山本彩、音楽に込めた明確な意思 万雷の拍手が会場を満たした『SAYAKA YAMAMOTO TOUR 2021 ~ re ~』東京公演レポ

山本彩、約2年ぶりの有観客ライブレポ

 山本彩のライブを久しぶりに観た。配信形式では観ていたものの、有観客としては全国の小箱を巡った『山本彩 LIVE TOUR 2019 ~I'm ready~』以来、実に2年余りも空いてしまった。

山本彩

 山本は2019年12月に3rdアルバム『α』をリリース。その翌年2月に全国ツアーを開始するものの、コロナ禍に突入し、ほとんどの公演が中止を余儀なくされた。今回は、ファンクラブ「SYC」でのツアーを除けば、山本が久々に開催する全国ツアー。『SAYAKA YAMAMOTO TOUR 2021 ~ re ~』の副題にある「re」には、『α』のツアーができなかったリベンジともう一度ここから歩き出すという意志が感じられる。

 足を運んだのは、11月18日に開催されたTOKYO DOME CITY HALL公演。NMB48時代には何度も立ってきたステージであるが、山本彩として一人でライブをするのは今回が初めてである。

 山本は2016年の『Rainbow』に始まり、2017年の『identity』、2019年の『I'm ready』と3度ツアーを行ってきているが、4度目となる今回の『re』を観て感じたのは格段にパワーアップしたエンタメ性である。これまで、特にNMB48の活動と並行して開催された『Rainbow』『identity』、そしてグループ卒業後としては初のツアーとなった『I'm ready』はシンガーソングライターとしての姿、チームSYを引き連れてのバンドサウンドを印象付けるライブだった。

 筆者が今回の『re』にエンターテインメントの力を感じたのにはいくつかの要素がある。一つはダンスブロックの存在。今年7月に配信リリースされた「yonder」を機に、山本はダンスミュージックに大きく傾倒した作品を発表し続けている。8月リリースの「Donʼt hold me back」、さらに10月に配信となりリリックビデオには今回のツアー映像が使用されている「あいまって。」と3作が、これまでの路線とは異なるダンスチューンである。

 セットリストにおいてもこの3曲は、本編の4~6曲目に固まっている。『CDTV ライブ! ライブ!』(TBS系)でも披露された「Donʼt hold me back」は、バックダンサー4人を引き連れたダンサブルなナンバー。NMB48時代、グループ切ってのダンスメンバーでもあった山本が満を持して解放したもう一つの顔だ。実際に生で観て驚くのは、バキバキに歌い踊る山本の姿。高速の節回しのラップパートに、高音を張り上げるサビとただ歌うだけでも難しい楽曲であるが、そこにs**t kingzのshoji振り付けの高難易度ダンスが加わっている。改めて、そのアーティストとしての振り幅を再確認するともに、まだまだ歌い踊る彼女が見たいと思わせられた。

 本格的なダンスナンバーの「Donʼt hold me back」に比べ、「yonder」と「あいまって。」はメロウなサウンドが特徴。ダンス選抜のセンター的立ち位置とも見ることができる前者だが、後者は山本がボーカルに専念しながらダンサーズが楽曲を彩るようなパフォーマンス構成だ。ダンサーズはほかにも「Larimar」ではコンテンポラリーダンスを、本編ラストを飾った「ドラマチックに乾杯」ではラテンロックに乗せてさらなる幸福感を演出。特に「Larimar」は山本の歌と一人のダンサーの舞い、それぞれが楽曲の世界観を表現した美しい一幕であった。もはやダンサーズは今回のツアーで新たに仲間入りしたチームSYの一員とも言えよう。打ち込みのダンスミュージックを見事バンドサウンドに昇華したチームSYについても拍手を送りたい。

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