Mrs. GREEN APPLE、ついにフェーズ2開幕 前進する意志を高らかに鳴らす新曲「ニュー・マイ・ノーマル」徹底解説

 Mrs. GREEN APPLEが帰ってきた!

 新曲「ニュー・マイ・ノーマル」を聴き終えた時、喜びとともにそう叫びたくなった。めくるめくカラフルなサウンドに、書き手の心臓を差し出すような歌詞。曲の世界観に合わせて華やかに着飾った、少し大人びた気がするメンバーの動く姿や、4分12秒のMVに潜ませた膨大な量のメッセージ。〈ポピュラーミュージック〉と〈僕らの真実〉で韻を踏んでここまでしっくりくるアーティストはMrs. GREEN APPLEの他にはいない。“ミセスが帰ってきた!”という言葉はこの曲を聴いている最中、私の脳内でずっとリフレインしていたし、MVの最初と最後、大森元貴(Vo/Gt)、若井滉斗(Gt)、藤澤涼架(Key)の姿とバンド名が映った時にはより強くそう思った。

Mrs. GREEN APPLE「ニュー・マイ・ノーマル」Official Music Video

 「ニュー・マイ・ノーマル」は、2020年7月8日の活動休止&フェーズ1完結から約1年8カ月の時を経て届けられた、フェーズ2の始まりを告げる新曲だ。まず、「ニュー・マイ・ノーマル」というタイトルからしてすごい。“ニューノーマル”という単語に、“私の”という意味の所有格“my”を組み合わせているわけだが、コロナ禍によって急速に浸透した言葉を上手く利用しつつ、バンドの現状、新章開幕に懸ける意気込みをしっかりと言い当てる言葉だ。また、この“my”は、ライブや楽曲を通じて、「あなたは鑑賞者ではない。この作品を自分事として捉えてあなたの人生に持ち帰ってほしいんだ」と伝え続けていたミセスの姿勢をも象徴しているように思える。

 楽曲、MVから読み取れたのは、これまでを連れてこれからへと進んでいくMrs. GREEN APPLEの毅然とした意志だ。起伏に富んだ華やかなポップミュージックは、これぞMrs. GREEN APPLEと言いたくなるようなもの。そしてMVにはフェーズ1で発表した楽曲を彷彿とさせるモチーフが散りばめられている。歌詞では新たなスタートラインに立ったバンドの現在を表現している一方、恋や愛、優しさなどミセスがずっと歌い続けてきたことがもう一度歌われている。〈手を取ってる実感が欲しい〉と人との繋がりを求める気持ちを歌いつつ、〈みんなそうよね〉という言葉を添え、自分と同じ寂しさを他の人も抱えていてほしいとどこかで思う心を歌い楽曲を閉じているところに、大森元貴という人間を感じた。

 ところで、Mrs. GREEN APPLEの舵を取る大森は、アーティスト活動をフェーズに分けて行う構想を学生の頃から立てていたらしく(※1)、人気絶頂の中でのフェーズ1終幕、さらなる未来に向けた活動休止も彼の描く計画に沿った出来事だったと思われる。しかし2021年12月、つまりフェーズ2スタートに向けてメンバー一丸となって準備をしていたであろう時期に発表された、山中綾華と髙野清宗の脱退は、彼ら自身にとっても不測の事態だったのではないだろうか。それを踏まえて聴くと、〈汚れてしまう前に大事に壊せますか?/変わらないものだけを今は数えている〉というフレーズはバンドの歩みを表しているように受け取れる。また、ファンの間では、MVの2分58秒以降に登場する緑色の壁には、山中と髙野へ向けたメッセージが隠れていると話題だ。山中、髙野も含めた5人での5年間が現在のMrs. GREEN APPLEを形作っているし、2人の想いも背負いながら大森、若井、藤澤は進んでいく。つまりはそういうことだろう。

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