Liyuuにしか描き出せない“ROCK”スタイル 新曲「Ambition」で歌った野心の片鱗とは?

Liyuuが描く“ROCK”スタイル

 10月からLiyuuが行っている4カ月連続配信の第3弾「Ambition」がリリースされた。今回のテーマは“ROCK”。その仕上がりがかなりおもしろい。一般的にシンガーなりアイドルなりが新たな表現としてロックに挑戦する場合、ヘヴィで激しいサウンドに歪ませたボーカルを乗せることでその雰囲気を出すことが多いように思う。乱暴な言い方にはなるが、そういったアプローチを用いればなんとなくロックっぽく聴こえてしまうからだ。だが、Liyuuはそことは異なる手法でロックを表現してみせた。ソリッドなギターサウンドを四つ打ちのダンスビートが支え、ラップパートも盛り込んだトラックからしてLiyuuがこれまで培ってきた音楽性の範疇内のロック観と言える。その上で、天性の“Kawaii”エッセンスを排除することなく、そこに今までにないシリアスで力強いニュアンスを絶妙な塩梅で加味することで、テーマに寄り添ったボーカリゼーションを生み出しているのだ。それはLiyuuがLiyuuたる所以を自らしっかり認識した上で選んだ、彼女ならではアプローチ。それこそがLiyuuにしか描き出せないリアルな“ROCK”スタイルだと思う。自らの持ち味を明確に自覚し、それを最高の形で届けようとするLiyuuの姿は本当に頼もしい。

 新たなサウンドアプローチへのトライによってLiyuuの多面的な魅力を提示している4カ月連続配信企画。“Kawaii”をより深くカラフルに表現した「ルルカワイマ」、“CLUB”をイメージしたEDMチューン「Endless Vacation」に続き、第3弾楽曲として届けられた「Ambition」では、前述した通り“ROCK”がテーマ。楽曲と共に公開されたジャケットやアーティスト写真では黒とチェック柄を基調とした衣装を纏い、Liyuu流のロックスタイルをビジュアル面でも表現している。

「衣装を選ぶ段階では、ロックを意識しながらもやっぱりかわいさも表現したかったのでチェック柄を盛り込んでみたんです。履いているブーツはヒールが10㎝くらいあったので、身長が180㎝くらいになっちゃって(笑)。それによって見える景色が全然違ったし、自分なりにロックな気持ちが高まったりもしましたね。ただ、その撮影の後に今回の楽曲をいただいてみたら、想像以上にかっこいいサウンドだったんですよ! これだったらもっとロックな衣装を着てもよかったなってちょっと思いました(笑)。それくらいかっこよすぎる曲なので」

 これまでプライベートではロックな曲をほぼ聴いてこなかったというLiyuu。そもそもロックに対してはどんなイメージを持っているのだろうか?

「ボーカルがシャウトして、激しいギターが鳴っている強い音楽、というのが私なりのロックへのイメージ(笑)。アーティストで言えば、LiSAさんのようなかっこいいシンガーの方がパッと思い浮かぶ感じですね。自分とはまったく違う世界の音楽という印象もありました。だから今回、“ROCK”をテーマにした曲を歌うとなったときに、“どうやって歌えばいいんだろう”、“どんな歌い方がマッチするんだろう”と、結構悩みました」

 「Ambition」は作詞・作曲・編曲をMEGとTejeの2人がコライトで手がけている。ギターがたっぷり盛り込まれたサウンドは明らかにロックな印象だが、いわゆるオーセンティックなロックかと言えばそうではなく、四つ打ちのビートが楽曲を力強く引っ張っていくスタイルはダンスロック、デジロックに近いニュアンスだ。ソロデビュー以来、エレクトロなダンスミュージックを中心に歌ってきたLiyuuにとっては、これまでの音楽性からグラデーションのように変化した派生型のひとつと捉えることもできるだろう。そこにボーカルアプローチに関してのヒントもあった。

