ORANGE RANGE、結成20周年を経て再確認した“沖縄”への想い 今だからこそ行き着いた次世代へのメッセージ
こういう曲が生まれるのも、いい時間を過ごしてきたから(YAMATO)
ーーその通りだと思います。2曲目「エバーグリーン」は、1970年代のコザを舞台にした映画『ミラクルシティコザ』主題歌です。最初に脚本を読んでから作り始めたんですか?
NAOTO:そうです。歴史も知っているし、紫(劇中に登場するバンドに楽曲提供している伝説的ハードロックバンド)も知っているので話は早かったですね。僕たちが学生の頃、コザのライブハウスとかクラブで遊んでいて、そこで深夜2時とか3時になると、1980年代のハードロックやヘヴィメタルーー例えば、Mötley CrüeとかDream Theaterのバラードが流れていて。そういうイメージで作りました。
ーー最近のORANGE RANGEは「HEALTH」や「ラビリンス」のような先鋭的でカオティックな曲も多いけれど、一方でこういう王道のロックバラードもやれる。この振り幅がすごいです。
NAOTO:それはやっぱり、相手がやろうとしていることに感化されるからだと思います。今回で言うと、監督や紫、NHKだったりとか。そこに対して「なるほど、面白そうだな」と思うから、そこには乗っかりたい。だから依頼があると、いつも「どういう曲がいいですか?」って相手に聞くようにしていますね。ただやるんじゃなくて、お互いの良さを出し合いながらやるのがコラボレーションだから。
ーーそれは以前から同じですか?
NAOTO:結構前からそうですね。「最初に言わなかったじゃん!」となって、いろいろ痛い目にあったりしたこともあって(笑)。
ーーああ、それで作り直しになっちゃったりとか。
YAMATO:たしかにな、それは疲れるよな(笑)。
NAOTO:そうそう。それでなるべく初期の段階から相手の要望を聞くようになりましたね。それがリスペクトでもあると思うんです。
ーー「エバーグリーン」の歌詞は、「Melody」と重なる部分がありそうですね。
HIROKI:そうですね。これは脚本をもとに書いていったんですけど。その設定がぶっ飛んでいるんですよ。未来と現在を行き来したり、魂が乗り移ったり(笑)。だけど伝えたいメッセージは、「物理的な死を遂げても、想いや気持ちは永遠に残っていくんだろうな」ということですね。
YAMATO:こういう曲が生まれるのも、メンバーみんな、いい時間を過ごしてきたからだなと思うんですよ。今までもハードロック志向のバラードはやってきているけど、その表現や世界観がパワーアップしてきているのは肌で感じるので。
ーーバンドとしても、人間としても、いい時間を過ごしてきたからこそ、視野が広いんでしょうね。時間軸も、住んでいる場所も超える曲になっているというか。
HIROKI:たしかに。もう自分だけの視点ではなくなってますよね。
新しいスタンダードを作りたかった(NAOTO)
ーー3曲目の「フイリソシンカ」は、HIROKIさんとNAOTOさんの母校である北谷高等学校の創作エイサーのために作った曲になります。同級生から依頼されたんですよね?
NAOTO:そうなんですよ。いい話があって、依頼してきた同級生がサッカー部のキャプテンで、HIROKIが副キャプテンだったんですよ。それが時を経て、高校の生徒指導の先生とバンドマンになって、このタイミングでつながるっていいじゃないですか。こんな話あります?
ーーなかなかないと思います(笑)。今も交流があったんですか?
NAOTO:そこまで直に連絡を取り合うような感じではなかったんですけど、先生をやっていることは知っていました。先生って、いろいろな学校を転々とするじゃないですか。それで最近、「母校で働くことになったよ」と連絡があったんです。そのなかで、コロナ禍で行事とかも中止になったりして、生徒たちがかわいそうだから、「この高校と言えばこの曲!」みたいな楽曲を作って、学校の伝統にして盛り上げていくために一緒に何かできないかっていうお話をもらって。
ーーその話を聞いてどう思いましたか?
HIROKI:自分の母校でもあるし、キャプテンが言ってることですから。
NAOTO:当時から引率力があったもんなぁ。
HIROKI:そうそうそう(笑)。
ーーエイサーの曲となると、普通の曲作りとは違うマナーがあるんですか?
