「Juden」インタビュー

Kroi、独自のファンクネスとユーモアはいかにして生まれている? 多くの人を惹きつける5人のパーソナリティに迫る

 掴みどころがない。しかし、そのポップさに、シュールさに、妖しさに、可愛らしさに、どうしようもなく惹かれていく――そんなふうにして、今、この5人組にズブズブとのめり込んでいく人たちも多いのではないだろうか。今年メジャーデビューし、1stフルアルバム『LENS』をリリース、ツアーも成功に収め、勢いに乗るKroiである。11月には新作EP『nerd』のリリースや、来年にかけての対バンツアー『Dig the Deep』も決定。そのリアルな肉体感覚と夢幻の世界を描く浮遊感が同居した独自の音楽世界は、この先さらに多くの人たちを巻き込んでいくだろう。

 ここにお送りするメンバー全員インタビューでは、密室的でありながらも、そこにいる誰もが当事者になれる独自のパーティー空間を作りだす彼らの内面性をもっと知りたいと思い、5人それぞれを他己紹介してもらう形でメンバーのパーソナリティに迫った。このワチャワチャとした会話の細部に光る表現者としての哲学、バンドマンとしての美学、本当に意味のないボケ、すべてをひっくるめてKroiである。そして、もちろん新作EP『nerd』より先行配信される「Juden」の話も。これを読んで、その独自のファンクネスとユーモアの一端に触れてほしい。(天野史彬)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

面白いと思うものを共有したいーーKroiの根底にあるもの

――今日はリアルサウンドではインタビュー初登場ということで、よろしくお願いいたします。

益田英知(Dr・以下、益田):お菓子食べますか?(と言って、鞄の中からお菓子を出して机に広げる)

――あっ、ありがとうございます。益田さん、お召し物が凄いですね。

長谷部悠生(Gt・以下、長谷部):昨日、「明日撮影あるから服買いに行こう」って言って、これですよ。

千葉大樹(Key・以下、千葉):家からこの格好で来たらしいですよ。

――そうなんですか(笑)。

関将典(Ba・以下、関):この格好で、布団抱えてコインランドリー行ったんでしょ?

益田:うん。飼っている猫ちゃんが、間違えて俺の布団に粗相しちゃって。なんで、敷布団担いでコインランドリーに行きました。

――いろいろと、凄い。先日、リキッドルームで行われた『凹凸』ツアーの追加公演も観させていただいたんですが(参照:Kroi、喜びと快楽が連鎖しながら最高の沸点へ ツアー『凹凸』追加公演で過ごしたかけがえのない時間)、Kroiの生み出す空気に飲み込まれていく感覚があって。長谷部さんがマイケル・ジャクソンのコスプレをして「Smooth Criminal」を踊るとか、ああいうアイデアはどういったところから生まれるんだろう? というのも気になるのですが。

内田怜央(Vo/Gt・以下、内田):ああいうのは、僕らの日常の延長線上ですね(笑)。

千葉:そうそう、普段ふざけている中で特に面白かったものをステージでやっているだけです(笑)。

関:僕らが面白いと思うものを共有したいんですよね。楽屋でワイワイやっている中で、「これ、めっちゃ面白いじゃん」っていうことをお客さんに見せて、笑ってほしいんですよ。……笑ってもらえないことも多々あるけど(笑)。お客さんと一体になるうえで自分たちと同じ価値観で楽しんでもらいたいっていう気持ちが、ああいうノリの根底にはありますね。

内田:あと、最近はライブでお客さんは声を出せないので、スベっててもわからないんですよ。なので、やり切れるんです。今のうちにいろいろやっておかないと(笑)。

――(笑)。内田さんはあの日、MCで「助けてほしいときに、自分たちにすがってほしい。調子がいいときには、こっちにこなくてもいい」とおっしゃっていましたよね。改めて、あの日ああいった発言が出てきたのはどうしてだったのだと思いますか?

内田:普通に、自分が「どうしようもねえな」と思ったときに、人が作った曲を聴いたり自分の曲を聴いたりすると、心動かされるものがあるので。あれは、そんな超凡庸な話をエモくしたっていうだけなんです(笑)。普段、MCで何を言うかって考えてないんですよ。憑依されたようにその場で出てくる言葉があるんですけど、あとから考えると「あれ、よくなかったな」「感動的になりすぎちゃったな」と思って反省することもあって。今言ってもらったMCも、それの1個ではありましたね。

Kroiってどんなバンド? メンバー同士で他己紹介

関将典

――今日は用意してきた企画があって。Kroiって、5人それぞれがめちゃくちゃキャラ立ちしているじゃないですか。とにかく5人全員が個性的なのはわかるんだけど、ただ、まだそこまで深くそれぞれのキャラクターを知らない人も多いと思います。なので、それぞれの人となりを知るために、一人について他の4人が語る、他己紹介をしていただけたらなと。

千葉:なるほど。誰から行きます?

