SawanoHiroyuki[nZk]、多彩なゲストとともに迎えた2年ぶりソロ公演 ステージから伝わった“ライブ”への想い

SawanoHiroyuki[nZk]、2年ぶりソロ公演レポ

 作曲家・澤野弘之によるボーカルプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk] (サワノヒロユキヌジーク)が、10月9日にTOKYO DOME CITY HALLで約2年ぶりとなるソロライブ『SawanoHiroyuki[nZk] LIVE 2021』を開催した。コロナ禍を乗り越えての開催となったこのライブについてレポートしていく。

 澤野にとってSawanoHiroyuki[nZk] プロジェクトは大きな存在だ。アニメ・実写作品を問わず幅広く劇伴を手がける作曲家として活動しながら、自身の作風とポップソングの接地点を捉え、このプロジェクトを通し音楽の魅力を十全にリスナーへと示しつづけてきた。そもそも澤野は名義を問わず多くのライブをこなしてきており、その数も作曲家としては非常に多い部類に入るだろう。澤野にとって「ライブを披露する・熱を感じる」ことはそれだけ重要だということでもある。

 2020年3月ごろから発生したコロナ禍はそんな彼の活動に影を差しかねない出来事だったが、観客を入れないオンライン配信へとシフトし、ライブ活動を継続することになる。

 今年2月には1年以上ぶりとなる有観客で、自身のサウンドトラックをフィーチャーした『澤野弘之 LIVE【emU】2021』を開催したが、今回のライブはSawanoHiroyuki[nZk] としては2年4カ月ぶり(2019年3月6日-7日開催、SawanoHiroyuki[nZk] LIVE“R∃/MEMBER”)のライブとなった。イントロダクションとして「IV」が流れるなかで澤野含めたメンバーがステージに登場。この日のライブ序盤を担ったのは、これまでのプロジェクトに何度となく参加し、澤野楽曲にとってはお馴染みと言えようYosh(Survive Said The Prophet)とmizuki(UNIDOTS)の2人だ。

 1曲目の「FLAW (LESS)」からスタートし、「Barricades <MODv>」「mio MARE <2v_alk ver.>」とパワフルに歌い上げるYosh。ステージを縦横無尽に駆け巡って、全身全霊で歌声をぶつけていく。ロックバンド・Survive Said The Prophetのボーカルとして活動をする彼はライブ序盤の盛り上げ役として適任であろうし、彼の「この瞬間を楽しめ!」と言わんばかりのパフォーマンスには目を見張ってしまう。

 mizukiへとバトンを託し、「A/Z」「Avid」と重厚感あるサウンドから、彼女の硬質な歌声が伸びやかに突き抜けていく。プロジェクトの初期から参加し続け、ファンにとっても馴染み深いmizuki。そんな彼女が一言「立ちたかったら立とう」と観客に声をかけると、観客の多くが立ち上がり、大きな手拍子が徐々に生まれていく。

 SawanoHiroyuki[nZk]の音楽を久々に生で聴く観客も多かっただろう。このタイミングを境にして、どこか忘れかけていた感覚を思いだすように盛り上がっていくことになる。

 mizukiのバトンを受けたのは、ここ数年でプロジェクトに参加するようになったLaco(EOW)だ。この日はアニメ『86―エイティシックス―』劇中歌「THE ANSWER」も含めた4曲を披露。声の伸ばし方やファルセット、節回しなどにブラックミュージック〜R&Bの影響を感じさせるボーカルは、これまでのSawanoHiroyuki[nZk]にはなかったカラーであり、ロックやオーケストラ、エレクトロニカをバックボーンにしたこのプロジェクトにどのような色をもたらすのか楽しみだ。

 Lacoのあとに続いたのは、TielleとGemie。パワフルな歌声でこれまで多くの澤野楽曲を彩ってきた2人だが、同じ音程で歌うと不思議と2人の声質の個性が際立って聴こえ、「Bios-LaZaRus」「Felidae」を歌うと、大きな拍手が巻き起こる。MC中も澤野との軽妙なやりとりで笑いを誘っていくが、「VV-ALK」「Club ki3ε」と2ndアルバムからの選曲で会場が一気に熱気に満ちた。

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