「いただいた仮歌は私のロックへのイメージ通り、すごく強い歌い方だったんですよ。だから私も地声を張って歌ってみたり、かっこいい方向性で練習してみたんです。でも、どれだけ頑張っても私の声では力強いかっこよさは出せないし、どこか無理をしている感じが出てしまうから、だったら私は私なりの歌い方をすればいいと思ったんですよね。サビはかなりキーが高いから地声で歌えば叫んでる感じが出るけど、そこを私はあえて裏声っぽいミックスボイスで歌ってみたりして。これまでのLiyuuの歌い方を大事にしつつ、同時に新しい表情も出すことができたと思います。この曲にチャレンジしたことで、今まで以上に自分らしさを理解できたところもありましたね」

 曲の中盤では展開ががらりと変わり、ラップパートが用意されているところも本作の大きな特徴。2020年11月にリリースされた2ndシングルの表題曲「カルペ・ディエム」でもラップを披露していたが、今回のレコーディングにはどう臨んだのだろうか?

「レコーディングは死にそうになりました(笑)。テンポについていきながら〈時期尚早〉とか〈群雄割拠〉とか、早口で日本語の歌詞をラップするのがとにかく難しかったし、地声とミックスがすごい速さで入れ替わるところがあるので、それをコントロールするのも大変でした。何度も何度も繰り返し歌ってクリアした感じです。ラップのところは自分の心の中での独り言のようなパートなので、曲の中でのいいアクセントになっているんですよね。景色がガラッと変わるおもしろさを感じていただけたらうれしいです。でも、ライブで歌うのは大変そう(笑)」

 “野心”を意味するタイトルが掲げられた楽曲だけに、歌詞には1人のシンガーとしての強い思いが刻まれている。〈響け この私の唄/全ての人へ〉、〈響け この私の唄/みんなのもとへ〉といったフレーズはLiyuu自身の思いと深く共鳴するものだったようだ。

「自分の思いを歌として届けたい。そういった私の感情が強く出ている歌詞になっていますね。MEGさんとTejeさんに書いていただいたものですけど、自分のパーソナリティをしっかり表現してもらえたなって。サウンドがロックなので、ここで描かれていることは、私自身が考えているよりも強い気持ちだったりするし、心で思っていてもなかなか口には出せない感情だったりもするんです。それを曲として歌うことができたので、気持ちがスッとしたところもあったし(笑)、あらためて自分自身に言い聞かせてる感覚もありましたね」

 また中盤に登場する〈自分を信じるの〉というラインも印象深い。生まれ故郷である中国を離れ、日本で活動をしているLiyuu。そこには我々が想像し得ないほどの不安もあるはずだ。だからこそ彼女は、常に自分を信じて前へと進んできたのだ。

「日本に来たばかりのころは、もう自分のことだけしか信じられなかったというか。もちろん信頼できるスタッフの方はいましたけど、自分をしっかり持ってないと進んでいけなかった。時には“もうダメかな”と思うときもあったけど、自分を信じていることでまた新しいチャンスに巡り合えることも多くて。運の良さもあるかもしれないけど、それでもいつも前へ進むための力をくれるのは自分自身だった気がします。ただ、最近はスタッフの方はもちろん、ファンのみなさんも私のことをちゃんと支えてくれていることを強く実感できるようにもなって。“ずっと応援します”って言ってくださる優しい方々が日本にはすごく多いので、私は今、その方たちのこともちゃんと信じられるようになっています。そういった方たちのために、これからも歌を届けていきたい気持ちが強くなっていますね。この曲にはそういう思いをしっかり込めたので、さらにどんどん私の歌を聴く人が増えたらいいなって思います」

 では、日本における活動の中で今のLiyuuが抱いている“野心”とはどんなものなのだろうか?

「自分がどんな未来を歩んでいきたいかとか、普段から考えることはあります。その中に野心とか野望みたいなものもありますけど……内緒です(笑)! でも、今回の曲でその中の一部分を歌うことができたと思うので、感じ取ってもらいたいですね」

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