TrySail、花澤香菜、降幡 愛……新たな節目を迎えた女性声優の最新作を聴き解く

 10月に入り、秋アニメも放送され始め、劇場映画やNetflixを中心としたオリジナルアニメも数多く発表されている。また、来年以降の新作アニメ情報も徐々に解禁されており、2022年以降も多くの話題作が放送されそうだ。

 この9月にかけて、声優らの移籍が報じられたことも話題となった。特に水樹奈々が20年近く在籍したシグマ・セブンから退所、株式会社StarCrewへ移籍したトピックは大きな注目を集めた。今回選んだTrySail・花澤香菜・降幡 愛も節目を迎え、新たなスタートを切った3組だ。それぞれが新たに発表した作品を聴いていく。

 TrySailが4枚目のフルアルバム『Re Bon Voyage』を9月15日にリリースした。昨年はデビュー5周年を迎え、麻倉もも・雨宮天・夏川椎菜それぞれのソロ活動も活発化、この1年で3人とも数枚のシングルを発表してきた。さらに雨宮は音楽番組にソロ出演するなど、コロナ禍のタフな状況にあってもしっかりとした足跡を残すことにも成功した。

 大人数での活動が大幅に縮小された影響を受け、5周年を祝うはずだった記念ツアー『LAWSON presents TrySail 5th Anniversary Live “Go for a Sail”』が中止となり、代替イベントは有料オンラインライブに。今年3月6日・7日に開催された『LAWSON presents TrySail Live 2021 “Double the Cape”』は、TrySailにとって約2年ぶりとなるワンマンライブとなった。

 「Bon Voyage」とはフランス語で「よい旅を」と旅行者へ告げる挨拶だ。そこに「再び」を意味する「Re」をつけたタイトルが『Re Bon Voyage』だ。TrySailにとって「旅」とは、たびたび使われてきたテーマやイメージ。これまでに発売したアルバム『Sail Canvas』『TAILWIND』『TryAgain』や、3人にとって重要なつながりを持つアニメ『ハイスクール・フリート』(TOKYO MXほか)の楽曲「High Free Spirits」「Free Turn」だけでなく、「whiz」「adrenaline!!!」といった曲に至るまで、3人は“新たな旅路へ向かおうと走り出す”というテーマやイメージ性を大切に守ってきた。

 『Re Bon Voyage』という言葉には再び会えたファンたちに向けて、また自分たちに向けて、再スタートを告げる意味として刻まれている。ネガティブなムードを一気に吹き飛ばす勢いとバイタリティをも今作はしっかり封じ込めている。

 アイドルポップド真ん中なサウンドの表題曲「Re Bon Voyage」と、ポップパンクらしいギターリフに支えられた「Favorite Days」で思い切りスタートを切り、シングル曲「ごまかし」「誰が為に愛は鳴る」「うつろい」を挟みながら、ラップを使ったユニークな歌い回しが特徴の「マイハートリバイバル」など躍動感あるナンバーが目白押しだ。

TrySail『Re Bon Voyage』Music Video

 また、アルバム中盤に据えられた「モノラル」などスローテンポなナンバーは、麻倉や雨宮が好きな昭和アイドル・歌謡曲を現在のサウンドへとアップデートした楽曲のようにも聴こえる。マイナーキーを主にした憂いや陰影ある曲をも収録し、勢い一辺倒で押し切らない緩急自在の内容でリスナーを楽しませてくれる。

 花澤香菜がポニーキャニオン移籍後初となるシングル『Moonlight Magic』を9月29日にリリース。本人名義でのCDシングルとしては、2018年7月のシングル『大丈夫』以来、約3年ぶりとなる。

 リスタートという意味でも、1stシングルから継続的に彼女の音楽に関わってきた北川勝利を迎えた表題曲。細めの歌声で歌うメインメロディに、花澤のソフトな歌声であてがわれたドゥーワップ系のコーラスワークを始め、弦楽器の音色、ドラムのキック、ベースサウンドが盛り上げていく。まさに1stシングルの表題であった「星空☆ディスティネーション」や北川が以前率いていたRound Table feat.Nino「Let Me Be With You」を彷彿とさせる、煌めくエレクトロポップのようだ。

 本作で注目したいのは、「Moonlight Magic」とカップリング曲「港の見える丘」ともに花澤香菜が筆を取ったという歌詞だ。2012年にソロデビューしてからの経験が、彼女の表現欲求と幅を広げていき、それが今作の歌詞に反映されたのではないか。

花澤香菜「Moonlight Magic」Music Video

 大人な恋愛模様のなかで、徐々に恋心に振り回されそうになってしまう「Moonlight Magic」と、夏の日差しを別れた相手の笑顔に重ね合わせて回想してしまう「港の見える丘」の2曲は、彼女にとって「自分を新たに表現する」第一歩を示すものとなった。なお、2曲は中国語バージョンも収録されており、近年中国で大きな人気を博してきた彼女ならではアクションでもある。彼女の再出発、この先の航路がどのようになるか期待したいところだ。



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