SUGIZO×INORANが語る『BEST BOUT 2021』 表現を通した未来への希望と感謝の思い

SUGIZO×INORANが語る『BEST BOUT 2021』

LUNA SEAは運命的なロックバンド

ーーライブではお互いのパートを終えると、最後に新曲「2050」でコラボレーションが披露されます。このライブのために制作された楽曲だそうですが、どういう流れを経て生まれた1曲なんでしょうか?

SUGIZO:INORANが持ってきてくれた曲なんですけど、そこに僕がさらに作曲とアレンジを加えたんです。そもそも「2050」、2050年というのは今世紀の中頃になるわけですが、未来に対してのポジティブなイメージや祈りを表現したくて。もちろん今がパンデミック下ということもありましたし、大きく変革しているこの時代だからこそ、僕らが今生きているこの世代にできることを、INORANと意思を確認しながら注ぎ込んだ楽曲です。

INORAN:今回みたいに「SUGIちゃんとだったら何ができるだろう?」と考えたとき、そこに「どんな自分を乗せられるだろうか?」とも考えるわけです。同じ時代を生きる者同士で一緒に曲を作ることで届けられる思いもあるはずだし、そういったことが「2050」という曲につながり、完成したんじゃないかな。

ーーマイナー調のメロディでもの悲しさもあるんですけど、本当に2050年が明るいものになっていたらいいなという、悲しみの先にある希望に手を伸ばしたくなるようなエンディングになったと思いました。

SUGIZO:そう届いていたなら、すごくうれしいですね。今は良くない意味で世界が変革期を迎えていますが、ここからは僕らの生き方、行動や社会的責任がとても大事になってくる。2050年は今から約30年後ですが、今生まれた人が30歳近くになる頃、僕らの子供の世代、もしくは孫の世代に対して、2020年代に50代を迎えている僕らが何を残せるのか、どういう未来を構築する礎を用意してあげられるのかは、僕らの世代の役目だと思うんです。30年後に僕らが生きているかどうかわからないけど、その世代の人たちに対して誇れる生き方をしたいし、「なんだよ、先人たちが残してくれたのって、こんな最低な世界なの?」と思ってもらいたくない。次の世代に対してより良い世界を残したいというこの2人の意志が、今回の『BEST BOUT 2021』におけるひとつの表現の核になっていると思うんです。

ーーなるほど。その核がエンディングでストレートに表現されたと。

SUGIZO:はい。僕からすると、INORANがそういう意識を持って今活動していることがすごく感動的で。今までそういう話をしたことなかったので、うれしいんです。結局、僕らの世代になると、自分の満足感とか自分の表現欲を満たすためだけに音楽をやっているわけじゃない。表現することが自分のためだけじゃなくなってきているんです。それは今も音楽をやらせてもらえていること、30年間ずっとここに居させてもらえていること、このBlu-rayを手にしてくれる人がいることに、心から感謝をしながら常に生きていることにもつながっていて、そういう意識が今回の作品には強く刻まれていると自分では思っています。

ーー結果論かもしれませんが、完成した荻野さんの絵は「2050」という楽曲に、見事にマッチしている印象を受けました。

SUGIZO:「2050」はトラックは事前にあったものの、ライブでは僕もINORANも即興で演奏していましたし、荻野さんも即興で描いていたので。先ほどメロディのお話をされていましたが、それも即興で僕らが作ったものです。

ーーあの日の感情や、そこまでの流れがあって生まれたものなわけですね。

SUGIZO:そうですね。荻野さんもライブペインティングでは百戦錬磨の方ですが、終わったあとに「今までやってきた中で最高に幸せだった。僕はこの日のためにやってきたのかもしれないです」的なことを言ってくれたんです。その荻野さんの本気の表現、本気のアティチュードがビシビシと伝わってくる作品だったので、マッチしたと感じていただけたんじゃないかなと思います。

ーーそれにしても、10代に出会ったおふたりが、今も刺激的な関係を続けているのは非常に興味深いですよね。

SUGIZO:実はね、さっきINORANと話していたんだけど、今年で35年なんですって。

INORAN:知り合ってからね。

SUGIZO:本当に稀有な関係だと思うと同時に、LUNA SEAはこんなにも運命的なロックバンドなのかと実感させられます。ビートルズ(The Beatles)もストーンズ(The Rolling Stones)もそうですよね。U2も同じ地元で育った悪ガキたちが音楽を通して、一緒に転がって大きくなっていった。日本ではBUCK-TICKもそう。だから、そういう限られた稀有なバンドを続けられているという運命に感謝しかないですよ。

ーーギタリストとして、ミュージシャンとして一緒に長く活動しているからこそ気付く、お互いの成長や変化、ターニングポイントって、何か記憶に残るものはありますか?