――では、まずはベースの関さんについて、他の4人が教えてください。

千葉:関さんは、真面目っすね。アーティストをやっていくのって、音楽を作るだけじゃなくて、バンドをどう見せていくかも考えないといけないじゃないですか。そういうことをKroiの中で一番考えてくれる人です。アイデアを無限に出してくれる。「これ、どうする?」って、いろんな場面で提案をしてくれます。まあ、我々は関さんからのLINEには返信しないんですけど。

一同:(笑)

長谷部:返信しないのは、関さんのやりたいことが、Kroiのやりたい方向性として合っているからですよ。言わずもがななんです。

関:いいように言ってんなあ。

益田:バンド内の立ち位置的には「お兄ちゃん」っすね。同い年だけど(笑)。俺と悠生がふざけているときも、関に注意されたらパッとやめます。「本当に悪いことなんだな」って思うから。

一同:(爆笑)

千葉:あとは、純粋にベースを弾いている姿がカッコよくていい。「カッコいい」って大事じゃないですか。関さんって、ベースを弾いている姿がめちゃくちゃカッコいいんですよ。もし、全員がこんなん(益田を指さす)だったらおかしいじゃないですか。

益田:……。

内田:関さん、めちゃめちゃベース好きだよね。弾くのもそうだけど、そもそもベースという楽器自体に対する愛が半端ない。この中で誰よりも楽器好きだと思う。自分で楽器の改造もするし、そういう部分は、バンドの音楽性にも繋がっていると思いますね。DIY的な感性で、自分たちで試行錯誤しながら新しいものを作りだそうとするっていう。

千葉:プレイに芯があるし、自分を持っているベースラインを弾く人だと思う。そういう部分は、制作においても信頼してますね。

関:すげえ褒めてくれるね。

千葉:じゃあ、逆もいっとこうか。関さんはすげえ遅刻します。

益田:あと、関は自分の名前以外の字がめちゃくちゃ下手です。それにクソゲーばっかりします。

関:お前ら、覚えとけよ! あと、今日遅刻したのお前(千葉)だろ!

長谷部と益田の間で派閥争いが勃発?

長谷部悠生

――(笑)。次は、ギターの長谷部さんについて教えてください。

千葉:悠生も関さんと同じように、「バンドって楽器だけじゃないんだ」ということを痛感させられるメンバーですね。バンドって、全員揃ってみたときに一人ひとりがどういう方向を見ている人間なのかが、パーソナリティとして見えていることが大事だと思うんです。そういう面で、悠生はKroiの中ですごく大事な役割を担っている。一言で言うと、アホなんです。

一同:(爆笑)

千葉:悠生は、やりすぎるんですよ。

関:一点集中型だよね。ライブ前にMCでのボケを考えているときに、千葉が「悠生、これやろうよ」って提案すると、そこに向かってめちゃくちゃ突っ走るんですよ。それで周りが見えなくなることが多くて。『凹凸』の追加公演でのマイケルも、ライブ前の楽屋で一切ギターに触らずに延々とダンスの練習してましたから(笑)。そのくらい、「これ!」となったら、それに没頭する。そういう部分はたまに欠点ではありますけど(笑)、でも、服でもなんでも、興味を持ったものはそのバックグラウンドまで掘り下げるっていう点では、よさでもあるなと思いますね。悠生は、自分の好きなものに対しては人一倍知識を持っているんです。でも、それ以外のことに関しては全然知識がない(笑)。そういう面白さは、Kroiのひとつの方向性になっていると思いますね。

益田:あとは、ライブ中、一番「動き」という面を意識してお客さんに見せているのが、悠生だと思う。

関:そうだね。ステージの前に出ていってギターソロを弾くとか、歯ギターをやってみるとか、パフォーマンス的な面、視覚的な面を担ってくれている。

益田:あと、悠生は何やっても怒らないです。なんで怒らないの?

長谷部:怒って得することって、あんまりないじゃん。喧嘩して得したことなんてないし。平和主義なんだよ。

益田:僕と悠生は同業なんですよ。笑いのためなら身を犠牲にできるところが一緒。

内田:このやりすぎる二人(長谷部と益田)が、たまに痴話喧嘩みたいなことを始めるんですよ(笑)。あれ、恐ろしい光景だよね。

――なにが原因の痴話喧嘩なんですか。

関:元々は、Kroi内のオモシロ担当は益田が独走していたんですよ。でも、悠生がそこに参戦してきたことによって、派閥争いが起こっているんです(笑)。

益田:悠生は振り切ってるから、もう俺なんか敵わないよ。

関:その格好で言うな!

――益田さんとの派閥争いに関しては、長谷部さんご自身ではどうですか?

長谷部:……人に笑ってもらえると、めちゃくちゃ興奮するんです。

一同:(爆笑)

関:ミュージシャンが言うことではない(笑)。

長谷部:やっぱり「笑わせる」っていうことも含めて、エンターテインメントが好きだからバンドをやっているんだと思うんですよね。人が喜んでいる姿が嬉しいんです。ダウンタウンの松本人志さんが言ってたんですけど、「人が笑ってくれるとチャリンチャリンってメダルがもらえる」って。それに取り憑かれちゃったんですよ。

千葉:それ、家でもずっと言ってるよね。

――長谷部さんは、まっちゃんイズムなんですね。

長谷部:そうなんです。

千葉:お前にまっちゃんイズムは無え!

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