Runny Noizeと亀田誠治が目指したメロコア×ポップスの融合 シンプルを徹底する引き算の美学

Runny Noize×亀田誠治 対談

 4人組バンド・Runny Noizeが4作目にして初のフルアルバムとなる『HAKKIYOI!!!!!』を完成させた。このアルバムに収録された「Love & Peace」「音の鳴る方へ」ほか4曲にプロデューサーとして参加したのが亀田誠治だ。ボーカル/ギターの洲崎貴郁と山田健人で組むお笑いコンビ「ラニーノーズ」も知名度を高める中、バンドとしての勝負を懸けたこのアルバムで、亀田とメンバーは何を目指してタッグを組んだのか?

 「メロコア」という枠から大きくはみ出たポップさと力強さを手にした今作への手応え、そして亀田プロデュースの内幕をバンド+亀田による座談会で語り合ってもらった。コロナ禍で打ち合わせはすべてリモート、実際に顔を合わせたのはレコーディングのスタジオが初めてだったという、なかなかに困難な状況の中でも、バンドとプロデューサーががっちり信頼関係を築き、相思相愛で楽曲作りに取り組んできたことが伝わる会話になっていると思う。(小川智宏)

亀田史郎さんが来ると思ってた(洲崎)

Runny Noize×亀田誠治

ーー4作目にして初のフルアルバムですが、まずは作り終えての手応えはいかがですか?

洲崎貴郁(Vo/Gt):推しポイントが亀田さんにプロデュースしていただいた4曲で、もうそれだけで今までと全然違うので、手応えはもちろんあります。デビューから5年目になるんですけど、ある意味節目というか、一番気合入っていますし、いい作品だと思います。

山田健人(Vo/Gt):その5年の間ミニアルバムしか出せてなくて、今回が初めてのフルアルバムなので、過去作からも代表曲を入れて。曲順もみんなで話し合って、ちゃんと1枚通して聴いたときに感動を味わえるようなアルバムになったと思います。過去最高傑作だと思いますね。

児玉とみー優也(Dr):亀田さんにプロデュースしていただいた4曲以外の新曲はその後に作ったんですけど、亀田さんとの経験を踏まえて、新しいニュアンスを取り入れて作れました。制作期間も長かったので、本当にやりたいことをやれたのではないかなと思います。

ーー今回亀田さんと一緒にやるとなったとき、どう思いました?

亀田誠治(以下、亀田):ああ、それ聞いてみたいなあ。

山田:最初は嘘やと思ってました(笑)。吉本あるある、吉本ジョークやと思ってました。

洲崎:亀田史郎さんが来ると思ってた(笑)。ほんまに言われるんですよ。「今回亀田さんにプロデュースしてもらったんです」って言うと周りが「亀田史郎?」ってなる(笑)。

ーー(笑)

洲崎:だから最初、吉本のいつもついていただいているプロデューサーの人に「亀田さんにやってもらおうと思ってる」って言われたときは「はいはい」って感じでしたよね。また言うてるわって。

山田:いつも吉本って一番最初に一番大きいことを言ってくれるんですよ。夢を与えてくれる。そっからどんどんちっちゃなっていって、現実はこうだよねってなるのが吉本のやり方なんで(笑)、「そうですか」って言ってたら、それがそのまま現実になった。

フクシマテツヤ(Vo/Ba):決めゼリフみたいに「まだわかんないんだけどね」っていう言葉が来るんです。亀田さんにやってもらえるって聞いて僕は「会えるんですか?」ってなったんですけど、それも「まだわかんないんだけどね」で済まされてた。

ーー亀田さんはオファーを受けたときにどういうことを感じましたか?

亀田:僕はお話をいただいたときはRunny Noizeの存在を知らなかったんです。でも、本人たちが今、ネクストステージに向かって頑張ってる、ぶっちゃけ売れたがってると。もしよければ力を貸してほしいっていうお話を伺って、僕もいろいろ自分で調べたりして。それでMVを見たんですけど、そこに映っているメンバーの表情や佇まいを見て、ハッピーオーラを感じちゃって、この子たちは絶対にもっとたくさんの人に知られた方がいいって思って、「やりましょう」ということになりました。こういう、メロコアの進化系みたいなバンド、最近いなくなっちゃったなあと思って、僕的に一周回って新しいことができるんじゃないかという喜びを感じたんですよね。でもそこからコロナ禍になっちゃって、時間はかかりました。最初、Zoomでのミーティングで「やるやる」って言ってたのに、全然曲を上げてこないんですよ。

洲崎:(笑)

亀田:これも社風? みたいな。できてますから、頭の中で鳴ってますから、来週スタジオ入るだけですからみたいなことを言うんだけど、全然、2カ月ぐらい膠着状態(笑)。画面越しで探り合いみたいな状況で。

「これ送っていいんか?」って悩む時間がむっちゃ長かった(フクシマ)

ーーちなみに、曲が全くできてこなかったっていうのはいつものことなんですか。

洲崎:ま、社風……。

山田:ギリギリに送れっていう教えがあるんですよ(笑)。

洲崎:いや、すいません、僕たちの怠慢ですよ(笑)。

ーー亀田さんとやるっていうことに対するプレッシャーもあったんじゃないですか?

フクシマ:それはめちゃくちゃありました。亀田さんに曲を送るんやってなると、ほんま、1回書き上げても「これ送っていいんか?」って悩む時間がむっちゃ長かったです。

亀田:スタジオにみんなで入ってラフに録ったもので全然いいよって言ってるのに、そこからが膠着するっていう。あ、あと思い出した。最初のミーティングで一つになれた感じはしたけど、一方でテツヤくんが「亀田さんの大ファンで、写真撮っていいっすか」みたいなことやってたじゃない?

洲崎:そうそう、スクショでね。

フクシマ:亀田さんすいません、僕その写真まだ待ち受けにしてます(笑)。

亀田:これは仕事なんだろうかみたいな。何が始まってるんだろうかっていうのはありました(笑)。

山田:テツヤはずっとベーシストとして亀田さんに憧れていたんですよ。本当に優しいんですよ、亀田さん。レコーディング中も優しすぎて、テツヤももう何かおかしくなってきて「あれはおかしい、優しすぎる」って言い出して(笑)。逆に怒られたいみたいな。

亀田:これでいいよって言ってるのに「本当?」みたいなのはあったよね。

フクシマ:自分から怒られに行ってました(笑)。

ーー上がってきた曲を受け取ったときに、亀田さんはどんなことを感じましたか?

亀田:やっぱりメンバーがそれぞれ担当曲があるっていうのは僕にとってすごいチャレンジングというか面白くて。なのでそれぞれのパーソナリティみたいなものも僕は把握してった方がいいだろうなと思って。それで進捗がないような状況でも何回かミーティングをさせてもらったんですよ。それは「早よせえや」とかそういうことではなくて(笑)、こうやって対面で、インパーソンで話ができない状況だったので、なるたけみんながどういう人柄で、どういうバンドの中の位置関係かみたいなものを感じ取ろうと思ったんです。そのミーティングはやってよかったですね。

ーーなるほど。

亀田:で、一番初めに言ったのは、玉砕してもいいから、まず1回僕のやりたい感じで提案させてもらえる? っていうことでした。話し合いながら作るんじゃなくて「亀田、ちげえよ」って場合はそう言ってもらっていいから、1回自分の思った方向で作らせてほしいっていうお話をして、実際そういう風にやりました。

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