Silk Sonic=ブルーノ・マーズ&アンダーソン・パークによる高揚感 ブラックカルチャーと接続する“スケート”をテーマにした意義
ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによる夢のコラボレーションユニット・Silk Sonicが、7月30日に待望の2ndシングル曲「Skate」を発表した。全米ビルボードチャートで首位を獲得し、世界30カ国以上でチャートインしたデビューシングル曲「Leave The Door Open」より4カ月ぶりとなる本楽曲は、70年代スウィートソウルへのオマージュだったバラードから一転、夏にぴったりの爽やかなアップテンポナンバーとなった。
Silk Sonicが描き出す70年代サウンドへの憧憬
テンポこそ違えどSilk Sonicが描き出すサウンドは前作同様に70年代のソウル、とりわけThe Stylisticsやテディ・ペンダーグラスなどに代表されるようなフィリー・ソウルからの影響が強い。ブルーノ・マーズ自身が公開しているSpotify上のプレイリスト「Sounds That Inspired Silk Sonic」では、フィリー・ソウルに限定こそしてはいないが、同年代の定番ソウル・クラシックがズラリと並べられており、Silk Sonicのプロジェクトがその影響下にあることを明らかにしている。
夢見心地なストリングスに、解放的にダンスを誘うドラムとコンガのリズム。「晴れた日の空の下、プールサイドやビーチでバーベーキューしながらSilk Sonicを聴いてほしい」(※1)とブルーノ・マーズ本人が語るように、ひたすらポジティブな高揚感が楽曲全体を包む。アンダーソン・パークのハスキーな歌声と、ブルーノ・マーズの突き抜けるようなハイトーンボイスはここでも抜群の相性だ。
プロデュースは前作同様にブルーノ・マーズとD’Mileの共作。数年前まではR&Bリスナーの間でのみ話題に登っていたD’Mileも、H.E.R.「Fight For You」でのグラミー賞受賞を通じて大きく名前が知られるようになった。嵐「Whenever You Call」も同コンビによる作品だ。ここ最近でも多忙を極めるD’Mileは、日系アメリカ人シンガーのジョイス・ライスや盟友 ラッキー・デイなど、現行R&Bを担うアーティストたちの作品でシーンの底上げに尽力し続けており、一連のシングル群を手がけているインディア・ショーンも今年要注目のシンガーのひとりだ。
また共同ソングライターには、サンダーキャットやフライング・ロータスらとも共演する女性ドラマー&キーボーディストのユニット DOMi & JD Beck(アンダーソン・パークは彼女たちのメンターとしても知られる)、ブルーノ・マーズ『24K Magic』でも多数の曲でペンを握ったジェームス・フォントルロイも名を連ね、Silk Sonicの両者が長年信頼を寄せるクリエイターたちがガッチリと周りを支えていることがわかる。
“恥ずかしがらないで、いいから俺の手を握ってみなよ、ギュッと/こっちへ滑ってきな”とロマンチックに求愛する「Skate」を聴いて、「なんでラブソングにローラースケート?」とそのイメージが結びつかない人も多いかもしれない。しかし、アメリカに住む、特にアフリカ系アメリカ人にとってのローラースケートリンクは、スケートをする場所という意義に留まらず、音楽を扱うダンスフロアコミュニティとして機能してきた。