乃木坂46「きっかけ」に刻まれたグループの歴史 10周年イヤーの『紅白』歌唱曲に選んだ理由

 乃木坂46が、12月31日に出場する『第72回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)にて「きっかけ」を歌唱する。

乃木坂46『それぞれの椅子』(TYPE-A)

 初出場となった2015年から乃木坂46がこの6年間で披露してきたのは「君の名は希望」「サヨナラの意味」「インフルエンサー」「帰り道は遠回りしたくなる」「シンクロニシティ」「Route 246」と全てシングル曲だった。「きっかけ」は、2016年5月にリリースされた2ndアルバム『それぞれの椅子』のリード曲で、今月15日に発売されたデビュー10周年を記念する初のベストアルバム『Time flies』にも収められている、乃木坂46にとって大切な1曲だ。

 作曲を担当したのは「君の名は希望」「サヨナラの意味」などを手がけた杉山勝彦。現在まで、数々の代表曲を生み出し、美しいピアノの旋律と荘厳なストリングス、情熱的なバンドサウンドが掛け合わさった、いわゆる“乃木坂46らしい”楽曲のイメージを築き上げた立役者である。

 この「きっかけ」はリリースに合わせ、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)でパフォーマンスされてはいたが、当初はそこまで注目度の高い楽曲ではなかった。乃木坂46としては初の『紅白』出場を果たし、さぁここからという、現在ほどの確固たる地位を築いていなかった頃でもある。はっきり言ってしまえば、ファンの間で話題になっていたというレベルだ。

 そんな「きっかけ」は、思わぬ形で脚光を浴びることになる。リリースから2カ月後に開催された『寺岡呼人 presents Golden Circle 第20回記念スペシャル〜僕と桜井和寿のメロディー〜』にて、寺岡呼人、桜井和寿、Kの3人が「きっかけ」をカバーしたのだ。筆者はその日本武道館公演に取材で入った、まさに目撃者だった。桜井がなかば強引に寺岡とKを説得し、セットリストに組み込まれたというエピソードに、桜井が「すげぇいい曲」と笑顔で話していたのを今でも鮮明に覚えている。そして、その選曲に会場にはどよめきが走っていたことも。乃木坂46だとか、アイドルだとかは関係なく、とにかくいい曲だからという理由で披露されたことは、SNSを通じて瞬く間に広まり、乃木坂46のメンバー、そしてMr.Childrenのファンでもある杉山本人へと伝わっていった。

乃木坂46 『きっかけ』

 そのライブの2日後、急遽公式YouTubeチャンネルに「きっかけ」のMVがアップされた。それは『乃木坂46時間TV』内で制作された「きっかけ」の歌詞をイメージした黒板アートの映像を編集したもの。反響を受けての公開には違わないが、とにかく「きっかけ」を対外的に聴いてもらうという試みは成功し、MVは12月現在までで1600万回以上の再生数を記録している。

 そこから乃木坂46は「きっかけ」を大切に歌い続けてきた。2017年2月の『5th YEAR BIRTHDAY LIVE』では、オーケストラをバックにメンバーが横一列に並び歌唱。本編ラストという最も盛り上がるセットリストの位置に「きっかけ」が据えられている。『真夏の全国ツアー2017』の2期生ブロックラストで歌われた「きっかけ」、同年初めての東京ドームで卒業を控えた伊藤万理華、中元日芽香を送り出す楽曲に「きっかけ」が選ばれたことも、ファンの間では語り草となっている。

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