Survive Said The Prophetは2020年代ロックバンドの理想形に 大衆性と先鋭性を突き詰めながら届けるメッセージ
大衆性とアーティスト性。その両方を兼ね備えたロックバンドであることが、2022年のロックシーンを牽引するバンドのキーワードではないか、と思っている。自分たちのやりたいことを妥協せずに貫きながら、決して独りよがりにはならず、幅広いリスナーを自分たちの音楽に巻き込んでいける。ポイントは、いかに「自分たちのやりたいこと」に主軸を置けるかどうか、それがどれだけかっこいいものかどうか、だ。そういう意味で、Survive Said The Prophetは2011年の結成以来、ずっとそういうバランス感覚で自分たちの音楽を研ぎ澄ませてきたロックバンドだ。音楽的な引き出しの多さと、トレンドを客観視できる鋭敏な感性。そういったものを、ときに理論的に、ときに本能的に駆使しながら、Survive Said The Prophetは圧倒的にオリジナルな存在としてロックシーンを上り詰めてきた。
Survive Said The Prophetが稀有な存在なのは、本来はヒットしにくいと言われるラウドロックを土台にしながらも、広くお茶の間にも受け入れられることに成功したことだ。2019年にHonda「シャトル」のCMソングとして起用され、バンドの知名度を上げるきっかけになった「Right and Left」に顕著だが、ラウドロックというジャンル特有の重厚感や熱量を失わないまま、美しいメロディラインを主軸として緻密に構築されたアンサンブルは、そこがライブハウスであるか、お茶の間であるかは関係なく、リスナーの心に強く訴える力を持っていた。以降、彼らは数々のアニメ主題歌などを手がける傍らで、47都道府県ツアーを回り、現場主義のライブバンドとしての立ち位置も盤石にしている。
2月2日にリリースされる、Survive Said The Prophetによる2022年第一弾リリースとなる両A面シングル『Papersky | Win / Lose』もまた、お茶の間にもライブハウスにも訴求する射程範囲の広さを感じられる1枚になった。「Papersky」は、今年1月から放送されているTVアニメ『東京24区』(TOKYO MX)のオープニングテーマで、Yosh(Vo)は「アニメの舞台である近未来の下町『24区』の世界観をイメージした楽曲」になっているとコメントを寄せている(※1)。ギターのタッピングをフックにした無機質な近未来感と、ボトムでうねるベースの毒々しいエネルギー。それらが入り混じりながら爆発力のあるサビへと抜ける流れは、「未来を選べ。」というアニメのキャッチフレーズにもハマっている。
一方、「Win / Lose」は、昨年9月に開催された国内男子プロバスケットボールリーグ『B.LEAGUE 2021-22 SEASON』の公式テーマソングに起用された楽曲。シンガロングと共に上り詰めていく、開放感に満ちたスタジアム級のロックサウンドは、体育館で選手とファンが作り上げる熱狂のシーンそのものだ。いずれもタイアップとしての役割を果たしつつ、ライブハウスへの直通切符にもなるというSurvive Said The Prophetのロックの真骨頂と言える2曲だろう。
アニメのオープニングとして流れている部分だけを聴くと、疾走感あるいは爽快感が耳に残る「Papersky」だが、全編通して聴いたときには別の表情が見えてくる。怒涛の勢いで打ち鳴らされるバスドラムのキックと、不穏なスクリームボイスが織りなす混沌としたセクション。まさにラウドロックを出自とするバンドのルーツを容赦なくぶつける強靭なパートを挟むことで、最終的にアップリフティングしていくサビの晴れやかさが増していく。この楽曲がライブハウスで演奏されるとき、その変幻自在なパフォーマンスで4人がフロアを思いのままに湧かせる光景を想像すると、ゾクゾクしてしまう。