LACCO TOWER 松川ケイスケと真一ジェット、ユニット発足の経緯 “松川ジェット”で表現した昭和~平成の女性たちの生き様

松川ジェットが歌で表現する”女性の生き方”

 LACCO TOWERの松川ケイスケ(Vo)と真一ジェット(Key)によるユニット“松川ジェット”。彼らが7月28日にメジャーデビューアルバム『彼女の出来事』をリリースした。昭和から平成にかけて活躍した女性シンガーの名曲をピックアップした本作は、松川のパワフルな歌唱力と真一の多彩なアレンジ力が光る力作に仕上がった。インタビューでは松川ジェットの音楽的ルーツ&発足の経緯、充実感の塊だったと明かす制作について話を聞いた。(編集部)

カバーアルバム制作の奥深さ

ーー松川ジェットとしてメジャーデビューということで、LACCO TOWERでアルバムを作ってインタビューを受けるのとはまた心境が違うと思うんですが。

松川ケイスケ(以下、松川):自分たちのオリジナル曲ではなく、名曲のカバーですからね。しかも、これが松川ジェットとして受ける初めてのインタビューなので、すごく新鮮です。

松川ケイスケ

真一ジェット(以下、真一):LACCO TOWERの場合、僕がまずメインで作曲をするので、曲のイメージを付けやすいんですけど、カバーはすでに存在しているものじゃないですか。となると、“もし自分が作曲者だったらこの曲にどんなイメージを持っていただろう?”ってところから考えてみたり。初めてのことだらけでしたね。制作を通して、かなり成長できたんじゃないかなと思います。

真一ジェット

ーースピンオフプロジェクトとはいえ、リラックスモードというわけでもなく、むしろ力作が完成しましたね。

松川:もともと“松川ケイスケと真一ジェット”の名義でライブ活動はしていたから、その延長線上にあるような作品になると思ってたんですけど、いざ始まってみるとね(笑)。これはめっちゃ気合を入れてやらないとヤバいな、みたいな感じでどんどんのめり込んでいきました。

真一:カバーアルバムの大変さが作ってみてわかりました。決してナメてたわけじゃないんですけど、想像していたよりも奥が深い試みで。驚いたのは、自分たちの曲じゃないにもかかわらず、完成したときにものすごく充実感があったことですね。ケイスケの歌声と僕のアレンジ、そしてオリジナルの曲と歌手のアプローチ、そのすべてを混ぜ合わせて初めて松川ジェットとしての形が生まれるような。バンドで新曲を作って出す以上にいろんな過程が存在するんだなって。今回の制作は本当に充実感の塊だったなと思います。

ーーLACCO TOWERのメンバーに音源を聴かせたりはしたんですか?

松川:あー、どうなんだろう。みんな聴いたのかな?

真一:「聴いてください」とは言ってないけど、たぶん聴いてくれていると思います。

松川:大ちゃん(細川大介/Gt)には、ディレクター的な立ち位置でレコーディングも同席してもらったんですよ。啓示(塩崎啓示/Ba)とまーちゃん(重田雅俊/Dr)はどうなんですかねえ。感想を聞いてみたいな。

真一:もしかしたら、僕たちがメジャーデビューするのも知らないかもしれない(笑)。

松川ジェット発足の経緯

ーー(笑)。では、松川ケイスケと真一ジェット名義で活動してきたこのユニットが最初はどんなふうに始まったのかをあらためて聞かせてください。

松川:スタートしたのは、真一がまだメンバーに加入していない頃、LACCO TOWERの初代ギタリストが脱退するタイミングでした。2007年かな。自分たちは毎年7月にバンドの周年イベントをやっているんですけど、その前の春くらいにギターが抜けるという話になってしまって。でも、僕はどうにかしてイベントを開催したかったんですよね。で、専門学校の同級生だった真一に声をかけたんです。バンドが無理ならボーカルとピアノだけでやってみようと思って、当時住んでいた中板橋の踏切の前で電話しました。

ーー鮮明に覚えているんですね。

松川:「バンドがこういう状況だから、2人で周年イベントをやらせてくれんやろうか?」って聞いたら、ちょうどそのときに電車が目の前をガーッと通りまして。真一は滑舌がすごく悪いんで何を言ってるかわからなかったけど、それでも僕はたぶん大丈夫だろうなと思ったんですよね。

真一:確かに、本番はなんとかなったけどね(笑)。

松川:あのとき、なんて言ってたの? ガタンゴトンの裏で。

真一:そりゃあ「俺もやりたいと思ってたよ」ですよ!

ーー真一さんは当時、LACCO TOWERのサポートメンバーではあったんですか?

真一:いや、レコーディングやライブにちょこっと参加していたくらいですね。バンドにガッツリ関わっていくきっかけになったのがそのイベントで。

松川:周年イベントで演奏したのは、LACCO TOWERの曲だったよね。その後、徐々に2人でライブをするようになって、僕が個人的に大好きな歌謡曲のカバーがレパートリーに入っていった感じです。今回のアルバムには収録されてないですけど、チューリップ、はっぴいえんど、大瀧詠一さん、長渕剛さんあたりも、自分のルーツにあります。

真一:僕のルーツはTHE BLUE HEARTSで、歌謡曲をカバーするのは逆にすごく新鮮でした。アルバムでも「人形の家」(弘田三枝子)は初めて聴く曲だったり。「悪女」(中島みゆき)も曲名は知ってたけど、これまでちゃんと向き合ったことはなかった。ただ、LACCO TOWERの前に今のドラムやベースといっしょにやっていたバンドが和風ハードコアみたいなテイストだったので、和メロには馴染みがあったんです。

松川:ちなみに、アルバムの収録曲はほとんどまだライブでやったことがないんですよ。LACCO TOWERの主催フェス『I ROCKS 20&21』へ出たときに、「真赤な太陽」(美空ひばり)をカバーしたくらいで。

ーー今回こうしてメジャーデビューに至った経緯というのは?

松川:コロナ禍で何かと事態が変わったんだよね?

真一:うん。この状況じゃなければ、松川ジェットでメジャーデビューする話はなかったかもしれません。2020年の6月に、ケイスケと僕でオンラインライブをやったんですよ。それを観たウチの事務所のスタッフがすごくいい印象を持ったみたいで。

松川:かれこれ長くやってるんですけどね(笑)。

真一:ようやく“これは……!”と思ってくれたっていう(笑)。そこからどんどん話が広がっていきました。

松川:ライブだけじゃなくて作品をリリースしてみたい気持ちは心の片隅にずっとありましたからね。コロナ禍で当初の予定がどんどん覆っていく中、“自分たちの武器ってなんだろう?”とバンドメンバー全員で活動を見直す時間ができたのも大きいと思います。

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