Have a Nice Day!の真髄に触れたロマンティックな一夜 未来への余韻が響いた最新ツアー初日を観て

ハバナイの真髄に触れたロマンティックな一夜

 5月にリリースしたアルバム『DYSTOPIA ROMANCE 2021』を引っさげたHave a Nice Day!(以下、ハバナイ)の東名阪ツアー初日が、6月25日、東京・EX THEATER ROPPONGIで開催された。緊急事態宣言の発令があり、今年に入ってからライブの中止を余儀なくされていただけに、ハバナイにとっても、そしてファンにとっても待望のステージだ。とはいっても、コロナ禍でのライブということでモッシュやシンガロングといったハバナイを象徴する汗だくのライブはできないが、彼らの音楽は閉塞感で息苦しく、ペシミスティックな日々を送る人の心を再燃させるアンセムとして高らかに鳴り響いた。改めて音楽のエネルギーに触れ、また音楽のもつパワーを信じるハバナイの真髄に触れる、ロマンティックな一夜だったと感じる。

 SEが流れ観客の拍手に迎えられて、中村むつお(Gt)、遊佐春菜(Key)、GOTO(Dr)、そして浅見北斗(Vo)が登場。まだ拍手が鳴り止まぬ中浅見は、「みなさま、ようこそおいでくださった。はじめたいと思います」とうやうやしく挨拶をすると「わたしの名はブルー」でライブはスタートした。サビに向かって駆け上がっていく高揚感にのせてシンガロングしたい気持ちを抑えるように、フロアでは思い思いにコブシを掲げ、心のうちで大合唱するような姿が見える。中村と遊佐のコーラスで一気に会場が多幸感で包まれていくアンセミックな「Smells Like Teenage Riot」では、一斉にジャンプが起こった。〈手に入らないものは何一つない夜に〉〈誰もが信じない奇跡だけを待ち続ける〉(「Smells Like Teenage Riot」)と浅見が乾いたボーカルで歌うフレーズが、キラキラとした飛沫を飛ばすダンスビートのなか、フロアをまっすぐに射抜いていく。序盤から、バンドアンサンブルがクレッシェンドしていき、観客のワクワクを先導する。とくに「RIGHT HERE RIGHT NOW」では、インプロ的な後半のパートをたっぷりと魅せ、ヘヴィなビートとノイズでプログレッシブに展開していきながら会場の空気を掌握していく。ライブでこそのダイナミズム、そしてこの大音量が肌をビリビリと刺激するような迫力は何者にも代えがたい。その音の快楽に、観客は放心状態だ。

 中盤の「F/A/C/E」では、浅見はドラマーの前で観客に背を向け歌う。時を刻むようなビートに乗せ、猫背気味になって淡々と歌うその姿は、やがて開けるだろう世界への希望を持ちながらも、厭世的な気分にがんじがらめになっている今の状況と重なる。そこから「みんなどこ行く」へと、シニカルさも湛えながらゆっくりと心の火を起こしていく感覚もいい。享楽的なダンスミュージックとナードで内省的なロックンロールの衝突が生んだハバナイの音楽は、とにかく優しい。不器用で、日常や周囲と不協和音を奏でるばかりの毎日をも、愛おしく輝かせてくれる。

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