クレナズム×クボタカイから映像作家 リチャード、ダンサー yurinasiaまで…‥カルチャーの複合で盛り上がる福岡シーンの今
yonawo、神はサイコロを振らない、Mega Shinnosukeなどここ数年全国区に広がるバンド/アーティストが次々と現れている地、福岡。5月、6月にかけて福岡発のアーティストがコラボした作品が立て続けにリリースされている。本稿では音楽を始めとする多彩なカルチャーの複合によって生まれつつある福岡の新しいムーブメントの一端を紹介したい。
BBHF、NITRODAYも所属する<Beacon LABEL>でコンスタントにリリースを重ねる2019年結成のDeep Sea Diving Club。2020年に「snow jam」で一躍話題となった福岡出身のラッパー・Rin音を客演に迎え、5月に「フラッシュバック’82 feat.Rin音」をリリース。Rin音と谷颯太(Vo/Gt)が交わし合うメロウなラップが心地良いチルチューン。福岡の蒸し暑い夜を想起させるこの曲は、土地に流れるムードを共有できるからこそ生まれたと言えるだろう。
2018年結成、シューゲイザーサウンドを持ち味とし、人気を獲得しつつあるロックバンド・クレナズムは6月30日に、宮崎在住・福岡も活動の拠点としているラッパー・クボタカイとのコラボ曲「解けない駆け引き」をリリース。タイトル通り、もどかしい感情のやり取りを描く爽やかで甘酸っぱい1曲。クボタと萌映(Vo/Gt)によるボーカルのスイッチングで夏の青春像を表現し、今年を代表するデュエットソングになるかもしれない。ドリームポップ風味のアレンジを施したのはこちらも福岡のトラックメイカー/ラッパーのShun Maruno。MVも福岡の海辺で撮影されており、作品の至るところにこの地が刻まれているかのよう。
福岡のラップクルー・週末CITY PLAY BOYZのメンバー・BUGSはTOKYO HEALTH CLUBのTSUBAMEをプロデューサーに据え、5月にアルバム『HELLO NEW WORLD』をリリース。MANONやyonawoのボーカリスト・荒谷翔太など福岡出身アーティストがフィーチャリングアーティストとして名を連ねる。気だるげなオートチューンラップに色を足し、クールで先鋭的なエレクトロサウンドに豊かなバリエーションをもたらしている。
福岡市内のライブハウスの多くは天神エリアの一角に集中しており、バンドやシンガー同士が交流を生みやすい環境であるのは間違いない。一方でMega Shinnosukeの活動以降に増加したDTMアーティストや、ラッパー界隈の活動とはなかなか交差しづらかったように思う。しかしSNSやサブスクリプションサービスを当たり前に用いる90年代生まれ以降のアーティストたちはネットを通して同世代の同地域での活動を早々に認識することができた。実際に顔を合わせやすい環境も整っており、現場での対バンや共演も行われるようになった結果、2010年代後半からは活動形態の垣根を超えた交流が急速に生まれ始めたのだ。