香取慎吾は今も「アイドル」を更新し続けるーー変化する時代で変わることのない、皆を笑顔にする温かなエネルギー

香取慎吾
香取慎吾

 香取慎吾による絵が雑誌『週刊文春WOMAN』の表紙を飾ったのは、今月で計11枚を数える。自身のInstagramにもアップされた最新のvol.11(2021秋号)の表紙画のタイトルは「不要不急」。これまでライブペイントのように躍動的で情熱的な作品を見せてくれた香取の作品において、今回は円錐形の図形が並ぶ整然とした雰囲気が新鮮だ。

 「これ、一つ一つがスポットライトなんです」、香取は雑誌内のインタビューにて、今回の表紙絵についてそう語った。“スポットライト“という言葉が本来持つエネルギッシュなイメージと、いつもよりクールに感じる作風のギャップが興味深い。

 「不要不急」が叫ばれる中で、混乱を極めたエンタメ業界。香取自身も、その大きなうねりに翻弄された1人だ。今年4月に明治座で行なった単独ライブは3日間が中止に(千秋楽は無観客による生配信で開催)。一方で、7月の舞台『にほんの歴史』は緊急事態宣言下でも有観客で上演することができた。4月よりも7月の方が感染者数だけを見れば多かった時期にも関わらず、だ。

 現場の数を重ねて、少しずつ対策方法が見えてきたということもある。だが、依然として何がOKで、何がNGなのか。「これが正解だ」と明確なラインを誰も示せないモヤモヤが、今もなお続いている。そんな中でいくつもあったはずのスポットライトがなくなった残念さ、手探りで準備を進め幕を開ける心もとなさが、このポツポツと浮かび上がったスポットライトになっているのだと伝わってくる。

 
 
 
 
 
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 特に注目したいのは、左下の色が塗られていないスポットライト。香取は「塗るか塗らないか、ちょっと迷ったんです。“この空白、どうする?“って。最終的にその問いかけ自体をここに残しました」と、その理由を語った。エンタメ業界のみならず、私たち一人ひとりもそれぞれの判断を求められ、どう行動していくかが試されている。そんな日々に少々疲れ、誰がこんな世界にしたのかと嘆きたくなる気持ちも漂っているのを感じる。しかし、誰かが色をつけてくれるだろうと待ったり、誰が悪者なのかと探し出したりせず、自分自身がそのスポットライトに当たる主役だと思って行動していこう。そんなメッセージを私たちに投げかけてくれる作品なのだ。

 香取の表現するものには、いつだって私たちの顔を上げさせる何かがある。それはわかりやすいポジティブなメッセージのときもあれば、ネガティブな感情を生み出さない配慮という形のときも……。「僕自身そういう感情もなくはないし、みなさんがそういう思いを抱えているときだってあるでしょう」という言葉に、彼が自覚的にそうした言動を選んでいることがわかる。

 テレビの生放送など、時間的な制限のある中で「これが言いたかったんだろう、というのが伝わるような言い方っていうのもある」とも。Twitterの文字数などもそう。絵画という1枚のキャンパスで何を描くのかもそうだ。表現には、いつだって制限がある。その中で伝えたいことを、誤解なく発信するのは簡単なことではない。香取は、長年の経験からその方法をつかむことができたのは、原点が「アイドル」だからだと自己分析する。

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