗い部分”に焦点を当て、それでも〈君〉を包み込む深い愛情を主人公は見せるのだ。
要するに、一方的な恋愛感情を見せていた主人公が、〈君〉の過去や傷まで含めたすべてを抱きしめるまで、1曲の中で成長するのである。
この歌の持つある種の包容力は、サウンドによるところはもちろんだが、こうした緻密に練られたストーリー性のある歌詞によるところも大きいだろう。
SNSでは、実際にこの2番歌詞のサビに大きな反響が集まっており、「2番の歌詞に涙が止まらない」、「胸に刺さる」、「優しい気持ちになる」「こんなことを言われてみたい」といったコメントが多く見られる。さまざまな立場の人に寄り添うような、King & Princeの深い愛を感じることができるこの作品は、今後も多くの共感を呼び、広がりを見せていきそうだ。
つらい時やキツい時にこそ輝く応援歌
また、「踊るように人生を。」はジャニーズらしい豪華なオーケストラアレンジの施されたビッグバンド調の一曲で、こちらも歌詞が秀逸だ。
一見すると、流れのままに踊って生きていこうといった方向性の歌詞が楽天的すぎると思われるかもしれない。しかし、主に2番における〈イメージ通りにいかない毎日/自信は煙のようさ〉や〈フラフラになりながら/必死で立ち上がる〉、あるいは〈泥だらけの心〉といった言葉選びに表れているように、“うまくいかない日々”の描き方が絶妙だと感じる。
特に2番のAメロでは、演奏もベース主体のトーン低めのものとなっており、どことなく勢いが削がれているのもポイント。単なる明るい曲ではなく、人々のマイナスの状態に寄り添う作りになっている。
つまり、人生讃歌のように見えて、実は応援歌としての側面が非常に強いのだ。つらい時、悲しい時、キツい時にこそこの曲は輝くだろう。