INORAN:SUGIちゃんを見ると、もちろん進化は常にしているし、変化やターニングポイントもこれまでたくさんあったと思うんです。でも、ここまで生きてくると、物事を点じゃなくて線で見るようになってしまっているので、後ろを振り返ってもすべて線で見てしまうんですよ。だから、もはやその変化を点では捉えられないくらい、日々進化している人なんだと思っています。

SUGIZO:ありがとう。僕から見ると、INORANがアーティストとして進化したターニングポイントは、LUNA SEA終幕(2000年12月)直後ぐらいだと思う。それまでももちろんすごいレベルだったんですけど、終幕後から表現者としてのパワーが一気に爆発した感じがします。これは例えば正しいかどうかはちょっとわからないんですけど、ジョージ・ハリスンがビートルズ解散以降、ソロアーティストとして最初に成功したじゃないですか。バンド時代とソロアーティストとしてのギャップがいい意味であって、それが大きな起爆剤になった。僕はそれに似た感覚をINORANに対して持っていましたし、バンドという母体がなくなって自分ひとりでアーティストとして生きていく、その決心や覚悟がINORANを大きく進化させたんじゃないかなと、客観的に見て思っていました。で、その7年後にLUNA SEAが復活したときも、メンバー5人それぞれがアーティストとしてずっと最前線で活動している状況だったので、発するエネルギーが全員90年代とは全然違ったものでしたし、特にINORANの進化はその後のLUNA SEAにはすごくプラスに作用したと思っています。

ーーその終幕後の7年間はもちろんのこと、それ以降も現在に至るまで、5人とも第一線でソロアーティストとして活躍し続けている。と同時に、LUNA SEAとしても新作やツアーを重ねて進化し続けている。そのストイックさが、僕には職人のように映るんです。

INORAN:ありがとうございます(笑)。

SUGIZO:まあ、ただの音楽オタクなだけです(笑)。

INORAN:そうですね。オタクだし、音楽バカかもしれないし。でも、そういうところが強みではあるかなと思います。

SUGIZO:音楽バカなところは、10代の頃から一切変わってないですしね。

ーーでは、ひとりの人間としてのお互いの成長は、どのように映っていますか?

INORAN:同じような場所で生まれて成長してきたし、今も一緒にバンドを続けてきているので、そこまで俯瞰できるほどの距離ではないというか。ただ、同じギタリストとしてもミュージシャンとしても、いつでも鏡になってくれるような存在ではあるのかなと思います。

SUGIZO:僕からすると、INORANはもっとも逞しい男になったと感じますね。バンドの中で最年少でしたし、特に10代の頃は存在的にも弟のような感じでしたけど、今や良い意味で躍動的な大人の男になった。実はLUNA SEAの中で、もっとも人生をポジティブに楽しみ、そういうエネルギーに満ちている人じゃないかな。それはとてもリスペクトするところです。もっと言えば、今もバンドが存在していること自体、メンバーみんなが生きてくれていること自体にただただ感謝しかない。基本的に感謝の気持ちでいるし、付き合っているところがあるので、生きてくれているだけでありがたいです。

ーー今回の『BEST BOUT 2021』終了後、SUGIZOさんは“L2/5”(=LUNA SEAの5分の2)というサブタイトルにちなんで「いつか“L5/5”としてやってみたいです」とコメントしていました。可能かどうかは別として、そういう企画が実現したらすごいことになりそうですね。

SUGIZO:メンバー全員がソロで対バンするなんてことは、たぶん世界中でLUNA SEAにしかできないことかもしれないし、時が満ちたらそういうことがあるかもしれないですね。

INORAN:そうだね。それができたら、めっちゃ面白いんじゃないかな。僕らLUNA SEAは常にほかとは違うことを探しながら活動してきて、それが、東京ビッグサイトでの『CAPACITY ∞』(1999年5月30日開催の『LUNA SEA 10TH ANNIVERSARY GIG [NEVER SOLD OUT] CAPACITY ∞』)だったり、東京ドームでのフリーライブ(2010年12月25日開催の『LUNACY 黒服限定GIG ~The Holy Night~』)とかだったわけだけど、バンドのライブの中にソロコーナーを作るんじゃなくて、メンバー5人がソロアーティストとして対バンすることは、SUGIちゃんが言ったようにまだやったことがないので、いつかできたらいいよね。そういう時期が来るのか来ないのかわからないけど、そのときが来たらやるんじゃないですか。だから、今は運命を待っているような感じです。

■リリース情報

『SUGIZO vs INORAN PRESENTS BEST BOUT 2021~L2/5~』
発売:2022年3月9日(水)
【初回プレス限定版】
価格:¥9,680(税込)
・三方背BOX仕様
・フォトブック封入
【通常盤】
価格:¥6,930(税込)

収録内容:
・SUGIZO Part.1
Nova Terra
IRA
TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?
NO MORE NUKES PLAY THE GUITAR

・INORAN Part.1
Hard Right
Adrenaline Rush
Libertine Dreams
Between The World And Me
Don't Bring Me Down
Shaking Trees

・SUGIZO Part.2
絶彩
ENOLA GAY RELOADED

・INORAN Part.2
Purpose
Soul Aint For Sale
Missing Piece
Soundscapes
Leap of Faith

・SUGIZO & INORAN 
2050

SUGIZO オフィシャルサイト
https://sugizo.com/

INORAN オフィシャルサイト
http://inoran.org/

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