キタニタツヤ、ライブを通して改めて伝えた“希望と祈り” 「聖者の行進」に込めたメッセージも

キタニタツヤ、ライブを通して伝えたこと

 さらに、「自分を知るためには誰かを介して、誰かともっと対話しないといけない」という言葉と共に披露されたのは、新曲「Rapport」。伸びやかな歌声と美しいギターのアルペジオが際立つ、新境地ともいえる疾走感に溢れたこの曲を披露するとき、キタニは「みんなの前に立つと、もっと良い曲が作れそうな気がしてきます」と嬉しそうに語っていた。

 そしてやはりこの日一番輝きを放っていたのは、本編最後に演奏された「聖者の行進」だろう。スモークで満たされた舞台の上、振り上げられるオーディエンスの無数の手の向こうで、“苦行”である人生に対し誰よりも誠実な言葉を紡ぐキタニは、彼自身が言う通り、確かに“希望”を歌い上げていた。

 キタニはこの曲に“When The Weak Go Marching In”という英題を冠している。直訳すると、“弱者の行進”。一見すると皮肉にも聴こえるが、キタニが込めた力強いメッセージが表れたタイトルであることがわかる。人間は弱い生き物だ。それこそ疫病により社会や経済がすべて崩れてしまうほどに。この日のMCでキタニ自身も「今日もせっかくSTUDIO COASTでライブできたのに大雨だし。ツイてねえな~!」とおどけてみせながら、高校時代から憧れていたという、もうすぐ閉館してしまう会場への想いを少し悔しそうに口にしていた。たとえ元気でいられなくても、ツイてなくても、必死に生きる我々人間こそが皆等しく“聖者”である。キタニはこの曲にそんなメッセージを込めたのだと、ライブを通して改めて教えられたようだった。憂鬱でツイてないこの時代に鳴り響く彼の音楽は、絶望の淵から立ち上がる狼煙のような力強さで、今よりもっと多くの“聖者”たちを導くに違いない。

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