May J. が暗闇の先に見つけた希望の兆し 「今までは本当の自分を出すのがすごく怖かった」

May J.が見つけた希望の兆し

 May J.が、12月8日に最新アルバム『Silver Lining』をリリースした。共同制作者にyahyel 篠田ミルを迎えて2021年にスタートした“DarkPop”プロジェクトでは、自身の影の側面にスポットを当て、従来のMay J.像とは一線を画す意欲的な楽曲を発信。その集大成とも言える作品が『Silver Lining』となる。

 この一年、自身に内包された影と向き合い、それを音楽へと昇華してきたMay J.だが、その先に見つけた希望の兆し=“Silver Lining”とは。彼女のキャリアにおいて、一番ダークで、実験的な作品を作り上げた率直な心境を聞いた。(編集部)

「Unwanted」がなければ、ものすごく暗いアルバムになっていた

May j.

ーーめちゃくちゃかっこいいアルバムが完成しましたね。

May J.:はい(笑)。自分でも聴くのがすごく楽しいし、その世界に浸れるアルバムになったと思います。サウンド的には重くなりすぎず比較的サラッと聴ける、でもそこにはメッセージがしっかり込められてもいて。アートみたいに楽しめるアルバムを自分の声で表現したい思いがずっとあったので、それを実現できたのが本当にうれしいです。

ーー先行配信された「Rebellious」「Can’t Breathe」「DRAMA QUEEN」「Love&Hate」の4曲も含め、本作には今のMay J.さんのリアルな思いが詰めこまれていますよね。

May J.:今まで心の中に溜めてきた思いをちゃんと作品にすることができたので、スッキリした気持ちもあるし、やったぜっていう感覚もあるかな(笑)。今の自分のアイデンティティをひとつの作品としてここに残すことができたので、ここからまた一歩踏み出せそうな気がしています。

ーーアルバムタイトルの「Silver Lining」は“希望の兆し”という意味だそうですが、今回は闇の中から徐々に光を見出していく流れが全10曲で描き出されています。

May J.:曲順はかなりこだわりました。最初はどん底にいるイメージから始まって、5曲目の「DRAMA QUEEN」あたりでだんだん気持ちがニュートラルになってくる。で、7曲目の「Feels Like Home」からあたたかい気持ちが生まれて、9曲目の「Psycho」で思いの丈をぶちまけるっていう(笑)。大まかに言うと、そんなストーリーになってます。アルバムを聴いてくれた方には、「この曲順で怒られなかった?」って言われることもありますけどね。「全然売ろうとしてる曲順じゃない」みたいな(笑)。

ーー(笑)。ダークなところから幕を開けるアルバムですからね。そのインパクトは大きいかもしれない。

May J.:でも今回はアルバム1枚を通してのストーリーをちゃんと伝えることを一番大事にしたんですよね。物語としての気持ちよさ重視で構成していきました。

ーーそういった1枚としてのストーリー性は、制作の過程で見据えたものだったんですか?

May J.:途中までまったく見えてはいなかったです。篠田ミル(yahyel)くんと最初に「Can’t Breathe」を作ってる段階では“Silver Lining”というキーワードも出てきていなかったし、制作を進める中でも、今回のアルバムは全体的にダークな内容になるだろうなと思ってました。でも、1曲目の「Unwanted」を作ったときに、初めて光が見えたんですよ。

ーーアルバムの中でもっともダークと言える楽曲を作ったことで光が見えたんですか?

May J.:そうなんです(笑)。「Unwanted」を作った時期、私はものすごく悲しかったんですよ。「もうダメかな」って思うくらい気持ちが落ちてる状態だった。そんなときに泣きながらピアノを弾いて、その思いを素直に曲と詞に落とし込めたとき、ポジティブな光が見えたような気がして。

ーー思いを素直に音楽へ注げたことが希望の兆しになったと。

May J.:そうだと思います。今までは悲しい出来事があっても吐き出さず、すぐ溜め込むクセがあったんですよ。だから、そのまんまの生の思いを曲にしたのは実は初めてで。ソングライターの人からすれば当たり前のことだと思うけど、私にとってはすごく新鮮なことだったし、それによってポジティブな感情になることができたんですよね。そのタイミングで“Silver Lining”という言葉も浮かんできました。「Unwanted」はアルバム制作のかなり後半にできたんですけど、もしそれが生まれていなかったら最初のイメージ通り、ものすごく暗いアルバムになっていたと思いますね(笑)。

ーー今回は4曲目「Silver Lining」と10曲目「(Un)wanted」という2曲のインタールードが収録されているのも特徴ですね。

May J.:どちらの曲にも私のつぶやきというか、一人語りが入っているんですけど、そういう表現は歌とはまた聴こえ方がまったく違うものだと思うので、おもしろく聴いてもらえるんじゃないかなって。

ーーナチュラルに英語でしゃべっているMay J.さんが新鮮ですし。

May J.:日本語で語りを入れるのはちょっと照れ臭かったので今回は英語にしました(笑)。ほんとに何も考えず、そのときにパッと出てきた思いを家で録って、それをそのまま使っていますね。あと、環境音を入れたのもけっこうこだわりではあって。

ーー「(Un)wanted」のラストには足音が入っていますよね。

May J.:そうそう。最初に「Unwanted」(必要とされていない)と思っていた私が、最後にはその“Un”をかっこで括って、“求められている”というポジティブなマインドになることができたので、その気持ちを最後の足音に重ねた感じですね。ここからまた前に進んでいくんだよっていう。

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