藤井隆と及川光博、多方面で活躍するエイジレスな魅力 再評価される両者の共通点とは?
きわどい歌詞を操る及川、音楽感度が高い藤井
及川を初めて観たときは、正直なところネタ系のミュージシャンかと思っていた。ところが、彼が作詞作曲した楽曲を聴くと、その音楽性の高さに驚かされた。特に歌詞のきわどさ。「その術を僕は知らない」(1998年)の〈テクニシャンだという噂なら 本当だよ Baby かなりのもんさ だけどそんなの 指先だけの話〉や、「フィアンセになりたい」(1998年)の〈もう悩まないでこれ以上、愛しく思えば思うほど 孤独を感じるのは何故だろう? …いっそのことフィアンセになりたい〉などの一節は、大いに想像をかきたてるものだった。また、トークではクールな王子様キャラなのに、ステージでは人間味たっぷりに熱いパフォーマンスを披露する。そのギャップにしびれた。
藤井も音楽センスは抜群だ。2000年に浅倉大介プロデュースのシングル曲「ナンダカンダ」で歌手デビュー。藤井に関しても、当時ブームだった「お笑い芸人の歌手デビュー」に乗ったものだと思っていた。ただ、藤井は日本のポップスへの造詣と愛情が非常に深かった。知識だけではなく、感度の高いリスナーを反応させるセンサーの鋭さも持っていた。2002年発表の1stアルバム『ロミオ道行』は松本隆がプロデューサーを担当し、筒美京平、本間昭光、田島貴男ら錚々たる音楽家が参加。以降も小室哲哉、松田聖子、宇多丸、tofubeats、西寺郷太(NONA REEVES)ら、音楽好きを唸らせるコラボを実現させてきたのだ。そのクオリティはお笑い芸人の域を超えており、一流ミュージシャンのものだった。
再評価される藤井、及川
2022年、藤井は別人格・マシュー南を復活させてポッドキャスト番組『Matthew’s Matthew マシュー南の部屋の中のマシュー』を開始。さらに4月からは長寿番組『新婚さんいらっしゃい!』(ABCテレビ)で、大御所・桂文枝の後継者として司会をつとめることも決定するなど、再評価が高まっている。今秋には自身のレーベル<SLENDERIE RECORD>からアルバムをリリース予定で、3月9日に先行配信された「ヘッドフォン・ガール−翼が無くても−」(作詞作曲が堀込泰行、編曲は堀込と冨田謙)などが収録される。4月9日からはWOWOWのドラマ『今どきの若いモンは』にも出演するなど、俳優としてもキャリアを積み重ねている。
及川は昨年、歌手デビューから25周年を迎え、4月27日にはニューアルバム『気まぐれサーカス』をリリース。さらにワンマンツアーも開催予定だ。俳優業も順調で、2021年のドラマ『最愛』(TBS系)での後藤役の不気味さは今なお鮮烈な印象を残している。3月24日からは、出演しているNetflixのオリジナル映画『桜のような僕の恋人』の配信がスタート。中島健人(Sexy Zone)扮する主人公が師事するカメラマン役で登場する。
ひとつの場所にとどまらず、多方面で活動していることが、若々しさへと結びついているのかもしれない。これからも藤井、及川から目が離せない。