『A Promise』インタビュー
結城アイラ、至極のラブソングで開いた新しい扉 『暗殺貴族』とリンクする“約束”の歌
結城アイラが、至極のラブソングを収録した通算15枚目のシングル『A Promise』をリリースした。現在オンエア中のテレビアニメ『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』(AT-X、TOKYO MXほか)のED主題歌として制作された表題曲は、ダイナミックに展開していくスケールの大きなバラードだった前作「Blessing」とは一転し、聴き手の心を優しく温めるようなチルウェイブ系のバラードとなっており、アニメのヒロイン、ディア(CV:上田麗奈)が歌唱するバージョンと、英語歌詞バージョンの3パターンを制作。さらに、カップリングには、90年代R&Bにジャズやゴスペルの要素を加えた失恋ソング「Awkward love」を収録。ボーカリストとしては新たなサウンドに挑みつつも、作詞家であり、作曲やプロデュースもこなす彼女にしかなり得ないクリエイティビティが詰まった1枚となっている。(永堀アツオ)
ディア(CV:上田麗奈)ではなく、一人の大人の女性として歌う
ーー新曲「A Promise」を最初に聴いた時、ボーカリストとしての歌いっぷりの良さが際立っていた前作「Blessing」とは全く違うアプローチをしていて驚きました。
結城アイラ(以下、結城):確かにそうですね。今回は派手には盛り上がらず、音域的にも同じようなところを漂っているので、全然毛色の違う曲になっています。
ーーT Vアニメ『聖女の魔力は万能です』(AT-X、TOKYO MXほか)のOP主題歌だった前作からは半年ぶりのリリースになります。
結城:前作がシングルとしては4年ぶりだったので、1年に2枚もシングルを出させていただけることがすごく嬉しいなと思っていて。今回はT Vアニメ『世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する』のED主題歌なんですが、また異世界ファンタジーに関わらせていただけるんだという喜びもありましたね。
ーー楽曲制作はどんなところからスタートしたんですか。
結城:なんとなくではあるんですが、エンディングの絵コンテイメージを文章でいただいていて。アニメ本編ではあまり描かれていないけど、実は主人公のルーグとヒロインのディアが定期的に会う場面があって。そこで、エンディングではディアがルーグのことを想い、月を見上げているようなシーンから始まりたいということを聞いていたんです。そこから曲も膨らませて、月を見て、大事な人のことを思っているラブソングにしようというところから始まりました。優しい夜の雰囲気を想像したりしていたので、歌い上げるというよりは秋の夜長に聴いていただけるような、ゆったり、ふんわりとした感じにしたいなと思っていました。
ーー両想いのラブソングというイメージなんですね。
結城:そうですね。でも、ディアはまだ幼いので、恋なのかどうかわかっていないと思うんです。なので、ラブソングではあるけど、自分の中で特別な人を想っている曲にできたらいいなと思いました。今回はヒロインのディアを演じている上田麗奈さんにも歌っていただいたので、ディアでも、大人の私が歌っても、どちらも成り立つような歌詞の世界観にできたらいいなというのがありましたね。
ーーさらに前作に続き、英語バージョンも制作されています。
結城:2番の歌詞で夏目漱石のように〈切ないくらい月が綺麗ね〉と言ってるんですけど、英語バージョンでわかりやすく〈I Love You〉にしていて。日本語で歌っているものと比べることで、色々な答え合わせができると思います。
ーー歌うだけじゃなく、作詞作曲もやってるからこそできることですよね。
