『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』金曜ロードショーで放送 TRUE、茅原実里、結城アイラ……大きな感動へと導く音楽
本日10月29日、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にてアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』特別編集版が放送される。2018年に放送されたTVシリーズ全13話を再編集したもので、物語の序章にあたる第1話・第3話や、第7話、第10話を中心に、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の魅力が凝縮されたものになっている。本稿では、物語を彩るテーマソングにスポットを当て、音楽の観点から『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の魅力を紐解いていく。
『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、戦場で戦うためだけに生きてきた感情を持たない少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、手紙の代筆を行う自動手記人形として働きながら人々と交流し、自らにとって大切な人が最後に残した「愛してる」という言葉の意味を知っていく物語。暁佳奈による小説を原作に、京都アニメーションによってアニメ化され、2018年にTVシリーズが放送。2019年に映画『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』、2020年にオリジナル新作『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が公開され、興行収入21.3億円のヒットを記録、日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞した。
メールやSNSがコミュニケーションの主流になった現代において、手紙というアナログな通信手段の持つ温かみを題材にした本作。心に響くストーリーはもちろん、古き良きアメリカやヨーロッパを感じさせる緻密で美しい風景描写、そして物語に寄り添ったテーマソング/挿入歌によって、見る者をより大きな感動へと導いてくれる。
TRUE、茅原実里、結城アイラという3人の歌姫が担当したテーマソング/挿入歌は海外でも評価が高く、本作品の音楽部分の原点とも言える、TVシリーズ放送に向けたPV用に制作された結城アイラ「Violet Snow」は、英語・フランス語など4カ国語でカバーされたバージョンがボーカルアルバム『Song letters』に収録されている。また、今年8月にはLINE CUBE SHIBUYAで『ヴァイオレット・エヴァーガーデン オーケストラコンサート2021』が開催された。
TVシリーズのOPテーマでTRUEが歌う「Sincerely」は、口数の少ないヴァイオレットの心の声がそのまま歌になったような楽曲で、物語が進むにつれて歌詞の意味がより深まっていく。唐沢美帆(TRUE)による歌詞は、戦うことで自己の存在証明を果たしてきたヴァイオレットにとって、人に気持ちを伝えるための言葉は全くの未知であったこと。1つ言葉を覚えるたびに新たな感情が芽生え、また言いようのない感情が生まれるたびに、その感情が何なのか知りたいと願ったこと。さらに新しい経験で感じる喜びや、人と触れ合いながら成長する姿が感じられ、ヴァイオレットに寄り添いながら、聴く者に問いかけてくるものがある。
作曲は、LiSAや田所あずさなどへの楽曲提供も行うPENGUIN RESEARCHの堀江晶太が担当。ピアノと歌で始まり、モノクロだった風景に色が付いていくように、ストリングスなど様々な楽器が重なっていくサウンドの展開は感動的だ。TRUEのボーカルも実に巧みで、曲が後半に進むに従い、徐々にエモーショナルさが増していく。歌詞、曲、歌が三位一体となってヴァイオレットが表現された楽曲だ。ヴァイオレットの成長と覚悟を感じるDメロは、物語を見終わった後に聴くとより感動が増すだろう。
EDテーマ「みちしるべ」は、2021年内での活動休止を発表している茅原実里が担当し、人生で道しるべとなる大切な人との出会いをテーマに、自身が作詞を手がけた楽曲だ。人生を歩む上で誰もが感じる気持ちや大切なものを、優しくシンプルな言葉で例えながら、幸せとは何かについて考えさせてくれる。独唱で始まり、ピアノと歌だけで静かに進む前半は、どこか昔の唱歌のような牧歌的な雰囲気を感じる。ストリングスなどの楽器が加わる後半は、ヴァイオレットが出会った人々の様々な人生を物語るようにドラマチックに展開していく。
作曲の菊田大介は、茅原実里のサウンドプロデュースをはじめ、『うたの☆プリンスさまっ♪』や『BanG Dream!』シリーズなどのキャラクターソングも手がける。茅原の真っ直ぐで透明感のある歌声と、シンプルな言葉がより胸に響くサウンドメイクは実に聴き応えがある。