峯田和伸、野田洋次郎、井口理……本職ではないからこそ醸し出す味わい 映画・ドラマで活躍するミュージシャン

 “ミュージシャン俳優”として野田と肩を並べそうなのが、King Gnuの井口理だ。『劇場』(2020年)では天才舞台演出家・小峰の役がよく似合っていた。佇まいだけで“ただならぬ雰囲気”を感じさせる。一転して『佐々木、イン、マイマイン』(2020年)ではチンピラの吉村役で暴力的なシーンに挑戦。さらに2022年3月4日公開の『余命10年』では飲食店の店員・三浦アキラ役。気にせずにはいられない同作の井口は、寿命に限りがある高林茉莉(小松菜奈)に対し、事情を把握していないとは言え、恋人を作ることを勧めてしまう場面などは観る者の気持ちをモヤつかせる。

映画『余命10年』本予告 2022年3月4日(金)公開

 峯田が出演した『色即ぜねれいしょん』で俳優としてデビューを飾り、しかも主演にも抜てきされた黒猫チェルシー(現在活動休止)の渡辺大知は、現在ではすっかり役者の顔になった。ドラマ『べしゃり暮らし』(テレビ朝日系)では当時29歳ながら高校生になりきり、大河ドラマ『いだてん』(2019年、NHK総合)では名優・森繁久弥役をつとめた。また映画『ギャングース』のような向こう見ずなタケオ(武藤武夫)役は、ロックンローラーとしての渡辺らしい側面をうかがわせる。そんな渡辺の特徴は、押し引きのうまさだ。何も言わず立っているだけでも存在感を発する“ミュージシャン俳優”が多いなか、必要であればきっちり自分を消すこともできる。とても技巧的であり、監督らからの信頼度も非常に高いようだ。

映画『色即ぜねれいしょん』予告編!!

 今後さらなる飛躍の可能性として最も注目したいのは、[Alexandros]の川上洋平だ。ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)で本格的に俳優デビュー。仕事に打ち込む編集者・橘漱石役で、菅野美穂演じる水無瀬碧とのラブシーンでは視聴者を大いにときめかせた。どんな物語であってもキーマンを担えるほど、纏っている空気感が抜群の川上。ミュージシャンとしての実力は誰もが知るところだが、俳優としての潜在能力が高い。

 そのほか、flumpoolの山村隆太、2/The SALOVER(無期限活動休止中)の古舘佑太郎ら“ミュージシャン俳優”が続々と出てきている。今後、さらなるムーブメントが生まれそうな気配である。

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