ITZY、グローバルヒットの理由 BLACKPINKとTWICEの成功例を吸収したようなハイブリッドな魅力
K-POPシーンの新たな担い手として期待を集める5人組・ITZY(イッジ)の1stフルアルバム『CRAZY IN LOVE』が、米ビルボードのメインアルバムチャート「ビルボード200」で11位にランクインした。韓国発のガールズグループとしては、BLACKPINK(2位)、TWICE(6位)に次ぐ記録だそうだ。
K-POPのアーティストが海外のチャートに入るのはめずらしくなくなったが、ITZYの場合は本格的な世界進出はまだこれからのグループであり、しかも前作『GUESS WHO』が米ビルボード「ビルボード200」で初めてチャートイン(148位)したのが話題になってから、わずか5カ月後にしてこの大躍進である。K-POPは予期せぬことがよく起こるジャンルではあるものの、彼女たちの短期間での人気急上昇に驚きを隠せない。
その理由としてあげておきたいのは、サウンドカラーの若干の軌道修正だ。まずは『CRAZY IN LOVE』のトップを飾るリードトラック「LOCO」をプロデュースチーム・星たちの戦争(GALACTIKA)が手掛けているのに注目したい。同チームはITZYがステップアップするときに欠かせない存在で、デビューヒットとなった「DALLA DALLA(違う違う)」(2019年)や、グループ独自の魅力を確立させた「WANNABE」(2020年)など、キャリアにおいて重要な曲に関わってきたことで知られる。
「LOCO」も、エッジの利いたシンセベースをはじめ、ムーンバートンやトラップを入れるあたりは、いかにも星たちの戦争が好みそうな組み合わせといった印象だが、今回はさらにラテンフレーバーを加えている点が興味深い。曲名もラテン語ということからわかる通り、意図的にサウンドに取り入れたようである。
他にも注目の曲がいくつかある。アグレッシブなアレンジが耳を引く「#Twenty」と「B[OO]M-BOXX」は、音作りに多くの海外作家を起用。「LOCO」で示した路線を踏襲して制作したせいか、結果的に星たちの戦争の作風に接近した仕上がりだが、どちらの曲もトライバルな要素が散りばめられているのが新味となった感じだ。
歌詞も従来とは少しムードが違う。ITZYと言えば、2019年の登場以来、〈あなたの基準に私を合わせようとしないで〉(「DALLA DALLA」)や〈私の中にある dream/私は自信があるの〉(「ICY」)といったガールクラッシュをテーマにしたパワフルな歌をリリースし続けてきたが、本作はガーリーやナチュラルといった言葉がよく似合う作品が多く並ぶ。
中でも、〈私たちはみんな恋をしてる/この世界を知りたいの/私はラッキー/君もとてもラッキー〉といった明るいフレーズが新鮮に響く「Sooo LUCKY」、友達との旅行をテーマにした「Chillin' Chillin'」、たおやかな歌声が印象に残るバラード「Mirror」などは、いつもと違った姿を見せたいという思いが見え隠れする。