森カリオペ、湊あくあ、Rain Drops、V.W.P、HIMEHINA、葛葉……2022年、活躍の期待高まるバーチャルアーティスト

存流&明透

 KAMITSUBAKI STUDIOと連動しながらも、新たなアーティストを発信する場所としてスタートしたSINSEKAI STUDIO。ここにもまた、バーチャルからリアルへと活動の幅を広げている珍しいグループ・VALISや、ORESAMA、跳亜、水野あつ、雄之助など様々なアーティスト/クリエイターが集っている。中でも米山舞がキャラクターデザインを担当し、昨年デビューしたバーチャルシンガーが、存流と明透。すでにそれぞれオリジナル曲「さよなら」「スロウリー」を発表しているが、歌声は対照的でタイプが違うものの、どちらもボカロ曲やラップ表現を自然に通過した世代ならではのモダンな歌を歌っている。個人的には2021年にデビューしたバーチャルアーティストの中でも特に印象的な2組だった。

【オリジナルMV】存流 Op.3 - さよなら
【オリジナルMV】明透 Op.2 - スロウリー

学芸大青春

 バーチャルアーティストの中にはダンス&ボーカルグループの流れを汲むアーティストも存在する。中でもクオリティの高いパフォーマンスで人気を集めているのが、VOYZ BOYなども手掛けるVOYZ ENTERTAINMENTの5人組、学芸大青春。彼らは「2次元と3次元を行き来する」をコンセプトにしており、ひとつの公演の中でリアルとバーチャルの姿を行き来するなど、次元の垣根を感じさせない活動を続けている。音楽的にもディスコ、トラップ、フューチャーベースなどを筆頭に古今東西の様々なサウンドを取り入れていて、フォーメーションを使ったダンスや歌/ラップの完成度も非常に高い。今年は3月から、Zepp Hanedaなど全国7都市を回る4thライブツアー『PUMP ME UP!!』を開催予定。

【MV】君甘美曲『Sugar』学芸大青春 / 2次元と3次元が行きかう「じゅねす」ならではの映像美

HIMEHINA

 田中ヒメと鈴木ヒナの2人からなるユニットで、昨年は豊洲PITで有観客ライブとして開催予定だった『藍の華』『希織歌と時鐘』の2公演をオンライン限定の無観客ライブに切り替えて行ったHIMEHINA。ここではAR的な演出で観客のコメントを会場に投影したり、事前に募集した歓声を使用したりするなど様々な工夫を凝らして、まるで観客がその場で参加しているかのようなライブを実現していた。今年はこの模様を収めたBlu-ray作品『アエナイボクラ』が3月にリリース予定。また、先駆けて2月には、ヒメとヒナの作詞によるそれぞれのソロ曲で構成されたアルバム『相対二等心』も発売される。文学的なタッチで「バーチャル」「実存」といったテーマを描いて、黎明期からのVTuberによる音楽活動を切り拓いてきた2人のこれからにも注目したい。

HIMEHINA『キリカ』MV

KMNZ

 昨年はORESAMAや春猿火とコラボした「CONNECTED OVER THE DIMENSION」展のコンピレーションCD発売や、一度の中止を乗り越えて開催された池袋harevutaiでの初のリアル会場でのワンマン公演『REPEZEN KMNSTREET』などが話題になった、LITAとLIZによるバーチャルガールズデュオ・KMNZ。彼女たちは「PRACTICE」「SKOOL」を収録した最新シングル『KMNSKOOL』をリリースし、大晦日には「driving」のMVも公開して2022年を迎えた。旧知の仲のYACA IN DA HOUSEを筆頭にした様々なアーティスト/トラックメイカーたちとの魅力的な交流に加え、最近の楽曲では、リリックなどにおいてもより深みを感じさせるような瞬間も。バーチャル文化とストリートカルチャーを繋ぐ橋渡し役として、今年もますます活躍してくれそうだ。

driving / KMNZ [Official Music Video]

長瀬有花

 バーチャルの姿だけでなく、現実世界の姿でも活動する“だつりょく系アーティスト”長瀬有花。自身の誕生日も控える2月にはデビューアルバム『a look front』を発表し、同月19日に『長瀬有花1stバースデーオンラインライブ2022「Alook」』を開催予定。所属するRIOT MUSICのオーディションの際に歌った楽曲が、やくしまるえつこメトロオーケストラによる『輪るピングドラム』(TBS系)のオープニングテーマ「少年よ我に帰れ」だったという話も納得の脱力系ボイスは、聴くたびにじわじわとクセになる雰囲気をまとっている。中でも初オリジナル曲「駆ける、止まる」は、音の隙間をたっぷり取った構築的なエレクトロポップサウンドと、彼女ならではの魅力的な歌声が見事にひとつになっている。

駆ける、止まる (Kakeru, Tomaru) - 長瀬有花 (Official Video)

 最新のテクノロジーとともに発展しているバーチャルタレント/アーティストの活動の場合、楽曲そのものの魅力はもちろんのこと、それをライブや映像作品などで「どう拡張していくか」も重要な表現となる。バーチャル/リアル両方のベクトルで、地理的条件や物理法則など様々な垣根を取り払う今の時代ならではのエンターテインメントの形として、バーチャルタレント/アーティストの音楽はますます注目度を増していきそうだ。

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