King & Prince、アルバム『Re:Sense』に詰め込まれたグループの多才さ ライター3氏が収録曲を徹底解説
5月にリリースした「Magic Touch」で、音楽面・ダンスパフォーマンスともに本格的に海外仕様へとモデルチェンジした姿を披露したKing & Prince。グループの行く末に大きな注目が集まる中、彼らにとって通算3枚目となるオリジナルアルバム『Re:Sense』がリリースされた。果たして、現在の彼らが作り出す音楽はどのようなものになっているのか。アルバムタイトルに込められた意味の通り“Real”な“Sence”が随所に感じられるこの作品を、森朋之氏、ノイ村氏による全曲レビュー、荻原梓氏による作品評といった2つの軸から徹底解説する。(編集部)
アルバム『Re:Sense』全曲レビュー
01. 僕らのGreat Journey
キラキラとした光を放つシンセに導かれた1曲目は、ど真ん中のアイドルポップ〜オーセンティックなファンクを融合させたナンバー。アレンジには60年代のモータウンのテイストも反映され、古き良き音楽との繋がりも感じさせる。大衆音楽の黄金時代の遺産を取り入れながら、新しいポップミュージックとして再構築する手法は、ジャニーズに脈々と受け継がれる手法。King & Princeも、その系譜の上に存在していることを改めて実感できる楽曲だ。(森朋之)
壮大な本作の始まりを告げるに相応しい、未だ見ぬ世界への旅立ちをテーマに据えた、華やかなブラスとカッティングギターが彩るパーティー感満載のファンクチューン。初回限定盤Aのリード曲として本作を代表する楽曲の一つとなっている。大きな変化を迎えようとしている彼らが感じる未来へのワクワク感が楽曲の持つポジティブな雰囲気をさらに高めており、どこか慌ただしさを感じさせるようなコミカルな合いの手や軽快なコーラスが無邪気な楽しさを添える一曲だ。一方で、グルーヴィな演奏と絶妙に絡み合う彼らのパフォーマンススキルの高さにも唸らされる。(ノイ村)
02. ユメラブ (You, Me, Love)
冒頭は華やかでクラシカルなストリングス。次の瞬間、心地よい疾走感をたたえたビートが響き、力強いホーンセクションとともにリスナーの心と身体を解放してくれる。抑制を効かせた平歌、夏の太陽の日差しを感じさせるサビのメロディのコントラストも絶妙。落ちサビから大サビに向かう展開もドラマティックで、“これぞアイドルソング!”と快哉を叫びたくなる質の高い楽曲に仕上がっている。メンバーの爽やかな笑顔を想起させるボーカリゼーションも魅力的。(森朋之)
真夏のビーチで繰り広げられる青春感満載の恋模様が描かれた甘酸っぱい一曲。疾走感満載のアレンジに勢いを加速させるエモーショナルなコーラスワーク、Aメロからコンサート会場中の"PPPH(合いの手)"が目に浮かぶようなBメロのリズムチェンジ、そして超キャッチーなメロディが炸裂するサビへと突入していく、王道ド真ん中を射抜く最高のアイドルポップスだ。もはや風格すら感じさせるほどの堂々たるパフォーマンスに圧倒される。(ノイ村)
03. BUBBLES & TROUBLES
ピアノとキックを正確にシンクロさせたトラックがもたらすのは、瑞々しい旋律と快楽的なビート。韻の気持ち良さを重視したリリック、リズムと有機的に絡み合うボーカルを含め、ダンスミュージックとしての機能と“歌”の魅力をバランスよく共存させた楽曲だ。サビのパートには力強いホーンの音色、シャープなギターカッティングなどを取り入れ、大らかにして壮大な世界観を表現。ライブでの一体感を想起させる効果も抜群だ。(森朋之)
前曲から一転して、音数を絞ったビートに重きを置いたトラックが印象的な楽曲。しっかりとリズムを刻みながら歌い上げるサビなど、随所に90’s~00’sのヒップホップからの影響を色濃く感じることができ、Bメロでは彼らのラップパートも用意されている。こういったタイプの楽曲としては比較的テンポが速いように感じられるが、だからこそ、彼らのほとばしる若さと未来への高まる感情をより強く感じることが出来る。(ノイ村)
04. Magic Touch