NAOTO:マナーのことを言い出したら、縛られ過ぎてこじんまりした曲になっちゃうんですよ。エイサーの可能性も楽しさもみんな肌で感じてきたから、それをどう作るかでしたね。やっぱり、かっこよく踊ってもらいたいし、末永く愛され続けてもらいたい。そのポテンシャルをいかに引き出すか、みたいな作り方でした。
ーー「イーヤーサーサー」っていう、これぞエイサーという合いの手も入ってますけど、そこにORANGE RANGEらしいキャッチーさも織り込まれていますもんね。
NAOTO:エイサーはすでに完成されていますから、それを超えることはできない。新しいスタンダードを作りたかったんです。
YAMATO:最終的にシングル曲になってもいいぐらいのキャッチーな曲になりましたよね。なんで僕は北谷高等学校じゃなかったんだろうって思いながら歌ってましたけど(笑)。
HIROKI:でも、YAMATOもちゃんと校舎に侵入してたよ。
NAOTO:そうだよ。侵入してた。
YAMATO:「侵入」って言い方は変ですけど……。
HIROKI:軽音部で一緒に練習してたんですよ。俺たちは軽音部でもないけど、YAMATOを呼んで、軽音部の部室を占拠して(笑)。
ーーじゃあ、YAMATOさんにとっても北谷高等学校は第二の母校ということで。
YAMATO:まあ、ゆるい学校でしたよね(笑)。
ーー「フイリソシンカ」には、たくさん沖縄の言葉が散りばめられていますね。〈ティダ〉は太陽、〈ニライ〉は理想郷という意味があるとか。
HIROKI:沖縄の言い伝えですね。沖縄の会社名とかで結構よくあるんですよ(笑)。
YAMATO:もう僕らって、沖縄の方言をガッツリ使う世代ではないんですよね。僕らの親世代は方言で喋る人たちがいたり、さらにおじいちゃんの世代は方言でしか喋れない人たちがいるんですけど、逆に若い世代には方言から遠くなっている人もいて。僕らは曖昧な世代なんですよ。
ーーそういう意味では、「Melody」や「エバーグリーン」で歌っているような、つないでいく、未来に託していくという想いにも通じますね。言葉も継承しないと廃れていくものだから。
YAMATO:やっぱり僕らはいろいろな意味で狭間の世代なんですよね。その世代には、その世代の役割があると思うんですよ。方言しかり、沖縄の伝統しかり、音楽しかり。僕らがいろいろなことをつないでいけるようになれたらいいなと思いますね。
ーー沖縄というテーマでそういう想いに行き着いたのは、バンドが20周年を迎えて、メンバーの年齢も30代後半に差しかかったこのタイミングだからこそでしょうか。
HIROKI:そうですね、今だからこそです。最初から沖縄というテーマを狙っていたら、もっとコテコテになったかもしれないなと思うんですよ。でも、ナチュラルに3曲とも作れたのでよかったです。『OKNW.ep』というタイトルがついてなかったら、沖縄の作品だって気づかれないかもしれません。
すべてを肯定して楽しい場所を作っていきたい(NAOTO)
ーー最後に、21年目以降のORANGE RANGEの活動として考えていることはありますか?
YAMATO:僕らは目の前のことをやっていくのに精一杯な20年だったので、そこは変わらず。「こうありたい!」っていう大々的な目標はこれからもないです。そうやって歩んできたから、今があると思うので。
NAOTO:コロナ禍でライブができなくなる日が来るなんて、誰も思っていなかったけど、起きたことをポジティブに捉えて、それすらも楽しんでいけるバンドでいられたらと思いますね。沖縄にいたから、こういう作品もできたわけだし。すべてを肯定して楽しい場所を作っていきたいです。
ーーHIROKIさんはどうでしょう?
HIROKI:目先の目標としては、5月に結成21周年のライブ(『ORANGE RANGE ㊗21周年! スーパーウルトラちゅらちゅらカーニバル -RANGE DAY-』)があるので、今はそれかな。20周年はライブがあまりできなかったから、その20年分の想いをぶつけたいです。
ーー21周年にちなんで、2日間で42曲やるそうですね。
HIROKI:体力的にヤバいですよ(笑)。
NAOTO:やったことないからなぁ。初めての試みなので。
ーー毎年増やしていったらいいのに、と思いました。30周年は2日間で60曲とか。
HIROKI:いやいや、やらなくちゃいけなくなるから。絶対に「うん」とは言いません(笑)。
■リリース情報
『OKNW.ep』(読み:オキナワイーピー)
2022年2月23日(水)発売
完全生産限定盤【CD+手紙+ペイズリーハンカチ】
価格:¥2,700円(+税) VIZL-2017
<仕様>
・手紙ケース:招待状の装丁
・手紙:メンバー1人1枚合計5枚
・グッズ:ペイズリーハンカチ
<収録曲>
1.Melody 2.エバーグリーン 3.フイリソシンカ 4.Melody -Instrumental- 5.エバーグリーン -Instrumental- 6.フイリソシンカ -Instrumental-
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