浦島坂田船、K-POPアルバムに大差つけてチャート首位 スリリングなカウンターであり続けるためには課題も?

 さて、5年前にメジャーデビューし、年に1枚のペースでアルバムを出している彼ら。作家陣はどんどん豪華になっていき、今回はWiennersの玉屋2060%、WHITE JAMのSHIROSE、FLOWのTAKEなど現役で活躍するバンドマンも参加。もちろん、まふまふ、halyosy、DECO*27など、ニコ動界隈から生まれた才能も毎度のように起用されています。全18曲、1時間9分。CD全盛期のようなフルボリューム。時代の潮流を考えれば「無謀だ」となるのが普通だと思いますが、たっぷりの特典をつけ、実際バカ売れするパッケージになったのだから、お見事、としか言いようがないですね。

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 ただ、申し訳ないですが、私はこのアルバムを全然楽しめませんでした。初のラップに挑戦した「PIRATES A GO GO」など新機軸もあるとはいえ、全体にスリルが乏しい。遊びが感じられない。気恥ずかしいほどの青春ラブソング、落ち着いたしっとりバラード、あえてラテンなフレーバーを散らした歌謡曲など、過去のアイドルグループがすでにやってきた曲が多いように思えるのです。

 ビジネスなんて考えていなかった。素人だったから最高のカウンターになれた。そういう出発点を考えると、今はプロとしての自覚や余裕が生まれたのかもしれません。ファンへの感謝の気持ち、そして責任も日々出てくるでしょう。ただ、それが行き過ぎると大人に仕込まれた意識の高いアイドルと一緒になってしまうわけで。カウンターだったものがいずれ保守化するのはいつの時代も繰り返す話ですが、なんだかちょっと複雑な気分です。

■石井恵梨子
1977年石川県生まれ。投稿をきっかけに、97年より音楽雑誌に執筆活動を開始。パンク/ラウドロックを好む傍ら、ヒットチャート観察も趣味。現在「音楽と人」「SPA!」などに寄稿。

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