”キャッチーさ”は時代を超える? 昭和&令和ポップスの共通点と違いを探る

 YOASOBI、ずっと真夜中でいいのに。、yama、Adoーーもはや説明不要、現在の音楽シーンを語る上では外せないアーティストである。彼らの楽曲は、非常にキャッチーで、耳に残る。短いフレーズのリピート、インパクトのあるイントロ、それ自体がフックにもなるような音色の選び方、リズムパターンの豊富さとそのループするタイミングの面白さ、大サビでの転調などが要因として挙げられると思うが、こういった方法論としてのキャッチーさを駆使しながらも、ボーカルもしっかり聴かせてくるところが素晴らしい。

“短い、シンプル、ループ”は動画投稿サイトとの相性も良い

 例えば、yamaの「Oz.」は、ピアノ弾き語りというよりアカペラに近いアレンジで幕を上げるバラードだが、低音からファルセットまで、じつに気持ち良く歌声が響いてくる。〈ひとりぼっちにはさせないでよ〉というシンプルなワンフレーズで始まる歌詞も印象的。このフレーズを繰り返し使うことで、メロディのループにはまるような中毒性を発揮している。この“短い、シンプル、ループ”がもたらす中毒性は、アプローチこそ違えど、前述したYOASOBIや、ずっと真夜中でいいのに。、Adoにも共通していることだ。ゆえに、彼らの曲はTikTokなどの動画投稿サイトと相性が良いのだろう。

yama『Oz.』MV

WurtSから感じる”リスペクト”の姿勢

 これらの現象がある中で、2021年、前代未聞の“研究家×音楽家”というスタンスのクリエイターが登場した。今年「分かってないよ」がTikTokで人気を博した21世紀生まれのアーティスト WurtSである。一躍注目の的となり、地上波のニュースでも取り上げられ、インタビューを受けるなどテレビ出演も果たしている。WurtSは作詞・作曲・編曲に加え、映像やアートワークも自身で手掛けているクリエイターで、「分かってないよ」は、1990年代の日本のオルタナティブロックを感じさせるギターロック。ローファイ気味のサウンドメイク、声をあまり張り上げずにセンテンスの最後の母音を放り投げるような歌い方は、オルタナティブロックを研究したゆえのアプローチだろう。個人的にはローファイサウンドに、米国のインディペンデントレーベル<サブ・ポップ>を感じた。加えて、口語体を多用することで発揮される軽快さ、メロディも言葉もシンプルで短いフレーズを繰り返す楽曲は、自らが掲げた「TikTokの可能性」(※1)へのチャレンジの結果なのではなかろうか。つまり、しっかり狙って作っているのだが、そこを嫌味に感じさせないのは、彼自身が、様々な音楽やそれを取り巻く現象に対してリスペクトがあるからだろう。楽曲のクオリティも高く、新機軸の才能が出て来たなと思わずにいられない。

WurtS - 分かってないよ (Music Video)

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