ジョン・バティステが世界中で支持される理由とは? 『グラミー賞』目前、愛と音楽の先導者たる軌跡を辿る

ジョン・バティステが世界中で支持される理由

 新型コロナウイルス拡大の影響で延期されていた『第64回グラミー賞』の開催が、いよいよ現地時間の4月3日に迫っている。

 「drivers license」で華々しいデビューを飾ったオリヴィア・ロドリゴをはじめ、H.E.R.やジャスティン・ビーバー、ドージャ・キャットら話題のアーティストがひしめく中で、「レコード・オブ・ザ・イヤー」「アルバム・オブ・ザ・イヤー」といった主要を含む計11部門に最多ノミネートを果たしているのがジョン・バティステだ。なお、この11部門ノミネートという記録は、1984年のマイケル・ジャクソン、1997年のベイビーフェイスの12部門に続く快挙である。

 ピクサー製作の映画『ソウルフル・ワールド』のエンディングソング「It’s All Right」でその名を知った人も多いはずだが、実はジョンのキャリアは長く、活躍も多岐にわたる。彼の音楽性を培った環境を振り返りつつ、最新アルバム『ウィー・アー』がなぜ世界中で支持されているのかを紐解いていく。

 1986年、ルイジアナ州ケナー生まれ。ニューオーリンズで活躍するスタジオアレンジャーのハロルド・バティステを叔父に持つ音楽一家の元で育ったジョンは、8歳でパーカッションを学び11歳でピアノへ転向。17歳の頃にはインディーズより自主制作でデビューを果たし、のちにNYの名門校ジュリアード音楽院でピアノの学士号と修士号を取得している。

 2015年より米CBSの人気トーク番組『ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』でジョン率いるバンド、ステイ・ヒューマンが音楽監督を担当。アメリカでの知名度も上昇し活躍の場を広げていく。

Jon Batiste & Stay Human Perform 'Auld Lang Syne'

 ボーカリストの側面も打ち出した2018年のメジャーデビュー作『ハリウッド・アフリカンズ』も高い評価を受け、米『フォーブス』誌による名物企画「世界を変える30歳未満の30人」にも選出。さらにはファッションブランドの広告アイコンに抜擢されるなど、マルチな才能は止まるところを知らない。スティーヴィー・ワンダーやスパイク・リーからもラブコールを受けるなど、その人気は業界内でもお墨付きだ。

 かくして着実にキャリアを積み上げていったジョンの最新アルバム『ウィー・アー』は、彼の土台でもあるジャズをベースに、ソウルやヒップホップなど多様な音楽性をごった煮したガンボアルバムだ。「特定のジャンルのシステムに基づく音楽とは別のものを作りたかった。カテゴリーという箱に収まらない純粋な音楽とストーリーをね」と『Atwood Magazine』でのインタビュー(※1)で語るように、今までのジャズピアニストのイメージから飛躍した過去最強に自由なポップ作で、聴けばひとたび踊り出したくなる「I NEED YOU」のように、理屈抜きでも楽しめるオモチャ箱のような楽曲が並ぶ。

Jon Batiste - I NEED YOU

 客演には地元ニューオーリンズを代表するPJ・モートンや、過去にコラボ作品を発表したVulfpeckのコリー・ウォン、リゾのプロデュースで知られるリッキー・リードらが関与し、現在までの活動が地続きであることも証明。昨年末にリリースされたデラックスエディションでは、ビッグ・フリーディア、トリー・ケリー、BJ・ザ・シカゴ・キッドらを迎えた新とリミックスを追加。さらにジョンの世界観を拡大している。

Jon Batiste - SING ft. Tori Kelly

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