結城:今回も曲を作らせていただいたので、色々な仕掛けを意識できたらいいなと思っていました。「Blessing」の時とはまた違った楽曲にしたこともそうですし、私が今まで出してきた曲の中で、実はラブソングってあまりないんですよね。しかも、こんなにストレートに歌っている曲はおそらく初めてだと思うので、自分でも楽しんで作ってました。あと、自分的に挑戦だったのは、サビでの転調ですね。この歌の主人公の心理とメロディが寄り添っていくような。Aメロ、Bメロでは切ないけど、サビで転調して前向きな気持ちになる。しかも、転調してそのままではなくまた戻るという複雑な展開なので大丈夫かなと思いながら作ったんですけど、編曲の蓮尾さんが素敵にアレンジしてくださって。
ーーアレンジは、チルウェイブというクラブミュージック寄りのサウンドになってます。元School Food Punishmentの蓮尾理之さんにはどんなものを求めたんですか。
結城:蓮尾さんの楽曲を色々聴かせていただいた時に、キーボーディストでありながら、コードの付け方や楽曲の選び方に一筋縄ではいかないものを感じて。私は割とオーソドックスにコードをつけるタイプなので、足りない要素を蓮尾さんに入れてもらえたら、新しい扉が開けるんじゃないかなっていう期待も込めてお願いしました。
ーーたしかに新しい扉が開いてますよね。アニソンではありますが、都会のナイトミュージックに仕上がってますし。
結城:そうですね。レコーディングの時に上田麗奈さんにも「おしゃれですね」って言っていただきましたし(笑)、私自身も新しいなと感じてます。
ーー歌い方についても新しいアプローチをされてますよね。
結城:デビュー当時は、歌いやすいキーよりもさらに高いところを意識しながら作っていただいた曲が多かったんですね。若い頃はどれだけ高音を出せるか、高音チャレンジみたいなところがあって(笑)。
ーーJ-POPの女性シンガーは主に自分のキーより1つ上のキーで歌う曲が多いですよね。
結城:ちょっと無理して頑張ってる感じがいいエッセンスになったりするんでしょうね。カラオケに行っても、高いキーが出る人すごい! みたいな反応ももらえたりするし(笑)。私自身もそう思っていたので、デビュー当時は高いキーで歌ってましたが、長く音楽活動を続けていく中で、自分の高音もいいけど低音もすごく好きになってきて。それから低音をもっと出していきたいと思った時に、歌いやすいキーよりも半音、または一音下げて作り始めました。
ーーそれは具体的にいつぐらいからですか?
結城:前作の『Blessing』からかな。最近のマイブームでもあって。高音はトレーニングで出るようになるけど、低音は自分の持って生まれたものだったりするんです。だから、意識して発声するために鍛えるのが難しいんですけど、そこはあえて頑張ろうと。
ーー歌詞はディア目線ですけど、結城さんはディアとして歌ってるわけではないですよね。
結城:私はディアではなく、一人の大人の女性として歌おうと思ってました。なので、なるべく低いキーを意識して、可愛らしくならないようにしたり、包み込むように歌おうという意識がありましたね。
ーーディア役の上田麗奈さんとは逆のアプローチになりますよね。
結城:上田さんはこの低いキーで、幼い声を出さないといけなかったので、本当にプロ魂を感じました。レコーディングに立ち合わせていただいたんですけど、「このキーでよくそんなに可愛らしい声が出るな」って。私はずっと、自分が作った曲を誰かに歌ってもらいたいと思っていたので、早くに色々なことが叶って、嬉しいシングルになったと思います。
ーー上田さんのボーカルディレクションも結城さんがされたんですか?
結城:いえ、後ろで見守り係でした(笑)。本当にキーが低いので大変だったと思うんですけど、とても表情豊かに歌ってくださって。言葉ひとつ一つに細かな表現をしてくださるんですよね。役者でもあり、アーティストでもある彼女の声の魅力や素晴らしさを感じることができたし、改めてポテンシャルがすごく高い方だなと思いましたね。
ーー先ほどおっしゃっていた〈切ないくらい月が綺麗ね〉のところも全然違う歌い方をしてますよね。
結城:私は淡々と歌っているけど、一番伝えたい〈愛してる〉という部分はどうしても感情が出てしまっている。ディアの場合は、恋なのかわかってないけど、会えなくて寂しい、切ないという気持ちが割と前面に出ているんだと思います。