04 Limited Sazabys、バンドのマインドとリンクした『YON EXPO'21』 “Yon Express”として届けたかけがえのない時間

フォーリミ『YON EXPO'21』レポ

 04 Limited Sazabys(以下、フォーリミ)が『YON EXPO』を2019年のさいたまスーパーアリーナ、2020年の愛知県国際展示場・Aichi Sky Expoに続き、3度目となる今年、自身最大キャパとなる幕張メッセにて11月27日、28日の2日間に渡り『YON EXPO'21』を開催した。

04 Limited Sazabys

 今年も軒並み各地のフェスが延期や中止を余儀なくされてきた中、フォーリミが単独とはいえ、ライブ以外のアトラクションやフードブースも展開する『YON EXPO』を今年も実現したことは容易いことではない。今年以上にコロナ禍における巨大イベント開催のノウハウの蓄積が少ない中、地元への感謝を込めて昨年、『YON EXPO'20』をAichi Sky Expoにて成功させた事実は大きい。バンドとファンにとっての最重要事項がライブであるということが、節目の決断でよく分かる。その蓄積をジャンピングボードにしたのが今年の『YON EXPO』だったのではないだろうか。

GEN

 昨年は架空の航空会社“YON AIRLINES”を設立し、さながら空の旅をアテンドしたフォーリミだが、今年は9月リリースのニューシングル『fade / Just』を架空の運送会社“Yon Express”が発送するというところからすでにストーリーはスタートしていた。そして9月から10月末まで開催したツアー『Deliver 04 you tour』から、今回の『YON EXPO’21』に、イベントやライブ演出がつながっていく。運送、デリバリー、届ける……というコロナ禍以降、さらに日常に欠かせなくなった仕事とどんな状況でも音楽をその人の元に届けに行くというバンドのマインドがリンクしたように感じた。

 2日間で曲順の入れ替えや選曲も若干異なる内容で届けた意欲も素晴らしいが、一日まるごとフォーリミ博覧会として存分に楽しませる要素として、大規模会場ならではの演出が今回も凄まじかった。お馴染みになったオープニング映像は“Yon Express”で働くメンバーそれぞれのキャラに合った役柄設定が今回も笑わせてくれた。

 そして、彼らのミッションがライブというかけがえのない時間と空間を届けるという英語のナレーションからの演奏スタート。と、ともに眼前に迫る、運送会社の巨大倉庫状態の舞台セット。実際の重機を模した精緻なそれと、膨大な数のダンボールの山、さらにはステージ両サイドに並ぶ複数のトラック。展示場というインダストリアルな空間と相まって、実際に巨大な倉庫で秘密裏にライブが行われているような演出に俄然テンションが上がる。音響や照明のスタッフはもちろん、舞台制作のスタッフにとってこんなに楽しい現場はないんじゃないだろうか。ちなみに今回もスタッフ全員が”Yon Express”社(!?)のユニフォームであるポロシャツを着用。いかに大勢のプロフェッショナルが集結して、このイベントを動かしているのか可視化されていた。

RYU-TA

 ライブは冒頭から新曲の「Just」を投下。ツアー『Deliver 04 you tour』から続くテーマでもあるコロナ禍以降の現実と、それでもただこの空間を届けたいという意志がメリハリの効いた音像で轟く。もちろん細部が明快に再現するのは難しい空間だ。KOUHEI(Dr/Cho)のバスドラとGENのベースという低音で足元から身体全体を揺らす音作りで圧倒してくる。

 ライブスタートの狼煙のようなこの曲に始まり、怒涛のブラストビートの「My HERO」まで疾走。午後4時に外の世界とは全然違う空間を作っていることが愉快だというGENのMCを挟んで、ファストチューンを立て続けに演奏する中で、ファンのあいだで期待されていたASIAN KUNG-FU GENERATION「未来の破片」のカバーも飛び出す。オリジナルに比べて相当早いBPMと、それでも明快に聴こえるGENのボーカルが耳に残った。過去に『YON FES』に出演したことのある先輩バンドの楽曲カバー、初日は東京スカパラダイスオーケストラ「銀河と迷路」のカバーだったようで、ぜひ機会があれば聴いてみたい。「未来の破片」の後に演奏されたのがエモとマスロック要素が混在するようなマイナーチューン「ghost」だったことも大いに会場を沸かせていた。

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