近藤玲奈、歌と朗読による『11次元のLena』の物語 コンセプチュアルなステージ展開した2ndワンマンレポ

近藤玲奈、2ndワンマンレポ

 3つ目の朗読は、“Lena”視点で、“玲奈”の心情が語られた。朗読パートではそれぞれの声色が全く違っており、まさにそれぞれの歌の主人公を見事に演じ分けていた。この表現の多彩さは声優としても活躍している彼女ならではだろう。そして、“玲奈”はもうひとりのワタシを排除するために学校の屋上へと階段を駆け上がっていく。鍵の壊れた扉を開き、ブレイクビーツを導入したEDMロック「放課後のデカダンス」から始まり、続くアルバムショートストーリーの朗読で“僕”と“玲奈”の奇跡的な邂逅、やがて訪れる辛い別れが描かれた。学校の中で居場所を見つけれず、クラスメイトと自分の間に言いようのない違和感を覚えていた二人は、飛び立つつもりで訪れた屋上で出会い、〈ねぇ死にたくなったら/またここで会おうよ〉と約束をする。常に緊張感が漂う物語の中では唯一のハートウォーミングなラブソングを経て、孤独を共有したはずの“あの子”=“玲奈”の不在が“僕”視点で語れられた。

 そして、新曲「逆さまの世界」は“玲奈”視点で、“きみ”の声=“僕”を探しながら向こう側の世界へと旅立った様が時に切なく、時に意志の強い声で歌い上げられた。本編終了後のMCで同曲について「すれ違い、玲奈が僕が屋上に来なくなったことに絶望する曲で、歌ってて一番しんどかったし、メンタルにくる」と明かされた。続く、“僕”視点のギターロック「僕が愛される日は」では、残された“僕”がいじめに対する辛さや憎しみ、苦しみに苦悩しながらも僕は〈11次元のここ〉で待つことを決意。新曲「Lena」はタイトル通り“Lena”視点の曲で、彼女曰く「僕と玲奈の関係を達観してみており、孤独の果てでつながりますように」という願いが込められているという。アルバムのラストナンバーで本編でも最後の曲「ライカ」もまた、広くて暗い宇宙で一人ぼっちになった“僕”が〈僕だけが消えちゃう世界/あるいは僕以外が消える世界〉のどちらを選んだとしても、“君”=“玲奈”には笑っていて欲しいんだという願いがあった。絶望の淵にいる“僕”の心情を代弁するかのようにスタンドマイクを両手でしっかりと握り、祈るように歌う姿に観客が息を呑んで見入っていた。

 絶望的でダークな心の闇の世界を「セーラー服で暴れまくった」本編とは打って変わり、アンコールは清楚で可憐で明るい雰囲気となった。デビューシングルのカップリングに収録された「Listen〜真夜中の虹」では満員のオーディエンスがようやくペンライトを振って楽しく盛り上がり、デビュー曲「桜舞い散る夜に」ではステージを左右に移動しながら観客に向けて笑顔で手を振り、〈離れていてもそばにいるから〉というメッセージを届けた。

 そして、MCでは、朗読込みのライブは彼女自身の案であることが明かされ、「デビューする前に暴力を表現したいですと言ったことが、まさかここまでの世界になるとは思っていませんでした。私が一番びっくりしてますけど、こういう雰囲気のライブはあまりないと思いますので、自分にしか出せないものができてよかったなと思います」と感想を述べた。最後に、「たくさんの人に来ていただき、本当にありがとうございました! 幸せな気持ちになりました」と感謝の気持ちを伝え、大きな拍手が沸き起こる中で深々とお辞儀をして、本編では見せなかった可愛い笑顔の印象を残してステージを後にした。

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