アミューズはIP開発によって新規ビジネスをどう育てる? 「コンテンツ開発部」担当役員が担う新たな試み

アジアのマーケット、欧米のマーケットも見据えたIP開発

ーーコンテンツ開発部には新人開発・育成のセクションもあり、「DIプロジェクト」という新たな試みもスタートしました。

山内:音楽をはじめとするエンターテインメントもデジタルの時代に移行していくなかで、例えば様々なサブスクのプラットフォームに作品を配信していく、といった取り組みは、新人アーティストに対しても多くの会社さんがおやりになっている状況下で、DIプロジェクトを始めるにあたっての差別化として、アミューズでマネジメントを経験してきたスタッフがそれぞれのアーティストと向き合い、どんな目的やプランで活動をして成長を目指すのか、SNSとどう向き合うか、さらには楽曲の在り方であったり戦略をマネジメントとは違う関係値の中でサポートしていき、のちにアミューズの契約アーティストとしてより良い将来像を描いていくというためのプロジェクトです。

ーー従来型のマネジメント契約ではないということですね。

山内:そうですね。あくまで、配信やデジタルマーケティングのお手伝いをしながら、お互いの関係値を築きマネジメントにつなげていく。というのが軸ですので、マネジメント経験者だけでなく、YouTubeやサブスク、SNSなどデジタル系のセクションのスタッフのアドバイスも複合的に取り入れています。デジタル配信のサービスプラットフォームだけでも相当な数がありますが、DIプロジェクトでは、アーティストの数を増やしすぎず、一定量に絞り込み、少数精鋭のスタッフできちんと向き合える範囲で、アーティストがネクストステップに行けるように丁寧に向き合いたいと考えています。コロナ禍において、DIプロジェクトで印象的だったのは、デジタル化の醍醐味を感じると言いますか、DI契約のアーティストで、今年SpotifyのRADER Early Noiseに選出されたカメレオン・ライム・ウーピーパイは、海外から直接、DMで楽曲制作やコラボのオファーが届いていて、コロナ禍においてもボーダレスにオンラインで海外のアーティストとのコライトなどの交流を進めており、こういった時代なんだなと改めて刺激になりました。DIプロジェクトで、デジタルを中心にものを考える方向にシフトしたときに、こうやってオンラインで世界と繋がれるんだと。日本人と海外のアーティストが一緒に曲を作る、ということが当たり前の時代になったことを実感しました。

ーーなるほど。コンテンツ開発部ではもうひとつ、「声優」部門が重要なポイントになると聞きました。

山内:もともと声優部門自体は、「プロデュース部」というマネジメントセクションにありましたが、コンテンツ開発部との親和性が非常に高いということもあり、同じグループでの動きになっています。アニメやゲームなどのコンテンツが主戦場でもあるので相性がよく、シナジーも大きいだろうと。そこで、今回のタイミングでコンテンツ開発部の中に声優プロデュース室を迎え一緒にやっていくことになりました。同じ部署内にあることで、所属声優が出演できるような作品も増やしていきたいと思っていますし、通常の声の仕事に加えて、YOU TUBEでアミューズ所属の声優の面々が取り組む「AMUSE VOICE ACTORS CHANNEL」のように、アーティストの内面や個性を見せる場や、アーティスト同志の接点の場、ファンとの交流の場、などを設けていけるようになればと思っています。

ーーコンテンツ開発部をどんな場所にしていきたいですか。

山内:会社全体で、社員・アーティストが刺激になるようなコンテンツを作ることができるようにと思っていますし。面白い場所には、社内外の作る意志のある方々が集まってきて、そこにいい企画が生まれてくる。そんな場が作っていければと思っています。そして、良い作品がアウトプットされていき、さらにたくさんの人が集まってくる。そのようなチーム作りを現在進行形でやっていますし、さらに仲間を増やしていきたいと思っています。

ーー日本だけでなく、コンテンツは海外にもたくさん出ていますしこれからが楽しみな部署ですね。

山内: 長く海外子会社にいたこともあり、IP開発においては、国内に止まらずアジアのマーケット、欧米のマーケットも当然見据えていきたいと思っています。コンテンツ開発や、新人開発に関しては、日本はもちろんですが、できる限りグローバルを視野に入れていくことは必要だと思っていますので、アミューズ上海、台湾、韓国、USAなど、拠点メンバーとの情報交換は密にしています。海外の拠点での取り組みも刺激になりますし、課外でも日々様々な企画の開発やマーケティングに取り組んでいます。各地のマーケットと長くむき会ってきた海外拠点があること、多くの海外パートナーと組めることも、アミューズのコンテンツ作りにとっての強みだと思っています。

ーーあらためて、山内さんの海外事業部での経験も伺えますか。

山内:アミューズ上海は立ち上げから9年間、これまで広くアジアに関する海外事業をやっていました。はじめは、中国のネットプラットフォームで弊社の深夜食堂のプロデューサーをやっていた人間を中心に、日本と中国のプロデューサー、監督陣で中国の放送用の日中共同制作のドラマシリーズを2シーズン作ったり。実写の映画も作る機会もいただきました。

 ライブの方では、最初は、ライブハウスでやっていたことが、アニメを中心とした日本のコンテンツの海外進出が進む中で、3000、5000、1万人と徐々に規模の大きなライブができるようになったり、1万人規模の会場で日本人のアーティストが出演できる中国メディアとのアニソンフェスを2014年からやっていたのですが、回を重ねるごとに、日本人アーティストが海外に出ていくチャンスがあるということが徐々に認識される機会が増えて、そのイベントに止まらず、いろんな方が海外でも活動をしたいというお話をいただくようになりました。

ーーアジア発の音楽としては、韓国が世界市場を席巻している状況ですが、日本のコンテンツもやり方次第で世界進出は可能だと思いますか?

山内:もちろん、そうしていくべきだと強く思っています。コロナ前から、アミューズのアーティストも、様々な国の方たちとお仕事をさせてもらったり国境を超えたファンと向き合うという場が増えてきていました。そんななかで経験やネットワークもできましたし、今後のブレイクポイントを必ず作っていかないと、と考えています。日本人が作る音楽の在り方とか、日本人が作るコンテンツの在り方とか、自分たちのアイデンティティをしっかり持つことも一つの重要なアプローチだと思いますし、国境を超えた共有できる感覚をついたもの作りにもチャンスはあると思います。あとはそれをどう届けるか、マーケティングももちろんありますが、やはり価値観の違いをみんな実感しながら、「それでは、どう作っていくのがよいか」という思考とトライを重ねることが重要になってくる。時間はあまりかけていられませんが、日本のコンテンツが今よりも海外で歓迎される機会を作っていくことも、アミューズなりの取り組みとして重要なことと考えています。

STATION IDOL LATCH!
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DIプロジェクト
https://www.amuse.co.jp/topics/2021/04/di.html

株式会社アミューズ
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