コブクロ、激動の時代に伝える変わらないものの大切さ 東京ガーデンシアターに響いた本物の歌

 およそ4カ月をかけて12都市、24公演を行う『KOBUKURO LIVE TOUR 2021 Star Made』も、いよいよ大詰め。21、22本目にあたる東京公演の会場は、コブクロにとって初となる、昨年夏にオープンしたばかりの東京ガーデンシアターだ。オープニングを飾るのは、ニューアルバム『Star Made』の表題曲「Star Song」。2年ぶりのツアー、久々の東京公演、新作に込めたメッセージ、コロナ禍で感じたこと。様々な思いを乗せた二人の歌声が、広い会場いっぱいに響き渡った瞬間、コブクロがライブに帰ってきたという実感が湧きあがる。

 「どうか、心の中で一緒に歌ってください」と、声を出せない観客に向けて、小渕健太郎が呼びかける。黒田俊介は、力強いサウンドに乗って何度も飛び跳ねる。ストリングスカルテットを含む大編成のバンドが、二人の背中をしっかりと後押しする。曲は「晴々」から「ONE TIMES ONE」へ。観客は歌う代わりに大きく手を振りあげ、背後のスクリーンでは花火が打ち上る。思わず頬が緩むような、前向きな包容力あふれるオープニング。

黒田俊介

 小渕がメンバーを代表して、「みんなの思いを何倍にもして応えていくような演奏をします」と、この日にかける思いを宣言する。凄腕揃いのバンドメンバーを一人ずつ紹介し、最後に紹介するのは、小渕の言う「素晴らしい手拍子を持ってきてくれた」今日の観客だ。曲は「紙飛行機」、そして新作からの「夕紅」「卒業」へ。「紙飛行機」の天高く舞い上がるようなストリングスのメロディ、「夕紅」の背景に映し出される美しい秋空の黄金雲、そして二人が共作した「卒業」の、熱い思いの二重唱。コブクロのライブはいつも、1曲ごとにハイライトが訪れる。

 「懐かしいラブソングを聴いてください。コブクロのラブソングの原点のような曲です」小渕の言葉に続いて歌われた「赤い糸」は、聴くたびにみずみずしさと切なさが更新されてゆく名バラード。そして「露光」は、「赤い糸」から20年以上の時を経た、『Star Made』収録の最新バラード。歌い終えた小渕が、ふたつの曲は〈会ってくれますか〉という言葉で繋がっていると説明する。コブクロのラブソングの歴史に、途切れることなく流れる豊かな水脈を感じる、素敵なエピソード。

小渕健太郎

 ここからは、『Star Made』の収録曲の中でも、異なる印象的なサウンドと言葉を持つ個性派が並ぶ。「風をみつめて」は、切なさをたたえたミドルバラードの中で、悲しみの向こうの希望をまっすぐに歌う1曲。そして「両忘」は、打ち込みサウンドを大胆に取り込んだ挑戦的な曲で、小渕がギターを置いて電子楽器のテルミンを操り、エレクトロなビートと二人の声が絡み合う。さらに「灯ル祈リ」は、レーザービームを使った壮大な演出のもと、全身のパワーを使い切る黒田の圧倒的なボーカルと、小渕の強力なコーラスが、寄り添うというより激しくぶつかりあい、すさまじい燃焼力で燃え上がる。あまりの迫力に、曲が終わっても拍手が鳴りやまない。黒田と小渕が肘タッチで笑い合う。「これが今のコブクロの全力です!」と、小渕が胸を張る。本物の歌とは何かを存分に見せつける、素晴らしいシーン。

 小渕が真面目な話をしだすと、黒田が突っ込み、小渕が脱線し始めると、黒田がさらに火に油を注ぐ。話題は小渕のライブ中の独特の身振り手振りから、最近ハマっているというサウナのエピソードへ。面白すぎてとても文字では再現できない、コブクロ名物、爆笑脱線トークの切れ味は今夜も抜群だ。気が付けばすでに2時間、ライブはそろそろ終盤だ。

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