-真天地開闢集団-ジグザグ、摩天楼オペラ、キズ……歌唱力を武器にした動画が続々 令和のV系シーンで注目したいバンド

摩天楼オペラ

 カバーといえば、摩天楼オペラのボーカル・苑も外せない。2007年に結成された摩天楼オペラは、スタイリッシュなビジュアルで本格派のメタルを鳴らす4ピース。キーボーディストを擁したシンフォニックなサウンドで、ヴィジュアル系らしい荘厳な世界観を創り上げると同時に、テクニシャン揃いのメンバーによる高い演奏力でも多くの支持を集めてきた。リーダーの苑も突き抜けるようなハイトーンボーカルを武器に、『THEカラオケ★バトル』にヴィジュアル系バンド代表として出演した経歴も。2018年にはソロプロジェクト・運命交差点を始動し、コロナ禍でファンと空間を共にできない状況から、昨年8月には個人でのYouTubeチャンネルも立ち上げた。以来、主にカバー歌唱動画を週1ペースで配信しており、今、最も精力的にカバー作品を発表しているヴィジュアル系バンドのボーカリストと言えるだろう。

 驚くべきは、彼がカバーしている楽曲ジャンルの幅広さだ。LUNA SEAやGLAYといったヴィジュアル系の先達に、HelloweenやDream Theaterなどのメタルバンドはもちろん、LiSAの「炎」のような誰もが知るヒット曲からレトロ歌謡の「かもめが翔んだ日」、さらにはボカロ曲「シャルル」まで。GRANRODEO、茅原実里、Kalafinaといったラインナップも、バンド名をアニメ『BLOOD+』のサブタイトルから取ってしまうほどアニメ好きな苑らしい。そして現在、最多再生回数を誇るのが、彼が音楽を始めたきっかけだというX JAPANの「Silent Jealousy」だ。凄まじくキーの高い原曲を半端ない再現度で歌いこなし、間奏の台詞まで入れ込んだリスペクトあふれるカバーは必聴。ハモリに十八番のビブラートも盛り込みながら圧巻のロングトーンまで、激走するサウンドにガッチリとかみ合った歌声の芯の強さは、シーン屈指の歌唱力と謳われるのも納得だ。

【Vocal Cover】Silent Jealousy - X JAPAN【原曲キー】V系Vocalが3声で歌ってみた

キズ

 結成4周年を迎える今年、来夢(Vo)がゲストボーカリストを迎えて、自身の楽曲を一発撮りでセッションするコラボレーション企画『一撃』を行ったキズも、卓越したボーカル力でファンを獲得し続けている。耳がやられそうなほどのラウドな重低音と、誰もが目を背けがちな人間の心の奥底を抉り出すようなディープな詞世界が魅力の4ピースバンドだが、そこにさらなる説得力を与えているのが来夢の歌声。圧倒的声量でバズーカのように放たれるボーカルは迫力満点で、聴いた者の心を鷲掴まずにはおかない。

 今春の『一撃-1st season-』ではMUCCの逹瑯やメリーのガラなど、来夢が敬愛する先輩ボーカリスト6人を招聘。ゲストの声質に合わせた巧みな選曲と、抜き差しならないボーカルバトルで観る者をあっと言わせた。続いて9月に公開された『一撃-2nd season-』では、ROTTENGRAFFTYのNOBUYAにTHE冠の冠徹弥、そして企画初の女性ボーカルとなる大森靖子など、予想外のメンバーも登場。攻撃的に甘い大森のキーと匹敵する高音域を畳みかける来夢のボーカルは途方もなく分厚く、マイクを挟んで互いに向き合う緊張感いっぱいのシチュエーションで、大森がヘッドホンをブッ飛ばすほどのテンション上昇を引き起こす。

大森靖子×来夢(キズ) / ヒューマンエラー キズ四周年企画【一撃ー2nd seasonー】

 まさに“殺るか殺られるか”のスリリングなコラボの一方、NOBUYAとは美しく艶やかなハモリで満足げな笑顔を見せたりと、曲により相手により多彩に表現を変える様は見事。それでいて強靭な喉から繰り出される歌声の安定感はすさまじく、歌い終えた冠徹弥が「すごい曲作るね、これ一人で歌ってるんや。バケモノ」と称賛したのも然もありなん。いかなる異種格闘技戦も闘い抜く、屈強かつしなやかなボーカル力に今後も注目だ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる