突然のノミネート枠数増加、BTSへの冷遇……第64回グラミー賞ノミネートで浮き彫りになる音楽業界の今
筆者個人として今回のノミネートで最も気になった点は、主要4部門のノミネート数が以前の8枠から10枠へと拡大されたことである。2018年時点ではこれらの部門は5枠だったことを踏まえると、わずか4年で倍に増えているのだ。米New York Times紙によると、なんとこの枠数の拡大については発表のわずか24時間前に決定されたとのことで、さらにどの作品/アーティストが追加されたのかについても報道されている(*1)。
例えば、この追加によって、ドージャ・キャット(Song of the Yearに追加)とリル・ナズ・X(Record of the Yearに追加)は、主要4部門中2部門から、3部門へとノミネート数を増やしていることが明らかになっている。また、長らく対立関係にあるテイラー・スウィフトとカニエ・ウェストが揃ってAlbum of the Yearに名を連ねたことも話題となっているが、この件についてもこの対応による影響だ。グラミー賞は長らく非白人アーティストや女性アーティストへの冷遇ぶりが批判され続けており、今回も(前述のBTSの件を含め)ノミネーションに対する批判は少なくない。正直、筆者個人としては、今回実施された「突然の枠数の増加」自体が、ノミネートを絞ることが出来ないグラミー賞の現状を示しているのではないかと考えてしまうところもある。また、これはあくまで余談だが、この拡大によって追加されたとされるアーティストが、全て前述の「非白人または女性アーティスト」に該当しているのも気になるところだ。
とはいえ、今もなおグラミー賞が音楽業界を象徴する巨大な存在であることは変わりない。むしろ、グラミー賞、そしてアワードを巡る議論全体を俯瞰して見ることで、2021年の音楽業界を振り返ることが出来るのではないだろうか。受賞式は、2022年1月31日(現地時間)に実施される予定である。
[参考]
*1 https://www.nytimes.com/2021/11/24/arts/music/grammy-nominations-taylor-swift-kanye-west.html