現在進行形のUSヒップホップの潮流に根差したトラック、全編英語詞によるリリック。海外志向を前面に押し出すことで、King & Princeの音楽性を大きく押し広げたエポックメイキングな楽曲だ。しなやかなで厚みのある低音、骨太なベースラインと煌びやかなシンセのバランスも絶品で、日本発のグローバルポップとしての(海外のトップアーティストにも見劣りしない)クオリティを備えている。ボーカルの音量を抑えたミックスも印象的。(森朋之)
全編英語詞、大胆にトラップを取り入れた海外のメインストリームの潮流を汲んだ地続きのトラック、そして色気に溢れた歌声で魅せる楽曲構造という、リリース時点では衝撃をも感じさせた楽曲。本作では「BUBBLES & TROUBLES」からの流れで聴くことで、トラックに対して、リラックスしながら緩やかに乗るスタイルから、精緻かつタイトに合わせていくスタイルへ変貌するコントラストがより明確に感じられ、彼らのリズムに対するアプローチの幅の広さをより一層に楽しめる。まさにアルバムならではの魅力を発揮しているように思う。(ノイ村)
05. Lost in Love (永瀬廉、髙橋海人、岸優太)
切なくも美しい鍵盤のフレーズ、シンプルな4つ打ちを軸にしたトラック、流麗なストリングスが一つになったミディアムチューン。自然に身体を揺らせるBPM、ゆったりと流れるメロディラインを組み合わせることで、ダンストラックとしての要素とバラード的な雰囲気を同時に味わえる楽曲に仕立てている。徐々に高揚感を上げていくビートを的確に捉えながら、痛々しい失恋を描いた歌を表現する3人のボーカルも素晴らしい。(森朋之)
本作には2組のユニットが互いの楽曲をプロデュースするという企画曲が2曲収録されており、その1曲目が平野紫耀、神宮寺勇太プロデュースによる「Lost in Love」。企画ならではの異彩を放つ楽曲になるかと思いきや、こちらは失恋による喪失感を切なくも美しく描き出した王道のポップソングに仕上がっている。儚げなピアノとドラマティックなストリングスの音色が印象的なトラックの中で、低音からファルセットまで様々な声色を使い分けながら悲しみを表現する彼らのボーカルの表現力を堪能することができる。聴きどころはやはり最後のサビ前に用意されたとあるパートだろう。(ノイ村)
06. サマーデイズ
エッジの効いたギターフレーズ、〈Shake it Shake it〉というコーラスによって、アルバムは一気に夏のムードへ。基調になっているのは、生々しいライブ感をたたえたバンドサウンドとアッパーな空気を増幅させる管楽器。暑い日差しを想起させるメロディに身を任せるように、どこまでも奔放な歌声を響かせるメンバーのパフォーマンスも愛おしい。ドラムのキックを強調した落ちサビなど、アレンジの細部にも注目してほしい。(森朋之)
「ユメラブ (You, Me, Love)」と同様に真夏の恋模様を全力で盛り上げる楽曲。王道アイドルポップスの同楽曲に対して、こちらは2010年代の邦楽ロックシーンを彷彿とさせる、4つ打ちのドラムと激しいギターリフが徹底的に場を盛り上げるロックテイストの楽曲となっており、賑やかな掛け声が場をさらに加熱させていく。キメ満載のアレンジや、ラストサビ前の手拍子で盛り上げるパート、キャッチーなメロディをこれでもかと詰め込んだサビと、楽しさがこれでもかと詰め込まれた文句なしのキラーチューンだ。(ノイ村)
07. 幸せがよく似合うひと
軽快なドラムのビートと〈LOVE&PEACE&SMLE&JOY!!〉というコーラスが聴こえてきた瞬間、ポジティブな感情が大きく広がっていく。シャッフル系の飛び跳ねるリズム、ホンキートンク的なピアノ、ソウルフルな手触りのギターなどを配したオーガニックな編曲は、「紅蓮華」(LiSA)のアレンジを手がけた江口亮が担当。“君は幸せが良く似合う”というメッセージを含んだ歌詞、朗らかなメンバーの歌声をしっかりと際立たせている。(森朋之)
「サマーデイズ」が最近の邦楽ロックを彷彿とさせる楽曲だったのに対して、続く本楽曲はどこか懐かしさを感じさせるような古き良きUKロックを彷彿とさせるようなアレンジの軽快な楽曲に仕上がっており、繰り返される〈LOVE&PEACE&SMILE&JOY!!〉というフレーズと相まって、本作の中でも特にポジティブな印象を与える楽曲だ。彼らの丁寧に優しく包み込むような歌声がこれ以上ないくらいの安心感を与えてくれる。(ノイ村)