スガ シカオ、極上のアンサンブルで祝福した25年間の音楽人生 The Family Sugar迎えた『Special Live』をレポート
「自信がなくなっている自分に『これがスガ シカオの作ってきた音楽だ!!!』って、思いっきり叩きつけてやろうと思っています!」
最近Twitterに投稿した文を引用しながら(※1)、常に不安と隣り合わせにある本音をぽろりと語る。その結果、最新作『SugarlessⅢ』のような傑作が生まれるのだから、そのままでいてほしいと思ってしまうのがファンの身勝手な希望。『SugarlessⅢ』のレコーディングで、The Family Sugarが再集結した「もういいよ」「ヒカルカケラ」は、スロウなワルツとふくよかなソウルバラードでしっとりと聴かせた。コロナ禍の思いをリリックに託した前者が、特に沁みる。時代を背負う、優しい歌だ。そこから一気にギアをトップに入れ、ハンドマイクを握ったスガがステージ前方へと飛び出す。曲は、レトロなエレクトロポップ的アレンジに高揚する「Music Train ~春の魔術師~」。右へ左へと動きながら、大きく両手を広げて音楽を噛みしめる。こんなに開放的で明るいスガ シカオ、滅多に見られない。
「ストーリー」の、あの躍動感いっぱいのイントロが始まると、ライブはいよいよラストスパートだ。繊細にして大胆な、沼澤と松原のリズム隊の名人技に聴き惚れる。「イジメテミタイ」の、ドSなファンクビートには下腹が痺れた。そして「午後のパレード」では、大滝、斉藤がリードする振付を観客全員が揃って踊る。最前線に進み出たスガが黒のレスポールでかっこいいソロを決め、「ありがとうございました、The Family Sugar!」と、誇らしげにメンバーの方を振り返る。最強のバンドと、25年を彩る名曲集。楽しい時間はあっという間だ。
アンコールに入ると、「デビュー記念日に楽しいライブができて、感無量です。25年やってきて、本当に良かった」と真面目に語ったかと思えば、「これからも変な曲、いっぱい作るぞ!」と開き直る、らしさ満点のMCに笑いが起きる。「例えばこんな曲を」という「あまい果実」は、当時も今も、どのジャンルにも感情にも収まらない不思議な曲。つまり名曲だ。そしてこの日のラストを飾ったのは「90年代のライブの最後には、こればっかりやっていた」というアップテンポのポップチューン「このところ ちょっと」。理由は「盛り上がる曲がこれしかなかったから」と言いながら、「午後パレサングラス」をかけて笑顔で歌う、その姿に25年の時が重なった。あれから随分と時間は経ったが、変わったこと、変わらないこともある中、スガ シカオは今もステージに立ち、「スガ シカオの作ってきた音楽」を思いっきり叩きつけている。答えはいつも音楽の中にある。
「これからも頑張ってやってくぜ。またライブで会おうぜ!」
スガ シカオ自身も、The Family Sugarのメンバーも、オーディエンスも、会場にいた皆が25年分の思いを込めた全20曲、120分。懐かしむだけではなく、最新の曲もしっかり用意して期待に応えた、スガ シカオの音楽人生はいまだ坂の途中。休まないで、上ること。手を振り去るその姿を見ながら、また今度、新しい曲を聴けるのがもっと楽しみになった。
※1:https://twitter.com/shikaosuga/status/1497406082607689731
■作品情報
スガ シカオ『Sugarless Ⅲ』
2021年12月22日(水)発売
BUY / Download / Streaming:https://www.jvcmusic.co.jp/suga25/