『ユイカ』「好きだから。」アジア各国でなぜヒット? TikTok発女子高生シンガーソングライターが歌う“両片想いソング”の普遍性
この人気は日本国内だけに止まらず、海外でも徐々に人気を博しはじめている。各国のバイラルチャートでは8月21日付けでタイで3位、シンガポールで13位、マレーシアで17位、インドネシアで19位と上位にランクインしており、台湾や香港では1位を獲得している。YouTubeにアップした「好きだから。」の動画コメント欄には8月21日時点で8,500件ほどのコメントが投稿されているが、英語や中国語、韓国語など様々な言語で楽曲に対する感想が寄せられている。実はこの動画にはそれらの言語による字幕が用意されており、歌声やサウンドによる楽曲の印象だけでなく、歌詞の内容も多くの国の人に届けられるようになっていた。学生ならではの恋愛模様を歌うこの曲を聴いて、様々な国のリスナーが同じように共感し、胸をときめかせたり、自身の恋愛についてコメントを残したりしているのはとても興味深い。
一方で、これらの国は海外の中でも特に日本の音楽が評価されている国でもある。台湾や香港は、日本のアーティストが海外公演をする際の定番の国であり、J-POPの人気が90年代以前から高い。またタイでは国民的歌手であるSTAMPが、2020年12月に自身が選曲するJ-POPのカバー歌唱企画を始動させている。東南アジア最大規模のJ-POPカルチャーイベント「AFA」は、シンガポールに本社があるSOZOが主催会社の一つである。つまりそれらの国でJ-POPが受け入れられる土壌が整っていたということも今回のヒットの大きな要因の一つだろう。
『ユイカ』の音楽性はキャッチーで美しいメロディと共感を呼ぶ歌詞が特徴で、繊細な声質と優しい歌唱が魅力的である。これは王道のJ-POPの特徴とも近い。そんな音楽がSNSを通じて世界に発信されたことで海外にまで届き、それが数字という結果に表れたのだ。丁寧に作られた音楽は国を超えて支持される。この勢いはまだ止まることはないだろう。現時点で「好きだから。」の1曲しかリリースしていないのにもかかわらず、この注目度の高さは驚異的だ。活動を本格化した時、『ユイカ』はさらに高い評価と人気を獲得するだろう。